マンドレイクさんのレベル上げ!
異世界生活12日目
日付が2日ほど飛んで、12日目でございます。
10日目の段階で既に体育座りしないと樽に入り切らなくなったのでミーナさんちに植え替えて、
今日もミーナさんちにマンドレイクさんを見にきたわけですが。
「おとーさん、おはよう」
なんで既に土から出てらっしゃるんですかね?
そのままトテトテと俺の方にやってきて迷いなく抱きつく。
先生、喋り方とか仕草なんかはロリっ子ぽいんですけど、めっさ出るとこ出て引っ込む所引っ込んでる二十歳前後のきれいな子になってるからソレは色んな意味でヤバいです。
薄っぺらい白ワンピ1枚だしさぁ! そして抱きつかれたこの感触は生乳……! ワンピの下裸かこれ!
身長的には俺よか頭一つ小さいぐらいで、普段土の下だからか肌は真っ白け。緑の虹彩と髪が鮮やかで、
頭には数枚のギザギザの葉っぱと百合っぽい赤い花が髪飾りのようについている。
ミーナさんが苦笑いしていらっしゃる。
「成長しきったので埋まってる必要がなくなったみたいです。森に居る野生のマンドレイクは土に埋まってる事が多いんですけどね」
「え? まだ1週間程度ですよ……?」
「そうなんですよね、成長速度が異常です。それで、この子、どうします? 冒険者登録するのも有りですけど」
「できるんですか? 魔物らしいですけど」
「一度首を切って植え直した子に魔石は無い『はず』なので大丈夫だと思います。でも冒険者登録をするなら、名前が必要ですね」
「おとーさん、名前! 名前!」
名前、名前ねぇ? ネーミングセンス無いんだよなぁ。
流石に花ちゃんとか花子とかはありえないしなぁ。フローラさんが和訳すると花さんだったはずだし。いや、スペル合ってるかは知らんけどね?
んー。呼びやすくて可愛い名前が良いなぁ。
グリグリとマンドレイクさんの頭をなでながらしばし思案する。
「すっごい安直だけど、頭の花が百合っぽいからリリィなんてどうかなぁ……」
「いいんじゃないですか? 変に捻った名前より。リリィさんって結構居ますし」
マンドレイクさんも嬉しそうなのでリリィに決定。と、言うわけで!
やってきました冒険者ギルド。
登録はサラッと済ませてステータスを確認。
━━━━━STATUS━━━━━━
名前 リリィ
LV:1
HP:100%/100%
MP:100%/100%
STR:劣
AGI:劣
VIT:極の上
DEX:下の上
INT:上の下
MAG:極
魔法適正:有
種族特性:デッドリースクリーム 肉体再生(極) HP再生 MP吸収 植物支配 毒 麻痺 呪詛無効
スキル:魔力制御LV4 魔力増幅LV3 土魔法LV3 生命魔法LV3 水魔法LV2
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えーっと……。ネトゲでいうなら筋肉ウィズ……? もしくは壁プリ……? VITMAG極振り微INTとかえらいピーキーな……。
首から再生するぐらいだし、VITがすごいのも、肉体再生(極)もわかるし、HP再生もわかる。
それより、デッドリースクリームって、直訳『必殺の絶叫』よね? マンドラゴラの代名詞のアレだよなぁ……。
これって首切ったらなくなるスキルじゃないの?
ひょっとして俺が魔力与えたせいで復活したのか……?
「マンドレイクのステータスって初めて見ましたけど……。これはヤバいですね。デッドリースクリームがヤバすぎます」
「そんなヤバいんですか、マンドレイクの絶叫って……」
「実はあの絶叫、対魔法障壁でも、物理障壁でも単独だと防げないんですよね。多分物理と魔法か呪いの複合攻撃だと思います。
追加効果に読んで字の如く即死が入って来るんですよね……」
「耳栓で防げますかね?」
「即死は直撃しなければおそらく……。たいていの冒険者は耳栓だけでマンドラゴラを採取してますし……。
でもこのVIT値にHP再生がつくと、レベルが上がれば少々の事では落ちませんし、土魔法は防御補助向き、水や生命魔法は回復と、防御面が完璧です。
防御をガチガチに固めて叫びまくられると手がつけられません」
そ、そんなにヤバいのかこのスペック……。
「MPドレインとMP吸収の差ってなんなんですか?」
「んー、私もそこは詳しくないんですけど、ドレインは生物から強制的に吸い上げるのに対して、抵抗のない物から緩やかに吸う感じですかね?
おそらく空気中からも吸収するので、MP回復効率が高くなると考えていただければ多分間違っていないかと」
あー、それで俺からMP流そうとすると吸われる感じがあったのか。
だとすると継戦能力半端ないな……。
「支配した植物から吸い上げる事も可能かと思いますので、うーん……。
一撃必殺狙いで首を狙い続けるしかないですね……レベルが上がったこの子に対抗しようとすると……。
初見だと絶叫で死にます。冒険者が平然とマンドラゴラやマンドレイクを狩ったり採取してくるのは、最初から対策していくからですし、マンドレイクってレベルの高い個体はまず居ないんですよ。活動的な子ってほんっとうにまれなので。
森の浅層で出てくる魔物なら、レベル1でもひとたまりもないでしょうね」
「おとーさん、リリィすごい?」
「ああ、すごいぞー」
だから抱きつくのはやめなさい、頭なでてあげるから。
流石に他の冒険者の視線が痛すぎるし。
「まぁ、まずやるべきは……」
「レベル上げですねぇ……」
「頑張りましょう!」
「おー」
上から、俺、ミーナさん、ヘレン、リリィです。
ミーナさんも手伝ってくれるらしい。
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と、思ったら、ミーナさんがフローラさんまでつれてきた。
そういえば、新人冒険者を構うのも楽しいとか言ってたから、声をかけてみたんだろう。
なお今日のTシャツは『貧乳』。ド直球ですやん……。
しかしまぁ、この服装の集団だとこれから森に入る冒険者には見えないなぁ……。
武器を持ってるのは見かけ上はミーナさんだけっていうね。
ヘレン、リリィ、フローラさん=素手、俺=空間収納。
服装も俺は作業服だし、ヘレンはいつもの喪服もどきの黒ドレス、ミーナさんも前とおんなじ服だし、フローラさんはTシャツスカート。
そして、新規メンバーのリリィは薄っぺらい白ワンピ一丁という……。それ引っ掛けたりしたらビリビリいきません? 大丈夫?
それに足元裸足だし……。
「さて、レベル上げをするのはいいが、どういう予定にしておるのかの?」
「んー、俺としては……。ある程度森に奥に入った所で軽く騒いで敵を集め、リリィの所までつれてきて絶叫で一網打尽。
なんてどうかなーとか考えてますけども」
まぁ要するに、MMOなんかで言う所のいわゆるトレイン狩りと。
「おー、いいの、面白そうだの」
「問題は狼系とか俺が引きずり回せるかどうかなんですよね」
「いける、レベル40超えとるんじゃろ? ここらの狼じゃ勝負にならんよ。ワシが保証する」
「私もこの辺の魔物なら余裕ですね。リリィさんはいつでも叫べるように待機してもらって……」
「あと、ヘレンに補助を頼もうと思ってる」
なお、ヘレンとリリィにも耳栓を配布済みです。ミーナさんとフローラさんは自前。
聴覚潰して冒険する冒険者なんて居ないだろうなぁ……。
と、言うわけで森に少し入った所で作業開始。
「うううおおおおぉぉぉ!?」
背後に狼の団体さんを引き連れて森の入り口、リリィとヘレンの待つ所まで走る走る。
森の中で足元がデコボコして走りにくいのもなんのその、身体強化のゴリ押しで全力ダッシュ。
悲鳴上げながらなのはさらに魔物が釣れれば良いなー的な意味も込めて。……ごめんなさい嘘です、余裕無いんです。
確かに追いつかれはしないけど、一斉にこいつらに食いつかれたらどうにもならねぇよ!
目ぇ血走らせた狼に追いかけ回されるって怖すぎ!
どうにかリリィの姿を見つけて、その横を一気に走り抜けるとその瞬間。
「ギャアアアアアアアアアァァァァ!!!」
黒板を引っ掻いた時の音のような、背中にぞわぞわ来るひどく不快な絶叫が耳に届く。
耳栓つけてるんだけどなぁ……。
ていうかどっから出てんのよその悲鳴……。普段の声と似ても似つかないんだけど……。
走るのをやめてゆっくりと背後を振り返ると、引き連れていた狼が一匹残らず息絶えて、俺を追いかけていた勢いのまま頭から地面に突っ込んで行くのが見えた。
ズザーっと。
「すごい威力だなぁ……」
「おとーさん、おとーさん、リリィすごい?」
「うん、すごいぞ」
楽しそうなリリィの頭をなでなでと。うん、可愛い。
ひとまず、手近な所から狼を空間収納にぶちこんで……、と、作業を開始しようとしたところで、森の奥から地響きが。
目を凝らすと……、フローラさんとその背後にオークの団体さんが。
ひょいひょいと散歩でもするかのように、時折スカートをめくって、パンツをみせたりしてオークをおちょくりながらフローラさんがやってくる。
オーク相手だからってスカートぺらっぺらめくるのは女性としてどうなの……。
あとその容姿で黒パンツは割と予想外でした。
数は……俺がつれてきた狼より多いし……。どんだけ走り回ってトレインしてきたのよ……。
「はっはっはー、ほれほれ、こっちじゃぞー」
息の一つも切らさずに、リリィの隣に行くとくるりと振り返って両手で耳を塞ぐ。俺も耳を塞ぐ。
「ギャアアアアアアアァァァァ!!!」
狼の群れを倒してレベルが上がったのだろう、ヘレンの絶叫のように衝撃を伴う悲鳴を浴びたとたん、オークたちがバタバタと倒れていく。
リリィさんつええ……。
「おー、オークにもレジストされんか。まぁこいつら状態異常耐性ガバガバだからのー……。さて、ミーナはどれだけ釣って来るか。
ワシと反対方向に行ったから、別の種類のを釣って来るかのぉ?」
その容姿でガバガバとか言わんでくださいよ……、微妙な気分になるんで……。
「さぁ、俺にはなんとも……」
「お、来たぞ。後ろに居るのは……」
「クマですね」
「ビッグベアじゃのぉ。それと……ポイズンラットに、ブラウンウルフ。森の中層まで行ったみたいじゃの」
「リリィに落とせますかね?」
「行けるじゃろ。サトルとワシの引っ張ってきた奴でレベル30やそこらにはなっとるじゃろうし。しかしあれじゃの、つかず離れずで連れてくるのは結構技術が要るのー」
技術が要る、とはいいつつ、涼しい顔をして連れてきたのはどこのどなたでしたっけね。
苦笑しながら、ミーナさんが近くなってくればリリィの絶叫に備えて耳を塞ぐ。
先程と同じようにミーナさんがリリィの横をすり抜けたタイミングで絶叫を上げ……。
見事にモンスターは全滅していた。
いやもう、ほんと、MMOのトレイン範囲狩りだよコレ。コレでまた金貨数十枚行くんだろうなぁ……
「うーん、私お手伝いすることなんにも無かったなぁ……。一応ある程度風魔法で悲鳴に指向性はつけたけど」
苦笑しているのはヘレン。悲鳴の被害を減らすのは重要なお仕事ですよ? 俺は状態異常耐性ザルだし。
「さて、じゃあまた馬車を呼んで荷物を運びますか」
「またフローラさんと一緒に行ってくればいい?」
「そうじゃの、一緒に行くとするかのー」
ヘレンとフローラさんが2人でなんだか楽しげに話しながら街の方へと戻っていく。
あの二人仲良くなったなぁ……。ヘレンの新しい服もフローラセレクションだし。
「リリィ、レベルいくつになった?」
「んーっと……41!」
「だいぶ上がりましたね、パーティを組んでないとは言え、一気に41ですか……。
新しい種族特性とか生えてるかもしれませんね」
「確認するのが恐ろしいなぁ……」
「そういえば……、空間収納の容量、まだ増えませんか?」
「ちょびっとずつ増えてるんですけどね。んー、イメージ変えてみようかなぁ……」
今までイメージしてたのはアイテムボックス。つまり収納すれば時間も止まっちゃう便利ボックスだ。
ただ別に時間止める必要無いんじゃねぇの、とも思うんだよな。イメージは……真空パックと魔法瓶。
中に入れる物は基本的に死体か非生物で、細菌等は死ぬか非活動状態になるハズ。
死滅じゃなくて非活動状態を可能性に入れるのは、仮死状態?のマンドレイクが入ったため。
なら、断熱してピッチリ張り付くような収納をイメージすれば腐りにくく、酸化もしにくくなるんじゃないかなと。光による反応も無いし、空間が遮断されてるなら熱の出入りも無いはず。
料理が冷めないで時間が経過する=熱が入り続けるから、長時間放置すると具が溶けて無くなりそうだけど……。
あと時計とかの機械物を入れると、小さな摩擦熱がどこにも逃げないからガンガン熱が溜まってやばいことになりそう。
まぁそれはさておき物は試しとやってみることに。
「んーんー……。空間収納」
あ……。
「ミーナさんどうしましょう、容量がクッソ広くなった気がします」
「……え?」
「今まで時間が止まるイメージしてたんですけど、それを無くしたらバカみたいに広くなったきがします」
「……。内緒にしときましょう。私ももうギルド職員を辞めたので報告義務もなくなりましたし、黙っときます」
ひとしきり乾いた笑いで二人して笑い、それを不思議そうに眺めるリリィを軽くなでてから、
獲物を片っ端から空間収納に叩き込み、森の外へと放り出していくといういつもの作業を始める。
いやもう面白いように入る入る……。一往復で終わる勢いでオークもドサドサと空間収納にイン!
外へ放り出したら血抜きが必要なもの……というか狼と毒鼠以外ほとんど全部だなぁ、今回は。
片っ端から木にぶら下げて血抜きを……
「ってリリィさん何やってんの!?」
「ん? 血、抜いてる」
リリィの服の袖口から伸びた蔓が血抜きするために切ったオークの首の傷に入り込み、血を吸い上げている。
リリィさんそれ大丈夫なの? まぁ、植物だしお腹壊す事も無いか。血に含まれる塩分で塩害起こさないか心配ではあるけど。
「あー、リリィさんどんどんやっちゃってください。多分その方が早いです。吊るさなくていいですし」
「任せて!」
一通り血抜きが終わった頃に馬車を連れてヘレンとフローラさんが帰ってきたので、身体強化と空間収納でみんなでどんどこ荷を積み込み、街へ帰還する運びとなった。
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