第4話 帰れないと言われました
「最初から分かりやすく? そうですねぇ……じゃあ君はもう帰れません?」
「何で疑問系なんや。そしてまたエゲツないこと言いよってからに……ってホンマに!?」
「うん、魔導師長の言う通りだ。彼は意地悪だけど嘘は言わない」
「貴方はいつも一言多いですよね!?」
「俺は事実を言ってるだけですぅ」
「魔王様っ」
唖然としている彼女を放って、又々二人は言い合っている。かれこれ数百年、こんな状態なので諦めて貰うしかない。
「そんな……。せやかて急におらんくなったらみんな心配するし、悪いけどウチを帰して欲しい」
「う~ん、そうかぁ。でもね、君は向こうの世界で死んじゃってるから帰せないんだ」
「へ?」
「はい、間違いなく」
「……衝撃の事実その二や。驚きすぎて突っ込みづらいわぁ。それ、ホンマのホンマにホンマの事なんか?」
嘘であって欲しいと必死な顔で男達を見上げる。二人は顔を見合わせた後、再び彼女を見た。
「ああ、自覚なしかぁ。まあ、しょうがないよね」
紫の長髪を持つ美青年、魔王陛下は、現実が受け止めきれない彼女に、異世界転生の経緯を優しい口調で説明してくれた。
曰く、死んだ魂の中から、救済の魔女に適応できそうな資質のあるものを選び、この世界へと引っ張ってきた。
探しだしたその魂を、魔導師長らが創造した新しい器に定着させたのが、今の彼女になる。
どうか、我らと一緒に侵略してくる人間族からこの国を守って欲しい。そして無事、勝利した暁には俺の后になって共に生きてくれたら……とかなんとか言って最後には口説かれた。
真面目に説明するのかふざけるのか、どっちかにしてくれと懇願したら、どっちも至って真剣だと力説された。
魔族は長寿なため子孫を残しにくい傾向にあるが、魔導師長が言うには、魔力の親和性が高ければその限りではないんだとか。
魔力の波長は一人ひとり違うが、個々にピタリと合う人がいる。異界から魔女を呼び寄せる際、ちょうどいいからと魔王陛下と相性のよい方を選んだため、きっと子孫が残しやすいはずだとの事。
ただ今現在は戦時中だし、具体的な話は彼女が成人後になる。一応、その事も考えておいて欲しいと言われた。