桃太郎をなろう小説風に書いてみた
昔々ある所に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯していると、見慣れない服装の少年がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。
「おやまあ、これは大変だねぇ」
おばあさんが急いで少年を岸まで助け出し心臓マッサージをすると、少年は目覚め「う、ここはどこだ? 確か俺トラックに轢かれて、そして女神さまに逢って……」とつぶやきました。
とりあえずおばあさんは少年を家まで連れていき、丁度帰ってきたおじいさんと一緒に少年の話を聞きました。
少年の名前は百田 狼。
気づいたら川に流されていて、そこを丁度おばあさんに助けられたと語りました。
おじいさんとおばあさんには語りませんでしたが、少年は女神様によって異世界に送られ、その際にチート能力を貰っていました。
ある日少年は言いました。
「俺は勇者になって、魔王を倒す」
異世界に転送される前、魔王を倒せば元の世界に帰れると女神さまに言われたからです。
「それならば、これを持っておいき」
旅立つ少年におばあさんが手渡したのは、キビ団子でした。
途中に寄った街で少年はギルド登録をして、魔獣使いの職業に就きました。
◇◇◇
少年はクエストの最中、一匹の巨大な狼、神狼フェンリルと出会いました。
「汝、何処へ行こうというのじゃ?」
「魔王を倒しに行くのさ、邪魔するならお前も斬る」
「くはは、面白い! ならばこの我を屈服させてみよ!」
少年と神狼の死闘が始まりました。
キィイイイイイイン! ザシュッ! ドゴォオオン! バキィイイイ!
少年は見事フェンリルを打倒し、テイムしようと考えました。
モンスターをテイムする条件は二つ
一つはモンスターが弱っていること、そしてもう一つは弱ったモンスターに餌付けをすること。
この二つの条件を満たすことによって、ビーストテイマーはモンスターをテイムすることができるのです。
少年は弱り切ったフェンリルにキビ団子を与えると、突然フェンリルの身体が光り輝き銀髪紅眼の美少女へと進化しました。
実はおばあさんは錬金術師で、キビ団子には魔物を進化させる効果があったのです。
フェンリルは少年に服従を誓い、パーティー入りしました。
次に少年は旅の途中で立ち寄ったサーカスで虐待されている猿を救出しました。
少年は虐待で弱り切った猿にキビ団子を与えテイムすると、猿は金髪碧眼の少女へと進化しました。
「べ、べつに助けてなんて言ってないんだから、で、でも、ありがとう」
猿はツンデレでした。
猿もハーレム入りし、正妻ポジションをかけた女の戦いが始まりました。
◇◇◇
そろそろ旅も終盤に差し掛かった頃、ダンジョンの奥深くに封印されているキジを発見しました。
少年はキジを封印から解き放ち、キビ団子を与えてテイムすると、キジは赤い髪に漆黒の瞳の少女へと進化しました。
「私……記憶、無い」
キジは記憶を失っていました。
ハーレム要員が3人となり、パーティーはとても賑やかになりました。
◇◇◇
とうとう魔王城に到達した少年たちは、いよいよ最後の戦いに挑みます。
「これが最後の戦いだ! みんな、俺に力を貸してくれ!」
お供の美少女3人は獣の姿へと戻り、フェンリルはその牙で抗う者を全て噛み殺し、猿は極大魔法で敵を焼き払いました。
そしてとうとう魔王の間へと到達した時、異変は起こりました。
魔王の間の玉座、そこには誰も座っていなかったのです。
「あ……あ、あ……思い、だ、した……私……」
キジの様子が突然おかしくなりました。キジは玉座へと歩いて行き、そして徐に腰を掛けます。
「……私こそが、魔王」
そう、キジがダンジョンの奥深くに封印されていた理由、それは彼女が魔王だったからです。
全てを思い出したキジは少年にこう言いました。
「私は魔王、でもあなたを殺すのはいや、だから私を倒して、あなたに殺されるのなら、私は構わない」
「そんなこと……できるわけがないじゃないか!」
「駄目……魔王を倒さないと、あなたは元の世界には帰れない。あなたはそれでもいいの?」
「最初は元の世界に帰りたくて仕方が無かった。でも今は違う! 今の俺は、お前が、お前たちのいる世界が大好きなんだ!」
「モモタロウ……」
少年の言葉に胸を打たれた魔王は、玉座から立ち上がり少年の元へと駆け寄りました。
キジが他の二人を押しのけて正妻になった瞬間でした。
◇◇◇
後日少年は3人を連れておじいさんとおばあさんの家へ帰りました。
しかし家にはおじいさんとおばあさんの姿は見当たりませんでした。
代わりにそこにいたのは、少年を異世界へと送り込んだ張本人である女神でした。
「久しぶりですね、モモタロウさん」
「久しぶりだな女神。 それよりも、おじいさんとおばあさんの姿が見えないが?」
「アレは私が作り出した、あなたの旅立ちを手助けさせるためのNPC、自我の無い操り人形です」
「そんな……おじいさんとおばあさんが……」
「モモタロウさん、なぜ魔王を倒さなかったのですか? 魔王を倒せば元の世界に帰れたのに」
「俺はこいつらと一緒にこの世界で生きると決めたんだ」
「あなたが良くても私が困るのですよ。世界の調律を正すためにも、あなたには魔王を倒してもらわねばならないのです」
「断る!」
そう言って少年が女神に斬りかかりましたが、まるで霞を斬るように手ごたえがありません。
「ふふふ、これはただの立体映像です。本当の私はここよりも遥か高次元、11次元の空間にいます」
「くっ! 卑怯だぞ女神!」
「……まあいいでしょう。たとえあなたが魔王を倒さなくても、次の勇者を送りこめばいいだけなのですから……ふふふ」
そう言い残して女神の姿は消えていきました。
「来るなら来い、俺は絶対にこいつたちを守り切って見せる!」
少年はいずれ来るであろう新たな勇者を倒し、そして女神を屠り去るために、更なる強さを求めようと決意しました。
めでたし、めでたし。