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名探偵・オブ・ザ・デッド  作者: Roxie
死霊のお引越し
14/18

疑獄の組織 VS 地獄の5人

 翌日。

 MUセミナーセンターの始動は決して早くない。

「おはようございます」

 と、秘書の長谷は菓子折りを携えて職場に現れた。

 真っ先に事務室へ向かうと、

「これ、実家から送られてきたんです。良かったら、みなさんで召し上がってください」

 と、その菓子折りを置いていく。

 周りの職員は、目をパチクリさせていた。

「珍しいこともあるもんだな」

「今夜、雨でも降るのかしら」

 ひどい言われようだが、ま、無理もない。

 秘書と言う肩書きだけでお高くとまっていた長谷が、同僚へお菓子を振る舞うなど前代未聞のことだったのだ。

 なので、菓子折り自体はこの辺でも手に入る安物だったということは、あまり大きく取り上げられなかった。

 一方、その長谷は浦部代表の私室へまっすぐ──と行きたかったが、三回くらい部屋を間違えて、ようやくたどり着いた。

「おはようございます」

 と部屋を開けると、ちょうど浦部代表がお抱えのヤクザの頭分と何やら話いいの真っ最中。

「代表、どうか」

 と、ヤクザの頭分ともあろう者がへこへこしている。

 何人もの部下を抱える頭分がそんな待遇で満足しているわけもないが、とにかく浦部は莫大な金を作る名人。

 男のプライドも肩で風を切ることへの欲求も、金の前には一抹のチリに等しいのだろう。

「まだ何か」

 客には優しい口調で語る浦部も、身内にはとことん冷たい。

「例の謝金を、今すぐにでもいただきたいのですが」

 と頭分が頭を下げる。

「謝金、と申しますと?」

「飯倉聡子と、例のガキを始末することへの謝金です」

 と社長が言うと、浦部は唇の端にうすら寒い笑みを浮かべた。

「私は、殺せ、と頼んだのです。あちらに息の根があるうちは支払いません」

「ですが、片方は意識不明の重体。もう片方も脅しには十分だったと──」

「契約は契約です」

 浦部は長谷の目もはばからず、ぴしゃりと言い放った。

「もちろん、仕事の遂行を確認できれば耳をそろえて払います。しかし、まだ仕事は終わっていないのですから、私も払いません。それだけのことです」

 そう言われると、頭分もぐうの音もでない。

「他には?」

「いえ」

 再び頭を下げた頭分は、途方に暮れた足取りで長谷の横を通り、部屋を後にした。

「長谷さん」

 と浦部は、不機嫌であることを隠そうともせずに呼ぶ。

「いつまで突っ立ってるの? そろそろ、今月の収支をまとめて提出してもらわないと」

「申し訳ありません、すぐにでも提出いたします」

 と、長谷が頭を下げつつ、自分の席に座る。

 机の上には備品のノートパソコンがあり、書類はいつもこれで作られることになっているのだ。

 ところが長谷は、なんだか今日初めてここに来たかような足取りで席につくと、これまた初めて見るような目でノートパソコンを眺めている。

 そう、電源もつけずに真っ暗の画面を眺めているのだ。浦部が眉を潜めているのに気づきもせず、

「イミーラなら詳しいかしら……」

 などと呟いていた。

 そこへ

「長谷さん、お荷物が届いています」

 と事務員の一人がやってきた。

「はい、ただいま」

 長谷がすくっと立ち上がり、速やかな足取りで部屋をあとにする。

 浦部はますます首をかしげた。いつも無愛想で怠け者で、コネだけが取り柄だった長谷が、今日はなんだか別人のようだ。

 一方、長谷が玄関へ向かうと、若く見えるのっぽな配達員が、

「えーと、判子か何かお願いします」

 と、大きな段ボール箱を差し出す。

「なかったら血判でも良いよ」

「サインでも大丈夫よ」

「分かった。じゃあ、ケンカになったら呼んでね」

 と、その配達員はウィンクひとつ残して帰ってしまう。同行していた職員はポカンとしていた。

「これ、例の機材が置いてある部屋へ運んでただけます?

「例の機材?」

「ほら、講演に用いる例のアレですわ」

 長谷の言い方はいつもと違って、なんだか言葉にトゲがなかった。

「は、はあ。分かりました」

 と、その職員が持ち上げようとしたが、

「重い! なんだこりゃ?」

 まるで子ども1人分くらいの重さなのだ。これを1人で運ぶのは辛いので、台車での運搬になった。

 その部屋へ着くと、職員がカギを開ける。

 中には洋館で密売された毒草が、乾燥された上で大量に保管されていた。

 そして、それらの毒草から必要な毒素のみを抽出し精油にする装置も置かれている。

 この精油を空調に混ぜることで、普段の“講演”は行われているのだ。

「ここへ置いておいてくださいな」

「ここですか?」

「ええ」

 という長谷の指示どおり、職員はその段ボール箱を部屋の端の方に置いた。

 すぐに扉が閉まり、施錠される。部屋から人の気配がなくなると同時に、段ボール箱の上面がうごめき、

「やれやれ、やっとか」

 と、中からゾフィアが現れた。

「ホーネットの考えは、いつも回りくどくていかん」

 などとぼやきながら腰を伸ばし、部屋に保管されていた毒草に手を伸ばす。

「どれ、私も準備にうつるか」

 と呟いて、パンダのごとく毒草をむさぼりだした。


 ※


「本当に役に立たないわね」

 講演開始も直前に迫っていたというのに、浦部代表はひどく苛立ったままだった。

 たかが女2人も殺せないとは、ヤクザが聞いてあきれる。

 しかし、飯倉聡子が危険なのはよくわかるが、解せないのはただの小娘、尼ヶ崎悠梨も始末しろという話だった。

 これを最初に言い出したのは浦部ではない。浦部とて、そんな小娘に何ができる、と、まるで相手にする気はなかった。

 だが、これはスポンサーの意向だった。このビジネスは、あの毒草を使用する以上、そのスポンサーの協力なしには成り立たない。

 それにしても、ただの脱走者ひとりを事故に見せかけて口止めするはずが、偉い大事になってしまったものだ。

 ──講演の始まりの時間が来た。浦部はひとまず、考えることをやめる。しかめっ面を客に見せるわけにはいかない。

 ホールへ入り壇上へ昇ると、何も知らない金づるたちが今か今かと始まりの時を待ち望んでいるようだった。

 ──おめでたい連中だ。

 そう笑いたくなるが、この場ではこらえねばならない。

「皆さま。本日はお忙しいなか、わざわざお越しいただき、まことにありがとうございます」

 最初の挨拶をすると共に、予定通り空調が入る。

 ステージの周囲をエアーカーテンが覆い、辺りの空気が流れ込むのを完全に遮断。

 そして客席の方には、特殊な空調装置を通じて、毒草をいぶして発生する煙が流れこみはじめる。

 何も知らない客らの表情が、毒煙に中てられて緩んでいく。

 どこまでもバカな連中だ。何十万もの金を払って、たかが数百円程度の啓発本に書かれている内容を丸写しした話を聞いていくのだから。

「本日は大変、お日柄も良く……」

 と言ったときだった。

 ふと客席から1人が立ち上がったのだ。十代前半の幼い外国人風の娘である。

「お客様。他のお客様のご迷惑になりますので、席はお立ちにならないよう──」

「黙れ、小悪党。いつまで取り繕っている気だ。そろそろ本音をぶちまけたらどうだ」

 毒煙の中だというのにその娘は、いたってはきはきと言葉をしゃべっている。

「まあ、いい」

 とその娘はニヤリと笑って、人間とは思えない瞬発力であっという間に壇上へ飛び乗った。

「な、何ですか、あなたは! 人を呼びますよ!」

 浦部が血相を変える。

「呼んでみろ。おまえに、人生を楽しく生きるコツを教えてやる」

 娘がぱちんと指を鳴らす。

 同時に、ホールの出入り口が開いて、数名の職員がなだれこんできた。

 だが、どうにも様子がおかしい。職員は、どれも顔面蒼白で、足取りはふらふらとしている。

 今にも死にそうな、という形容詞がここまで似合うこともないだろう。

 よろよろと中に入ってきた職員は、あろうことか、最も近くの席に座っていた客の首筋に次々と噛みついていく。

 客は抵抗しなかった。それはそうだ、毒煙を吸ったで、まともな判断能力も残っていないのだから。

 噛まれた客は、同じくらい“今にも死にそうな”風貌で立ち上がると、さらにほかの席の客へ噛みついた。

 安物のゾンビ映画さながらの光景が、このホールで堂々と巻き起こっていた。

「あ、ああ……」

 足から力がぬけ、へなへなと座りこんでしまった浦部。

 それに代わり、

「聞け、おまえたち!」

 と最初に乱入してきた娘が、ゾンビ軍団に向かって叫んだ。

 突如として灯ったスポットライトがゾフィアを照らす。

「時は満ちた! 今この場で、往年の大悪党、ゾフィア・T・ブレインリッカーの大復活を宣言する!」

 ただの小娘とは思えないほど、よく通る、心底で恐れを抱いてしまうような声だ。

「奪え! むさぼれ! 好きにやれッ! たった1度の人生だ、おまえの欲望をぶちまけろッ!」

 とゾフィアが演説をかますと、ゾンビたちがそろって雄たけびをあげた。

 もう客席に、まともな人間は誰も残っていなかった。

「分かったか? これが、人生を楽しく生きるコツというものだ」

 ゾフィアが、まだ座りこんでいる浦部の方に目をやる。

「どうだ、うらやましいだろう。おまえも“仲間”に入れてもらったらどうだ?」

 そう言って、ゾフィアがまた指を鳴らす。

 ゾンビ化した群衆が、いっせいに浦部の方を、獲物を見つけた肉食獣のような目で見た。

「ひいっ」

 外聞も体裁もかなぐり捨て、浦部が這うように逃げ出す。

 それを数人のゾンビが追いかけた。

 ステージのすそまでどうにか逃げ込んだ浦部へゾンビが襲いかかろうとした、そのとき。

「代表!」

 と勇ましい声と共に、駆けつけた長谷がモップを一振り。当たった端からゾンビがひっくり返る。

「代表、さあ、こちらです」

 と手を引かれ、浦部は力ない足取りでそそくさとホールを後にした。

「いったい、何が起きているの?」

「分かりません」

 と、長谷は即答。

「しかし、もしかしたらこの事態の鎮圧に警察が踏み込んでくるかもしれません」

「そんな……」

「代表、逃げる前に帳簿などを全て始末しましょう。警察に見られたら、私たちは終わりです」

 と、有無を言わさずに浦部の手を引いて突き進む。

 代表の私室まではゾンビに会うことなく、すんなりと行くことができた。

「私がすべて処分しますから、それがどこにあるか教えて下さい」

 と長谷が言うと、

「それなら、全てこの中に入っているわ」

 浦部が自分のパソコンを指さす。

「こ、これですか」

「当たり前でしょ。窓の外にでも投げ捨てて、奴らがやったことにすれば良いわ」

「はあ。……時代も変わったのね」

 妙なことを言い出した秘書に、浦部が眉をひそめた。すると

「ま、いいわ。ユーリ、もう出てきて良いわよ」

 と長谷が述べた途端、長谷の机の下から一人の小娘が姿を現す。それはまごうことなく、始末しろと言われていた尼ヶ崎悠梨だった。

「お邪魔してるわよ、代表さん」

「あんたは……」

「まさか、ここまでの悪党だったとはね。でも、あんたの悪事も今日でジ・エンドよ」

 と悠梨が断罪の言葉を口にすると、浦部は怒りに満ちた目で隣を見た。

「長谷さん、これはどういう──」

 と言葉を詰まらせてしまう。

 そこにいた女は長谷と同じ服こそ着ていたが、顔は似ても似つかない西洋風のおもつきをしていたのだ。

 この女、ホーネットである。昨晩、長谷の自宅を襲撃したときから、顔や声帯の骨格を組み替えて本物に成り済ましていたのだ。

「まさか、こんな猿芝居でこうも出し抜けるとはね。あなた、詐欺師に向いていないのではなくて?」

 と、ホーネットは口元を隠しながら冷ややかに笑った。

 すると、ホーネットの顔が、皮膚の下で骨格が組変わっているかのようにうごめく。

 あっという間に、その顔は浦部の人相へと変わった。

「これからは、私があなたになるわ」

 その声色も、まさに浦部の声だった。

「あなたはもう用済みだから、この世から消えてもらうわ。先に始末した本物の秘書さんが、地獄であなたを待ってるわよ」

 と目をギラつかせると、ようやく相手がまともな人間ではないと察したのか、浦部はけつまずきながらも、脇目も降らず逃げ出した

 二人きりになった部屋で

「それにしても、まさかあんたが変装の達人だったとはね」

 と悠梨は言った。

「まあね。でも、やっぱり自分の顔が1番落ち着くわ」

 と、ホーネットの顔と声帯の骨格が元にもどる。

 ただ、長谷に化けるために金髪を黒く染めたので、今日は少し雰囲気が違った。

「そう言えば、本物の秘書はどうしたの? まさか、本当に殺したわけじゃないわよね」

「心配いらないわ、殺しはしなかったから。昨晩ゾフィアに噛まれて催眠性の毒を打ち込まれて、明日の朝までは自宅で高いびきだけどね」

 それを聞いて、悠梨はホッと胸をなでおろした。

「それより悠梨、確認しておくけど、本当にこの組織を壊滅させて良いのね?」

「どういう意味?」

 悠梨が聞き返す。

「私なら、あの代表に成りきれるわ。本物を上手く始末して私が代表になりすませば、この組織そのものを乗っとれる。得られる利潤も、決して少なくないはずよ」

「やめて」

 悠梨は迷わず切り捨てた。

「私たちはお金のために頑張ってきたわけじゃないのよ。もしあんたがその気なら、私は手段を選ばず止めてやるわ」

「そう。……ふふっ、あなたならそう突っぱねてくれると思った」

 と、ホーネットは優しく微笑んだ。

「そういうまっすぐな生き方の大切さ、私も生きているときに知りたかったわ。……ユーリ、その生き方、絶対に見失っちゃダメよ。反面教師として、応援するわ」

「ホーネット──」

 少しだけ透けて見えた彼女の過去に、悠梨はかける言葉を見いだせなかった。

「そうだ。これ、受け取って。こっそり昨晩作ったのよ」

 とホーネット、悠梨の手に何かを握らせる。見ればそれは、小さな赤い布の袋でできた、手作りのお守りだった。

 中に何か硬い筒のようなものが入っているようだが、袋の口がしっかり縫われており、開けられなくなっている。

「これは?」

「そう大したものじゃないけど、私の特製のおまじないってところかしらね。本当は婚約指輪くらいあげたかったんだけど」

「そこまで重いのは、その彼氏さんにでもあげてよ」

 と悠梨が苦笑した、そのとき。

「ユリィさん、ホネちゃん!」

 慌てふためきながら、ドロロが部屋に転がりこんできた。

 事前に立てた作戦では、用心棒の詰所を見張り、何か動きがあれば皆へ知らせて回る役割を担っていたのだ。

「さっき、詰所に代表の人が駆け込んできて──」

 悠梨とホーネットは顔を見合わせた。

 こんな展開になったのだ。次に何が起きるかは、おおよそ想像がつく。

 すぐに足音が近づいてきて、

「何モンだ、てめえら!」

 と部屋に飛び込んできたのは、いつぞや聡子を足蹴にしたあの用心棒くずれのチンピラ。

「また会ったわね」

 悠梨が睨みつけると、向こうもすぐにピンときたようで、

「そうか、またてめえらか! 調子に乗りやがって」

「あんたたち、よくも……!」

 入れ替わるように事務室へ入ってきた浦部は、鬼のような形相だった。

 悠梨は少しも臆すことなく、浦部をにらみ返す。

「もう終わりよ、代表さん。今すぐ電話で自首してくれるなら、すぐに引き上げても良いけど、どうします?」

「誰がそんな。ちょっと、何のために高い金で雇っていると思ってるの? 早くこいつらを始末しなさい!」

 と、浦部はヒステリックな声をあげた。

 その後ろには、先日、洋館に出入りしていた数人の屈強なヤクザが、血走った目でこちらを見ている。

「はわわ」

 ドロロが足をがくがく震わせ

「い、命だけはお助けを!」

 情けない声をあげながらひざまずく。

「図体だけのデクの坊が、何人集まったところで無駄よ!」

 と悠梨はせいいっぱいの強がりを言い放った。その後、こっそり小声で、

「ホーネット、勝算、ある?」

「もちろん。そろそろ来てくれても良いと思うんだけど」

 そう呟いてホーネットが時計を見上げる。そのとき、

「出た、あ、あいつだ!」

 最初に来た用心棒くずれのチンピラの震え声が、廊下の方から聞こえてきた。

「お待たせー」

 とシズメの呑気な声。

 建物の裏口から逃げだす奴がいないか、見張らせていたのだ。

「ドロロくんに呼ばれたから来てみたんだけど、雇われの乱暴者ってのは君たちかい?」

 ちょうど悠梨のいたところから、にこにこ笑いながら浦部たちの方に歩み寄るシズメの姿が見えた。

「いいよ。乱暴者は大好きさ。ねえ、1番強い人はだあれ? ボクとケンカしようよ」

「この野郎、よくもこの前はやってくれたな!」

 と、あの用心棒くずれが鉄パイプを持って、シズメの前に立ちはだかる。

「あんときの借り、たっぷり利子つけて返してやらぁ!」

「危ない!」

 悠梨は思わず叫んでしまった。直撃すれば人間ならまず頭蓋骨をかち割られてしまうほどのフルスイングだったのだ。

 もっとも、“人間なら”の話であり、そこはトラックにひかれても傷1つ負わなかったシズメ。

 ごんと鈍い音がして、鉄パイプを頭のど真ん中に食らったにもかかわらず、当然のようにケロッとしていた。

 そう言えば心配しなくて良かったんだったな、というのが悠梨の率直な気持ちだった。

「あのさ」

 と、新聞紙を丸めた筒のように鉄パイプを握りつぶしながら、

「ボク、序ノ口力士なんかには用はないんだ。君はボクと格がちがうんだから、そんなに出しゃばらないでよ」

 そう言って、シズメは強烈な張り手を繰り出した。

 もろに喰らった用心棒は、後ろにいたヤクザたちを巻き込みながら廊下の端まで吹っ飛んでしまう。

 今の一発だけで、雇われていたヤクザは全滅してしまった。

「さすがね」

 ホーネットが事務室から出てきて、シズメの肩をたたいた。

「一瞬で片付いちゃったわ」

「いやだなあ。こんなに弱くちゃ、肩すかしを喰らった気分だよ」

 とシズメが渋い顔を浮かべていると、折れ重なったヤクザの下から浦部と頭分がどうにか這い出てきた。

「な、なんとかしなさいよ。金ならいくらでも出すわ」

 浦部は頭分にしがみついてたが、

「うるせえ!」

 と、あっけなく手を払われた。

「金がなんだ! いくら積まれようと、命の方が大事に決まってるだろうが!」

 頭分はそう吐き捨てると、泡を食いながら逃げ出す。

「逃げられないわよ!」

 と、元・陸上部のエースランナーの悠梨が鮮やかなスタートダッシュを決めた。

 それをホーネットとドロロが追う。

 そして、残された浦部には、

「大将、こんなんじゃボク、浮かばれないよ。早く、1番強い人を呼んできてよ」

 シズメがゆっくりとした足取りで詰め寄りはじめた。

「それとも君自身が、1番強いのかな?」

「あ、ああ……こ、来ないで!」

 すっかり腰が抜けてしまった浦部は、犬のように這いながら隣の物置部屋に逃げ込んだ。

 不幸中の幸いというか、この部屋は売上金の保管もしているので、特にドアが頑丈にできているのだ。

 タッチの差でドアを閉めると、ふるえる手でカギをかける。

 ここにいれば安全だ。他に出入り口のないのだから、あいつがしびれを切らして帰るまで、中に篭ってればよい。

 ほっと息を吐き、顔中に浮かんだいやな汗をぬぐった、その瞬間。

「大将のくせに背中を見せるなんて、情けないなぁ」

 と声がして、鉄筋コンクリートの壁が爆ぜた。

 いや、爆発したのではない。壁の向こうにいたシズメが、張り手で大穴をあけたのだ。砕け散った破片が部屋の中に転がる。

「ひいっ」

 と金切り声をあげると、今度はその穴から巨大な水のかたまりが室内になだれこんできて、あっという間にシズメの姿になった。

 先程は他に出入り口もないから、と安心していた浦部だったが、考え方を変えればただの袋小路である。

「大将。もう、鬼ごっこは終わりだよ」

 シズメは浦部のえり首をつかみ、ぐいと無理に立たせた。

「た、助けて、お願いよ。一千万、いえ、二千万あげるわ。だから……」

「あのね、大将。ボクはお金なんていらないんだ。ただ、強い人とケンカしたいだけなんだよ」

 と柔和な笑みで迫ってくるのが、かえって怖い。浦部はもう歯を鳴らして、ものが言えなかった。

 その顔をしばらくシズメは見つめていたが、急にふと顔から笑顔を消して、

「……そっか。ここには、弱っちいのしかいないのか」

 と悟りきったような口調になった。

「なんだか、萎えちゃったなぁ。大将、ボク、帰るから。悪いことはほどほどにしておきなよ。ボクの目こぼしに2度目はないからね」

 決して脅迫じみた言い方ではなかったが、それがかえって恐ろしくて、浦部はただ首を縦に振る。

 それでようやくシズメはえり首から手を離すと、その手を自分の顔の前に持ってきて術の構えをとった。

 瞬く間に室内は一寸先も見えない濃霧に満たされ、霧が晴れたときにはもうシズメの姿はなかった。


 ※


「待ちなさい!」

 一方で、悠梨たちの追走劇はまだ終わっていなかった。

 頭分は階段で1階まで下りると、そのまま裏口から逃げ出そうとしている。

 ここに待機させていたシズメが事務室に来てしまったせいで、裏口はガラ空きになっていた。

 ホーネットが昨日確かめた通りなら、頭分の車は裏口に停めてある。

 ──このままでは、逃げられる!

 あせった悠梨が全速力で詰め寄ろうとした瞬間、乾いた発砲音が廊下に響いた。

 銃を持っているのだ! さすがの悠梨も、思わずひるんで足を止めてしまう。

「ギャッ、う、撃たれたぁ!」

 ドロロが胸を押さえてうずくまった。実体がないのだから、弾が当たるはずがないのだが。

「ユーリ、大丈夫!?」

 と、ホーネットが庇うように頭分と悠梨の間に割って入る。

「当たってはいないわ」

「よかった。向こうが撃ってくるなら、私が盾になるわ。骨の硬さには自信があるのよ。骨と骨の間はスカスカだけど」

 これでは盾というよりザルである。

 しかし、そうして悠梨たちが足を止めている間に、頭分はまんまと裏口から外へ出ていた。

「死ぬぅ!」

 とドロロが喚き続けているのを無視して、悠梨はすぐさま裏口を飛び出す。

 頭分はポケットから車のカギを取り出し、車のカギ穴へ差しこもうとしていた。

 ちょうどそのとき。

 一筋の細くまばゆい閃光が、上の方から一瞬ちかっと差しこんだのが、駆けつけてきた悠梨にも見えた。

「な、なんだ!?」

 と頭分がすっとんきょうな声を出す。

 今の光線によって、鍵の先端の方が真っ二つに焼き切られていた。

「どこへお行きになるんデス?」

 2階の窓から、ドラ=イミーラが顔を出していた。その右目に埋め込んだ機械眼が、まばゆく光りだしていく。

 再び閃光が降り注ぎ、今度は車が真っ二つに焼き切られた。

 派手な爆炎をあげ、頭分が横に吹っ飛ぶ。

「サンキュー。イミーラ、やるじゃない」

 悠梨が裏口より出てきて、頭分を追い詰める。

「この、クソガキが!」

 と銃を取り出したのとほぼ同時に、ゾフィアが窓ガラスを突き破り、2階から外へ飛び下りてきた。

「やれやれ、もう逃走か。現世の悪党が聞いて呆れるな。──ユーリ、横取りは許さんぞ。こいつは私の獲物だ」

「ふざけやがって!」

 頭分はすかさず、ゾフィアに銃を向けた。

「てめえらも道連れだ。ぶっ殺してやる!」

「そういう強がりは、私を仕留めてから言え」

 ゾフィアが不敵にニヤニヤと笑う。

 銃が火を噴き、ゾフィアの体がのけぞった。血しぶきがいくつか飛ぶ。

「ゾフィア!」

 悠梨はまた反射的に名を呼んでしまったが、そこは地獄あがりの死人。すぐにゾフィアは体勢を戻した。

 もっとも、額には風穴が開いていたが。

「ほう? 現世の銃はなかなか進歩したみたいだな。悪くない威力だ」

 と笑いながら、額に開いた穴を指でいじっているゾフィア。

「し、死にそこないの化け物め!」

 震える手で頭分が再び銃を構えたが、ゾフィアが長い舌をムチのように伸ばして、それを奪い取ってしまった。

「誰が死に損ないだ! 見ろ。私はこの通り、きちんと死んでいるのだぞ!」

 ゾフィアは自分のこめかみに銃を当てると、そのままトリガーを引いた。

 再び発砲音が響いて、血の気の混じった硝煙の臭いが、吹いてきた春の風に散らされていく。

「ど、どうなってやがる」

 頭分が情けない声を出した。

「おまえのようなひよっ子が悪党を名乗るのは実に癪だ。いっぺん、地獄を見てきたらどうだ?」

 ゾフィアが銃を頭分へ向ける。

「み、見逃してくれ。俺はただ、あいつの命令に従ってただけなんだ」

 と頭分がひざまずく。ゾフィアはキッと鋭く目を光らせ

「それなことは聞いていない。私は、おまえみたいな器の小さい軟弱者が悪党を気取るのが許せんのだ。おまえには特別に、悪党のあるべき末路を教えてやろう」

 凄みながら、ゾフィアはパチンと指を鳴らした。それを合図に、裏口から何十人ものゾンビ軍団が飛び出してきて、いっせいに頭分へ群がった。

「ぎゃーッ!」

 すさまじい断末魔が断続的に続く。

「欲望のままにギラギラと輝き、最後は虫けらのように死ぬ。それが悪党のあるべき姿なのだ。覚えておけ」

 ゾフィアは少しの間、全身に噛みつかれながら無駄な抵抗を続ける頭分をながめていた。

「確かに、殺し以外なら何でも良いっては言ったけどさ」

 と、悠梨がそっとゾフィアの横に立つ。

「ずいぶん、えげつないことするのね」

「なぁに。殺しはしない。向こうはいっそ殺してほしいと思っているかもしれんが、知ったことか」

 ゾフィアは笑っていた。

 この光景を見て笑っていられるのだから、大した神経の持ち主なのだろう。少なくとも悠梨は、笑う気にはなれなかった。

「それに、おまえは知らんだろうが、地獄に落ちた者への処罰に比べたら、こんなのは子供だましにもならん」

「それはそうかもしれないけど……」

「ま、何はともあれ、これで終わったんだ。帰るぞ、ユーリ。もうへとへとだ。おんぶしろ」

「待ってよ!」

 悠梨はゾンビ軍団を指さしながら、叫んだ。

「この人らはどうするの!」

「心配いらん。もうじき、入れてやった毒が切れる頃だ。そうすれば、元の人間にもどる」

 とゾフィアは言った。だが、ゾンビ化する毒を混入した毒菓子の準備からここまでの大暴れで、さすがに疲れていたようで、

「心配する暇があるなら、まず私をおんぶしろ。くたくただ」

 と悠梨に向かって両手を伸ばす。こういう仕草だけ、子どものようなのだ。

「ゾフィア、あまり駄々をこねると、育ちの悪い子どもだと思われマスよ?」

 ドラ=イミーラが2階からコメントを投下した。

 1階に降りてこないのは、何せ背が低いので、こうして他人を物理的に見下せる構図が好きだからなのだろう。

「片付いたみたいね」

 ホーネットがドロロとシズメを連れて現れた。

「死ぬかと思った……」

 ドロロはまだ胸のあたりを押さえている。

「わあ、これまた派手に暴れたねえ」

 燃え上がる車を見て、シズメが他人事のように言った。

「本当よ。もうすぐ警察が来るわ。さっさと立ち去らないと、面倒な目に合うわよ」

 と悠梨は言うと、先頭となってその場を去ろうと歩き出す。

「ちょっと! この高貴なイミーラさんを置いていく気デスか!?」

 という抗議が、上方とから悠梨の耳に届いた。


   ※


「くそ、取れん」

 とゾフィア、頭を横に傾けながら上側になった側頭部を手で叩いている。

 そういうポーズをしている人を、悠梨はプールや海などで見かけたことがある。耳に入った水を取ろうとしているのだ。

 ──なるべく人通りの少ない道を選びながら、6人はMUセミナーセンターより安定堂へ帰る途中だった。

「ゾフィア」

 ホーネットが顔をしかめる。

「死んでいるとは言え、あなたも嫁入り前の生娘でしょ。そんな汚い言葉を使っていると、お嫁にもお婿にも行けなくなるわよ」

「黙れ、ハレンチ。私にも悪態をつく権利くらいある」

 と、だいぶ苛立っている様子。

「どうかしたの?」

 悠梨が訊いた。

「耳に水でも入ったの?」

「え、耳が入水したの!?」

 シズメが、また妙な聞き間違えをしていた。

「なんでそんな嬉しそうな顔をしているんだ」

 とゾフィアはシズメをなじって、

「水じゃない。弾丸が貫通しなかったせいで、頭の中がもにょるんだ」

「重傷じゃないの! 自分で自分のことを撃つからそうなるのよ」

「やかましいッ、終わったことをネチネチ言うな。脚が短くなるぞ」

「それ、どういう意味デス?」

 脚の短いドラ=イミーラがゾフィアを睨んだ。

 ──大通りに出ると、消防車がけたたましいサイレンを響かせながら、MUセミナーセンターのある方面へ走っていくところだった。

「……終わったのね」

 悠梨が息を吐きついた。

 決して長い戦いというわけでもなかったが、この数日間はとても長い日々のように感じられた。

 それだけ密度の濃い時間だったのだろう。

「あれこれ回り道していないで、最初からこうすれば楽だったんだ」

 ゾフィアは機嫌が悪いと、すぐ噛みつく。

「結果論はお断りよ」

 その抗議を、悠梨はあっさりと突っぱねた。

 しかし同時に、中途半端に巻き込んでしまった二階堂講師にはなんと言おう、という悩みも頭の隅にぼんやり浮き上がっていた。

 先生には悪いんですけど、待ちきれなくなって、もうカチコミかけちゃいました。──とても言えない!

「1つ、引っかかることがありマス」

 とドラ=イミーラが悠梨を見上げながら言った。

「当たり前だ」

 ゾフィアが自分の頭を叩きながら

「これだけ叩いても取れないんだ。何かが引っかかっているに違いない」

「あなたの腐った脳みそなんて、どうでも良いのデスよ」

「どうでも良いとは何だ。それがケガ人にかける言葉か」

「穴があいたってどうってことはない脳みそが、どうでも良くないはずがないのデス」

「せっかく一件落着したばかりなんだから、ケンカしないでよ」

 悠梨が2人の仲裁に入った。

「それよりイミーラ、気になることって何?」

「ええ。あの建物を出る際、倒れていたチンピラどもの顔を一通り見てきたのデスがね。昨日、ゾフィアが逃がしてしまったあの殺人未遂犯の顔はなかったデス」

「なんですって?」

 と、悠梨は思わず声をあげてしまった。

「1番、厄介なのを残しちゃったかもしれないのね」

「なるほど! だから、雑魚の寄せ集めしかいなかったのか!」

 シズメの思考回路は、やっぱりどこかズレているのだ。

「母体団体が壊滅した以上、無力化した可能性が高いとは思いうけど、あなたも留意くらいはしておいた方が良いと思うわよ」

 と、ホーネットが悠梨に言った。

「そうね。まあでも、今度襲ってくることがあれば、はっ倒してやるわ」

 悠梨が息巻く。

 しかし、引っかかることと言えば、結局あの黒沼という男は何者だったんだろうな、という疑問が悠梨の頭の片隅にぼんやり浮かんだ。

「話は変わるけど」

 ホーネットが、仲間の顔を見渡しながら切り出した。

「実は、黙ってたことがあるのよ。これから戦いだ、というときに言うべきことじゃないなと思って」

「ホネちゃん、どうかしたの?」

 ドロロが尋ねると、急にホーネットは明るく微笑んで

「実は私ね、昨日会った素敵な王子様と、今日も待ち合わせの約束をしてるのよ。そろそろ時間だから、行ってくるわ」

「見損なったぞ、ホーネット! 今日くらいは真面目にやると思ったのに、結局は発情期か!」

 ゾフィアが声を荒らげた。

「そう怒られると思ったから、戦いが終わるまでずっと黙っていたのよ」

 と、ホーネットは澄まし顔。

「もう終わったんだし、良いじゃないの」

 悠梨はホーネットの味方についた。

「あんたたちは、何か予定ある? ないなら、私のおごりで祝勝会やるわよ」

「よくぞ言った!」

 急にゾフィアの機嫌が良くなる。

 何がお望みなのかは、手に取るように分かった。

「あんた、本当に頭の中にはコーヒーのことしかないのね」

 悠梨が笑うと、ゾフィアは頭を叩きながら

「そうなりたいのは山々なんだがな。この弾が取れんのだ」


   ※


「すみません」

 と、新米看護師は同僚の先輩に声をかけて呼び止めた。

「どうかしたの? あまり時間がないから、手短にお願い」

「すみません。あの、黒沼先生、見ませんでした?」

「ああ、先生ならさっき部屋へ戻ってきたところよ」

「ありがとうございます」

 と礼を言ったときには、もう先輩は廊下を歩きだしていた。

 昼間の市立病院ともなると、ゆっくり立ち止まっている時間などない。

 就職前にも研修で体験していたはずなのに、いざ実際に仕事の一端を担うようになると、感じ方も変わってくる……。

「いけない、先生を探さないと」

 と、その新米看護師は歩き出した。

 いくら新米とは言え、どこに黒沼先生はいるのかくらいは分かっている。

 ──外科医の黒沼。決して勤務態度が悪いわけではないが、何かと噂のつきない人物である。

 何せ、“イケナイおじさん”風の苦み走った男性なので、いわゆる“大人の遊び”に興じている姿は容易に想像できてしまうのだ。

 家庭は持っていないようだが、妻同然と言えるほど親密な間柄の女性がいるという噂も、看護師の間で聞いたことがある。

 まあ、どうしても長時間拘束されがちな看護師にとって、噂話ほどガス抜きに適した娯楽もないという実情もあるが。

「失礼します」

 と、その新米看護師は、普段なら黒沼がいるであろう扉を開けた。

「──ああ、そうだ。絶対に今夜だ」

 黒沼は誰かと電話で話をしている。

 それも、受話器を肩と頬ではさみながら、手元では書類仕事。

「お膳立ては全部、整えておいた。場所は507号室だ」

 と、その新米看護師が入ってきたことに気付かず、話を続けている。

 まいったな、とその新米看護師は内心でつぶやいた。

 あまりここに居続けるわけにもいかないのだが、電話の邪魔をするのも気が引ける。

「──聞きたいこと? なんだ? ──ああ、容態はだいぶ安定しているが、まだ意識は戻っていない。──きっと、そうだろうな。──ああ、地獄を見せてやれ。君なら朝飯前だろう」

「あの、先生!」

 と新米看護師、思い切って声を上げた。黒沼は振り向きながら、

「すまん、仕事だ。とにかく、すべては今夜だ。頼んだぜ」

 そう言って、電話を切った。

「すみません、待たせてしまって。何かありました?」

 と愛想の良い声。

 このように声をかけると、急ぎの用事であろうと嫌な顔をする医師も少なくないが、この黒沼はその手の世渡りが上手かった。

 しかし、まあ、よくも当直明けの午後なのにこうも仕事ができるな、と感心しながら

「はい。実は、何人かの患者さんのことで──」

 と新米看護師はカルテを手に、報告を始めた……。


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