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ROAM  作者: 笠置 有
登場人物紹介
9/13

one day9メイン  

小説全文書き直し中です。

9話本文は未修正。

                         



                                   つまり理由が必要で、それに意味がともなっていないと嫌なわけだ。






















「おや?・・・。ねぇ、そんなところに立ってないで部屋に入ったら」

眉を軽く上げ、なにか珍しいものでも見た とばかりに感嘆詞をつぶやいたかと思えば、人の部屋をまるで自分の領域だといわんばかりの態度とさりげなさでもって入れ、という。

彼女が妙なことを言い、理解できない言動をとるのはもう今更といっていいほど当たり前に思えるのだが、それでもスルーできるだけの器量は残念なことに持ち合わせていない。というか、彼女の突拍子の無さにバッチリ付き合える人間がいるとしたらそんなもの、国宝指定だろう。



つらつらと結論の無いようなことを考えながらも、しらけた表情とため息だけはしっかり返す。もう、なんか・・・・いいわ。とか呟いてから、部屋の右隅に備えた背の低い本棚へと足を向ける。今日中に課題を仕上げてしまいたいのだ。びっしりと教科書の詰まった本棚が手招きしているように見えるのは、気のせいか。

                

                   まぁとにかく 構うの、面倒だ。








正直、理由など思いつかない。非常に不思議だが考えてもきっとわからないだろうと割り切っているからそもそも今更だと思うのだ。

彼女はやたらとあたしに構いたがる。初対面のときの態度から考えれば奇跡だ、といえるぐらいに何かと折を見ては いや折りなど見なくても接触の機会をわざわざ作り出しては構ってくる位だ。

しかし、言い切れる。あたしはそんなきっかけを作ってはいない。なぜなら、彼女は3学年上の生徒であり要するに先輩なのだ。あたしが知る世間一般の常識と違わず年上を敬う、とか 権力者には媚びるといった常識があるこの世界では、それこそ部活だとか家族ぐるみの昔なじみ、なんていう位置関係が無ければ仲良しになる機会には恵まれない。

以上の理由から、普通に考えてきっかけなど理由などもてるはずが無い。と、あたしは思っている。


・・・などといってみても実際彼女はこんなところにいるのが真実なのだが。






とりあえず、術式関連の本を掴みとってからすぐそばにある寝転びクッション(別名ごろりんクッション)に日曜日のお父さんのようなポーズで寝転びページをめくる。

ぼふりとクッションに顔を埋めて 頭を勉強に切り替える。

どんな状況でもスイッチ一つで切り替わるこの頭だけは、自分の中で誇れるところだ。



どうやら今は、上手く会話ができない予感。取り繕うことが出来ない状況は望ましくなくて不合理であると自覚しているのに、無条件に人が煩わしいく感じてしまう。こういう感情は本当にどうしようもなくやっかいだ。


・・まぁ、ともかく誰がいようが集中してしまえば問題なし。周囲の環境を100%シャットダウンして本の世界に入り込めば、そこには自分だけしかいなくなるのだから。

そんな行動をどう思ったのかはわからないが、対面する窓際からじっと視線が送られてくるのを肌で感じる。

ぺらり、ぺらり と薄い紙をめくる音だけが静かな部屋に響く。



じーーーーーーーーーーーーーー

はい無視。無視。



ペラリ  パラパラパラ。ここ前に見た。あーここ今日の授業で出たところだ。 ・・・・ふぅん。なるほどねー。そういう裏話があったのか。



じーーーーーーーーーーーーーーーーーー

完全無視。

・・・・そういえば図書室から借りた本どこやったっけ。課題まとめなきゃなぁ。


ジィーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しつこい。なんか熱視線なんですけど。




・・・というか5学年の魔術系は今日が試験日だと掲示板に書いてあったような。

どうなっているんだか。一息はいて、しぶしぶ顔を本から持ち上げてシェニを見やる。



「・・あのさ。今日試験日じゃないの?」


熱視線を振り払うように顔をあげると、彼女が吃驚するぐらいに無表情でこちらを見つめていたことに気づき、その視線から身を引いてしまった。

しかしその表情をあたしが捉えることができたのはほんの一瞬で、幻でした とでも言うかのようにいつもの軽薄な印象の表情を作り上げてしまう。




瞳の奥を覗き込むように彼女の目に焦点を合わせる。薄い灰褐色を宿す、鉱石みたいな瞳だ。

彼女は艶やかな笑みを形作る。実際、綺麗な顔をしていると思う。比較対象が男性で申し訳ないが、オーファスとは部類が違う印象的な美人といった感じの顔つきをしている。

個性的な顔立ちといったわけではないのに記憶に残る。あぁ美人だよねあの人でしょ。と1度見たら覚えてしまえるような不思議な魅力を持っているのだ。



それはいい。いいのだが・・・・どうしたものだろう。


困惑しながらも、じっと目を合わせているとシェニは途端にくしゃりと顔を崩して人懐っこい笑みを見せる。


「やっと目を合わせてくれたね。そうも邪険にされるとさすがに居づらいものがある」


「ごめん・・・。って言っておくべき?」



「それは私に聞くべきことではないけれどね。君と話をするのは楽しくて。やっと抜け出してきたのに、さも空気のような扱いをされてはさすがに寂しくなってくるよ。」


シェニはすとん、と両足を枠から下ろして窓の出っ張り部分に軽く腰をかけるように体勢を直した。その姿がやたらとスマートというかなんというか。どうして自分の周りにはこうも絵になる人ばかりなのか・・もういっそ絵画を友達にしてしまえばいいんじゃね?あたし。なんだか悲しくなってくる。



殊勝なことを言いながらも、その表情は考えの読めないうっすらとした笑みを描いているのだから本心はまったくの謎である。

この言葉だとか態度からわかることだが、彼女は自分の特殊さを誇ったりそれに驕ることが無い。つかみどころの無い、本っ当に!掴めない、凹凸のない表面つるつるグリセリン状態の性格ではあるが、高飛車とか傲慢とかそういった行き過ぎた自信とは無縁のひとに思える。


どんなに表面を上手いこと取り繕っても隙間から覗く傲慢さは嫌に目に付くものでそういった人間はなんとなく、わかるのだ。

しかし彼女はそういった部類の人間ではないらしい。

まぁ、そういうところは割りと好ましく思っているのだが・・あえて告げるつもりも無い。







彼女の存在だってイレギュラーなのだ。理想の世界で理想の自分が作り出すのはあくまでもあたしの意に則した世界であるべきなのだから突発事象は嬉しくないことのはず。

それでも胸が軽くなるような空が明るく見えるような「喜び」がこの体を包むのはなぜなんだろうか。あたしが望むのはただ楽しくご都合主義なファンタジーサクセスストーリーで、実際の人とのかかわりなんてものはどうだっていい。



きっとリアルの無い世界で、なによりのリアルを求めているあたしが何よりも矛盾しているんだろう。










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