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ROAM  作者: 笠置 有
彼らとの日常
13/13

befor 1

どうしたって目が向いて見つけてしまう。これは恋かしら・・なんて。



まさに頭がお花畑な状態・・・いやいや馬鹿なこと考えてる場合じゃないのだ。ここに集う皆さんの視線を一身に受けるその白い四角。目線のその先には、一枚の広告がある。




「後期昇級試験 試験内容について」




ほらまた面倒事がやってきた。




Plo2―①




試験。考査。学生の皆さんにはおなじみの定期行事の一つだろうこのイベントはどうしたって避けられないものである。それは異次元だろうがファンタジーだろうが「学校」と名のつく機関に身を置いていればこなさないわけにはいけない試練なわけだ。(若干大げさな気がするけども)



妙に達筆な字で書きつづられた試験内容に目が釘づけになのはただ試験が嫌だというそればかりじゃない。




1学年から7学年までの全試験内容が一斉に掲示板へと張り出されるこの日はエントランスも大盛況なわけだがどこからもふーんとかあぁ早めに探さなきゃなとかな、とか明らかにこなれた声が聞こえてくる。いやいやおかしいからこれ。




試験形式について

ウェリク2月3の日に当該学年に関して実技試験の行う。なおこれに関しては4人組のグループで参加すること。グループ編成は生徒任意とする。


    当該学年・・2,3,4学年

    試験地・・・紫煙の峠、深鏡の洞窟、ファンタンの平原、マイゼルの森 から選択

    

   ※試験内容はグループ編成を試験担当官に申請後、能力値・所属科等を考慮し発表する。





グループ試験ってなに。試験内容はみんな違うってか。え、そもそもこれすごい生徒にお任せなんですけどもこれでいいのか。




試験として成り立つのか不明なそれをじっと見つめていると妙に不安になってくる。

常識が通じないって言っても本当にこれは試験何だろうか。分からない。というか、不安すぎる。

とにもかくにも早めに動かないと間に合わないなぁと独りごちてから、この問題を解決する糸口へと一歩足を踏み出した。





何事も情報から始まるのだ。知らないことは出来ないし、あいまいな知識はいつだって味方になるとは限らない。わからないなら先人に聞け、だ。


「こーんにーちわー」

だだっぴろい教室に向けて声を上げた下級生に、幾人かの生徒が何だ、というように顔を向ける。

顔こそこちらには向けていないが、その中に見知った人物を見つけてサリジェはそちらに歩み寄る。

するとその人物は足音に気がついたのか、はたまた野生の感かふと顔をあげた後少し首をかしげ、にやりと口角をあげてその顔に笑みを乗せる。


「やぁ来たね」

「・・予測済みって感じが癪に障りますねー」


三日月みたいに目じりを下げて笑う顔は人なつっこくて優しげに見えるけども、目が楽しげに光っている。きっと自分の思う通りになったことに満足しているだけだろう。この策略家め。


「聞きたいことは試験の正当性と評価基準について、グループを組む際の基準や今までの傾向について。さぁ、あとは?」


「どうして先輩がそんなに人の上に立つことが大好きなのかについて、ですかね」


教えてやろうかふふんってな顔した上級生は、顔の横にぴんと立てた人差し指をこちらの顔に向けてまた笑った。


「自分が優位にいるって状況は、それが気に入らないやつであるほど面白いよね」


その言葉に顔を引きつらせることだって予測済みなんだろうが。絶対いつかその横っつらに一発火炎式叩き込んでやる。


気合いでにっこり笑えば、そいつは耐えきれないという風に吹きだした。








普段はにやにやした顔に(にこにこではない。私にはそう見えない)穏やかな話し方も相まってとっつきやすい人物に見えるこの上級生だが、今現在椅子の背もたれにふんぞり返って足まで組んで偉そうにしていらっしゃる様子からわかるように、とてもじゃないが穏やかな先輩とは言えない。




というかエス。度を超えたエスと呼んでドSというやつだ。忘れもしない、はじめて話しかけられら第一声が「ねぇ年齢相応っていう言葉知ってる?実力云々いっても目ざわりな感じだよね君」だからね。

あぁ変な人につかまっちゃったどうしよう。って思ったのはいつだったか。



かかわりたくねー。面倒なタイプだよ絶対。という第一印象は外れておらず、まぁ5学年にしてすでに国の従文官に内定しているというその頭脳だけはすごいのだろうけれど。それにしても天才には変人が・・というのを地で行く人なのだ。


「というかオブ先輩に用はないですから。シン先輩に会いに来たんですって。はいそこどけて」


「・・・・シンに?」


いぶかしげな声で笑みを収めて椅子に座ったまま振り返るエリック・オブジリット先輩の目線の先にいるその人こそ「会いにきた」先輩である。


つり上がった目に全体的にシャープな造りの顔貌はどうみても周囲に人が寄ってこないタイプだが実際は気風のいい兄貴的なその人がシン・オーディ先輩だ。

その強面がいかにもいやだな、という風に歪み、こちらを見やる。


「俺に振るな。てかそいつに聞けばいいだろ。俺に聞くより正確だと思うけど」


「いやです。どれだけ正確であろうと気分よく話が聞きたいです。不快になるために上級生の教室まで足運んできたと思いますか」


「いい度胸だねサリジェ。ちょっとその言葉忘れないからね。俺」


「知ってますか?オブ先輩。執念深い男の人って俗にストーカーとかいうこともあるんですよ」


がつりと人の肩を掴んで話に割り込んできたオブ先輩にむけて鼻笑いと共に言い放つと、「ストーカ?・・」と首を傾げられる。やっぱりこういう言葉は通じないのか。


とりあえず、執念深くて精神的にちょっとあれな感じで性格曲がった人を指す呼称です。と説明すると微笑みと共に肩に置かれた手にものすごい力が込められたが、そこは兄貴分シン先輩がいる。


「まぁやめとけって・・話が進まねえから・・。」

オブ先輩の魔手から逃れて背後に隠れた私をさりげなく隠してくれる。ほんとにお兄ちゃんだわシン先輩。


たれ目優男系のオブ先輩とつり目暴走族総長系のシン先輩が仲がいいのは本当に不思議だが、案外いい組み合わせかもしれない。最初に教室に入ったときからこの2人は隣同士で座っていた。だからこそシン先輩までたどり着けなかったのだが。



「実地試験のことだろ?そんな難しく考えることじゃねぇし、説明するから、まぁ座れ。2人とも」


あぁ近寄りたくねー視界に入れたくねーとか思いつつもあぁだこうだ言ってくるオブ先輩の相手をしていると救いの手を入れてくれるシン先輩。


兄貴というよりは・・母?


大分失礼なことを考えつつも、とりあえずは目先の試験についてだ。そこらへんの椅子を引いて私が勝手に座ると、チッと舌打ち的な音の後にオブ先輩も腰を下ろす。


これからはシン先輩一人の時を狙おう、と心に決めた午後13時。

  













ほんとに進まない

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