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第10話 B面その5 (トワの視点)

―――あのあと、学校全体を揺るがしたスキャンダルについて、俺はあまり話したくない。特別学校が好きだというつもりはないが、母校がスキャンダルにまみれて世間からあしざまに言われることには正直辛いものがあった。騒ぎは長引くかに思えたが、思うよりも早く事態は収束した。教員たちの強硬な行動によって早急な内部解決が実現し、さらに、ある時点からいきなり報道に自粛がかかり、また警察関係者も学校への調査よりも根本となる組織の調査へと比重を移していったからだった。H学園は被害者、というイメージが新しく付き、それによって世間の注目はあっという間に引いて行った。人のうわさもなんとやら、というまさにそんな感じだが、当事者としては大変助かる。


――全てはあの邂逅から始まった。そう思う。


 まあそんなわけで、俺は今日も校内をうろついていた。かつてそうしたような、無意味な放浪ではない。目的はある。

ポイントは、人気のないところ、静かなところ。

あれからまったく姿を見ない。さしもの俺も不安になる。居たら居たであの饒舌にうんざりしないこともないのだが、居ないとなるとそれはそれとして逆にあの饒舌が懐かしくさえ思えてくるのだ。あまり考えたくはないが、「役目/未練」を終えて、成仏してしまったんじゃないだろうか、と頭の片隅に浮かべないでもない。

そう、新荷冬芽を探しているのだ。

あのうざったく長い巻き毛、人を苛立たせるようなにやにや笑い、皮肉に歪む口元、見下すように細められた目つき。それを求めてやまない俺がいる。笑いたくば笑え。俺だっておかしいと思っている。考えれば考えるほど、いいところなんか一つもない、そんな女だった。だから、さっきから目の前にちらつく、あいつのあの表情――いつも通りのにやにや笑いのくせに、なにか無理しているようなそんな表情――なんか、幻覚で思い込みで単なる気の迷いでしかないはずなんだ。俺はそれを振り払いたくて、けれどただむやみに歩き回るしかない。

新荷。どこにいるんだ。まさか、本当に居なくなったのか。俺はひたすらに歩を進めた。


そして、唐突に、邂逅した。

なるほど、実に新荷らしい。芝居じみて大仰で劇場的なことを好む新荷なら、再会は、きっとそこを選ぶだろうと、そういう確信があった。

最初に新荷と出会った場所。時計塔の最上階。時間もまさに、同じ時間だった。



「やあ、久しぶりだね、トワ君」



――新荷冬芽は、いつものあのにやにや笑いを浮かべてそこに居た。


そして彼女は語りだす――。


以上、図書部の話でした。お粗末!

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