11 黒 ワタシの音
青毛に手を引かれて、いくつもある大きい木のカタマリの間を通り抜ける。
歩きながら、色々なモノに ゆび を向けながら、短い音を出す青毛。
一緒に歩きながら、真似を返していく。
なんだろう? モノそれぞれに決まった音があるのかな?
青毛は、何かを教えたがってる感じ。
「ツルサン」「つるさん」
青毛より大きい、なんとなく青毛と似た感じの皮を身に付けてる、ワタシと青毛とだいたいおなじカタチの黄色い毛の生き物が、緑のまるい草の生えたところでなにかしてた。
へんな草。
「ツルサン」という音をしきりに出して来る青毛。
青毛がしつこいので、もう一度「つるさん」と真似してみると
「ハイ ハジメマシテ〜〜……」ながい音を返して来た、真似してみる。
「アラカワイイ〜〜……」また真似してみると、途中で口を押さえて割り込んで来る青毛に持ち上げられた。
持ち上げられたワタシに、黄色い毛が緑の丸い草をひとつ渡して来た。
「アリガトウ」「ありがとう」
どうやらおわりらしい。
黄色い毛が、て を横に振るので、真似しながら青毛に運ばれる。
「サクヤ」「さくや」「サクヤ」「さくや」
「サクヤ」うるさい
歩きながら、こちらにサクヤという音を何回も繰り返す青毛。
次に青毛が向かったのは、ツルサンの黄色い髪がいた、緑の丸い草がいっぱいあったところを通り過ぎてふたつ目の、大きい木のカタマリ
青毛が、どあの木のカタマリを叩いたので真似をしようとしたら、持ち上げて邪魔された。
そのまま叩こうとすると、どあの木のカタマリから離れる青毛。
とどかないー
「アイヨー」「あいよー」
どあの木のカタマリが開いて、顔から毛がはえた生き物が出てきた。
おんなじじゃないっぽい生き物だけど、使ってる音はおんなじ。
「コンニチワイワサン」「こんみちまいわさん」
青毛が毛顔に向けて音を出すので真似をして音を出すと、こんどは何か長い音。
何を言ってるのかわからないので周りを見回してみると……なにあれ?石?
真っ黒い石と、水がはいったまるいの、まっすぐの木の枝がついた石、あついあついの穴、近付いただけで火傷しそう。
石の棒とか、ひらべったい石とかがいっぱい置いてある。
おろして〜触りたい〜
結局こちらを下ろしてくれないまま、アイヨーのところを離れる青毛。
長い音を出してから、ワタシを下ろして手をにぎって、来た道を戻る。
青毛と茶色毛の巣に戻ったと思ったら、丸い草をこちらから取り上げて、ぱんを食べたひらべったい木に置いて、奥にいる茶色毛に何か長い音。
そのまますぐに、どあの木のカタマリを出て、こちらを持ち上げて走り出した。
ゆれる、ゆれる、ゆれる。
昨日の、ぐるぐるじゃばじゃばがある所の横、流れる水のところに来て、こちらを降ろして来た青毛は、色々な物の方に ゆび を向けて
「草」「くさ」「水」「みず」「サクヤ」「さくや」
「お風呂小屋」「おふろろや」「水車」「すいしゃ」「サクヤ」「さくや」
これは、物の音を教えてるんだなーと理解する。
くさ みず おふろろや すいしゃ かわ いし さくや。
ワタシの音は、さくや。
ぴんくのヒゲ。
たぶんパンチパーマ。
しかも全身。
でもモフモフではありません。
モフモフというのは、触った時の、身体の肉質までやわらかくなければならないんです
そこまでやってこそのモフモフなんです。
ガチガチのヒゲオヤジが踏み込んで良い領域ではないんです。