〈6-13〉戦風の魔術師
「来やがったな風野郎」
「やっぱテメェかクソボケ!!!」
マンドリカルド。
そこでは待ち伏せていたアルケーと、飛ばされてきたテンペスが視線を合わせていた。
アルケーは闘志と殺意の籠った瞳なのに対し、テンペスはこれから起こる戦いを楽しむかのような表情だった。
ささやかに吹く風が二人の髪を小さく揺らす。
そして、小さな風が止んだ瞬間
「行くぜ。炎魔法・獄ノ劫火!!!!」
先に動き出したのはアルケーだ。
彼は巨大な炎の玉を形成し、テンペスへと放つ。
「ボケが!風魔法・戦風ノ翔来!!!」
テンペスはその手を前にかざすと、巨大な竜巻を放ち、アルケーの炎魔法を吹き飛ばそうとする。
「無限魔法!」
その瞬間、アルケーは無限魔法を発動。
テンペスの放とうとしていた巨大な竜巻が形成途中で止まる。
「なんだ!?風が作れねぇ!!」
「テメェの魔法の最大出力を有限化した。テメェの魔法はこれ以上大きくならねぇよ」
「はっ!!面白ぇ!!!!クソ面白ぇボケが来たもんだ!!!」
テンペスは空中で両手を広げて大の字になり、アルケーの炎魔法を受け止める。
「舐めんな、近づけねぇのは知ってんだよ。近づけねぇなら近づけねぇで、殺り方を変えるだけだ」
最初の一撃を決めたのはアルケーだった。
巨大な火球がテンペスを飲み込む。
しかし
「それはどうかな……」
「っ!?」
テンペスは火球の内部から暴風を巻き起こし、火球を吹き飛ばして打ち消した。
テンペスの身体には多少の焼けた後は残っているものの、傷は浅かった。
「あっちぃなクソボケ!でもいいなそれ、なんだその魔法!無限魔法とか言ったよなぁ!!なぁ!教えてくれよ!!」
「ボケボケ言えなくなってから教えてやるよ!炎魔法・獄ノ放射!!」
アルケーが次に放ったのは火炎放射の魔法。
辺りを焼き尽くしてしまう程の強力な炎がテンペスを襲う。
「かかってこいやぁ!!!」
テンペスは再び風を巻き起こすが、それもアルケーの無限魔法によって封じられてしまう。
「強ぇ一撃でもダメか。ならこれでどうだ!!風魔法・戦風ノ陣勝!!!」
テンペスは五つの竜巻を放とうとするも
「無駄だってんだよ!無限魔法!!」
アルケーの無限魔法により五つの竜巻も小さなものとなり止まってしまう。
「無様に焼かれて死ねや!!!!」
「しかしっ!これで終わる俺で無いわぁ!!!!!」
迫り来る灼熱の炎に、テンペスは全身から強力な風を巻き起こして炎を吹き散らす。
「ちっ」
アルケーは舌打ちすると、強気に笑みを浮かべるテンペスを鋭い眼光で睨みつけた。
魔法を放てば当たる直前で風により吹き飛ばされる。
拳で殴るにしても風圧で近づくことすら出来ない。
それに、アルケーはある事に気がついていた。
無限魔法で有限化した風魔法。それが未だに解除されていないことに。
小さな竜巻も、テンペスの前で小さく吹き荒れる風も、未だに消滅せずそのまま残っている。
テンペスは魔法を解除していない。アルケーの炎魔法は強力だが、それを吹き飛ばす程の威力は充分にある。
(あと四つ……いや、三つか)
アルケーは無限魔法の残り回数を心の中でつぶやく。
彼の無限魔法で有限、無限に出来るのは最大十個まで。テンペスの猛攻を防ぐにも限界があった。
「おいクソボケ。テメェ、何考えてんだぁ?」
テンペスはアルケーの表情の曇りにいち早く気付く。
「あ?テメェをぶっ殺す方法を考えてる……」
「違ぇな!!」
アルケーの言葉に、テンペスは強引に割り込むように口を挟む。
「悩んでんだろ!あれか?魔法が通じねぇからか?それとも、また別の何かか??」
まるで核心を付かれたかのようなその言葉に、アルケーは目を見開く。
しかし、その感情を怒りへと変え、再び炎魔法を放った。
「だから違ぇっつってんだろ!!!!」
怒りに任せ、連続で放たれる炎魔法がテンペスを無造作に襲う。
「はっ!図星かよ!!荒くなってんなこのボケ!!!」
テンペスは再び竜巻を複数起こして炎を吹き飛ばそうとするが、無限魔法の効果によりその竜巻は小さなものとなり止まってしまう。
しかし、有限化された竜巻は三つだけだった。
「そういうことかよ……」
テンペスは小さく笑みを浮かべると、残り二つの竜巻を大きくし、アルケーの魔法を全て吹き飛ばす。
「上限だな!テメェ、自分の魔法の上限を考えてただろ!!今ので九。これが限界ってことじゃねぇのかおいクソボケ!!!!」
テンペスは上空からアルケーを見下し、その眼光を向ける。
そこに残された竜巻が消える様子は無い。
アルケーの曇る表情を見ると、テンペスはまるで彼を試すかのように小さく笑った。
「風魔法・戦風ノ狂嵐!!!!」
テンペスが魔法を放つと、まるで彼を囲むように周囲に巨大な竜巻が吹き荒れる。
そのあまりにも凄まじい風圧に地面はえぐれ、周りの家々が吹き飛び、岩や瓦礫が宙を舞う。
もはや近づくことすら出来ない程の威力に、アルケーも自身の身体が吹き飛ばされないよう堪えるので必死だった。
「さぁ、どうするよ!どうくる!どうかかってくる!!無限魔法とやらももう使えねぇんだろ!?なぁ!!!!」
テンペスは吹き荒れる巨大な竜巻の中心で大きく叫ぶと、その隙間から見えるアルケーを指さした。
「全部吹き飛ばしてやるよ!俺の風でな!!!」
近づけない。
アルケーは拳を地面に叩きつけ、ただ堪えるしかできない自分に苛立ちを覚えていた。
竜巻の中央に小さく見えるテンペスを睨みつけ、走り出そうとするも身体が言うことを効かない。
「うるせぇえ!炎魔法・獄ノ劫火!!!」
アルケーは巨大な炎魔法を放つが、テンペスを取り囲む竜巻の前ではまるで塵のように吹き飛ばされて消えてしまう。
「くそっ…………!!!」
どんどん威力を増していくその風に、もはや立っていることすらままならなくなっていた。
「こんなんじゃねぇだろ……!俺が目指すもんは、こんなもんじゃねぇだろ!!!」
アルケーはひたすら地面に拳を叩きつける。
怒りが、悔しさが、彼の心を締め付ける。
そして、それと同時に彼の頭の中には過去の出来事が過ぎっていた。
あの時の、自分が一番を求めるようになったあの瞬間を。




