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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-6【ロドモンテ編】

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〈6-11〉操血の刃

シキとトルポルが激戦を繰り広げている中、別の場所ではスピカとヴェルムの戦いが始まっていた。



「クソ!クソ!!どうやったら当たるんだ俺の攻撃はよぉ!!!!」

闇雲に放たれる雷撃を、スピカは全て天球魔法の軌道に乗せる。


「闇雲に打っても無駄よ」

スピカは雷を受け流しつつその手を前に出すと、氷の刃を形成。

それをヴェルムへと向けて放つ。


「オラァ!!!!」

ヴェルムは雷撃で氷を粉砕。


「ならば!雷魔法トニトルス・無比ノ雷撃ネクプリュス

スピカの周囲を複数の雷撃が青白く染める。

そのいくつかの雷はスピカの天球魔法の軌道に捕らえられてしまう。


だが、ヴェルムはただ闇雲に雷魔法を売っていた訳ではなかった。


無慈悲に放たれた大量の雷撃。それは全て防がれるのではなく、スピカに当たるものだけが軌道を変えていた。


まるで、彼女が軌道を変える雷を選んでいるかのように。


「まさか」


ヴェルムは再び同じ魔法でスピカを攻める。

「何度やっても同じよ」

「いいや、違うな!!」


その瞬間、ヴェルムは雷の槍を形成しスピカへと投げつけた。

「穴だ!!テメェには穴がある!!!」

あの一瞬。あの違和感からヴェルムは天球魔法の軌道線の存在を認識。

上からの雷撃に気を取られてる隙に、雷の槍で横から攻撃する策へと出た。


しかし、それはスピカも同じだった。

「なるほど。でも残念、その攻略法は既に対策済みよ」


その瞬間、彼女の周囲を巡っていた青白い雷が一斉に軌道を変えた。


今まで受け流され、スピカの周囲を回るだけだと思われていたヴェルムの雷。

それは次第に天球魔法の円状の線を露わにするかのように広がっていく。

幾重もの軌道上に蓄積された雷が線の間を覆うように広がり、やがて一つの巨大な球体となる。


天球魔法スファエラス・雷ノ防壁トニトヴァルム


天球の線に蓄積された雷光が、雷の壁となってスピカを守る。


「なっ!?」


リゼットとの戦いで破られた天球魔法。その穴を防ぐための対処法を彼女は既に考えていたのだ。


「悪いわね、そう簡単に倒れるわけにはいかないのよ」


スピカは唇に指を当てると、ヴェルムに対して小さく微笑む。

その余裕の表情にヴェルムの額に血管が浮き上がった。


「舐めてんじゃねぇぞ!!!」

ヴェルムは全身に雷を纏い高速接近。そのまま雷の剣を形成し、スピカの天球と雷のドームを壊そうと試みる。


「うぐぐがががが!!」

「そんなんで私の魔法は壊せないわ。リゼットならその抜け道を見つけられるんでしょうけど……あなたには無理ね」


余裕の笑みを浮かべるスピカ。

しかし、その裏では彼女もまた試行錯誤していた。


相手の攻撃を防ぐことは出来ても、こちらから攻撃する手段は無い。

それに、この雷のドームは蓄積された魔力が無くなってしまえば解除されることになる。


どうにかして時間を稼ぐ必要があった。


「ねえ」

スピカは小さく口を開く。


「あなた、ラミアと戦ってたはずよね。あの子はどうしたの?まさか、死んだなんて言わないわよね」


スピカの発言に、ヴェルムは大きく口を釣り上げた。


「死んだよ。最後は良い断末魔聞かせてくれたなぁ!!」

「っ!?」

瞬間、スピカの瞳が大きく見開かれる。


「心臓を一刺し。更にコメスみてぇに電流ぶち流してやったぜ!!!あいつは今血溜まりの中で腐ってんじゃねぇか??なぁおい!あんな雑魚のくせにこの俺と張り合おうなんて一億年早ぇんだよ!!!!」


無慈悲にも聞かされたラミアの最期。

それを聞いたスピカは驚くことはなく、泣くことも、悲しむこともなく。


ただ静かに笑った。


「血溜まり、ね。それなら安心したわ」

「……は?」


スピカの言葉に気を取られた、その瞬間だった。


「うっ!!!」

ヴェルムの背後から大きな鎌が振り下ろされる。

真紅に染まるその鎌は、彼の背中に深い傷跡を残した。


「テメっ……どうして!俺がこの手で殺してやったはずだろ!!」


振り返ったヴェルムの視線の先。そこには死んだはずのラミアがいた。

血の羽で宙を舞い、血で形成された大鎌を持つその姿はまるで悪魔そのものだった。


「操血魔法。私から流れた血で回復したんですよ。傷口もちゃんと塞ぎましたし、刺された心臓は血で固めました。私を甘く見ましたね、ヴェルム」


「ふざけやがって…………!!」


ラミアが生きている。その状況に怒り狂ったヴェルムはがむしゃらに雷を落とし始める。

しかし、既に大量の血を掻き集めたラミアの操血魔法は、その驚異をさらに増していた。


操血魔法サングウィス紅ノ血傘(ルベルウブレラ)!!」


ラミアは自身の頭上に傘上に血を硬化させ、雷を防ぐ。


「ラミアちゃん!加勢するわ!!」

「はい!!お願いします!!」


スピカは即座に天球魔法の中心をラミアへと付与。

血の羽で空高く上昇し、ヴェルムの上空で血の雨を形成する。


操血魔法サングウィス紅ノ天涙(ルベルラクリマ)!!」


刃と化した血の雨がヴェルムに降り注ぐ。


雷魔法トニトルス・轟ノ雷盾スクートゥルス!!」


ヴェルムは血の雨を雷の盾で防御。

硬化した血とはいえ、その雷の盾に触れる度にバチバチと弾け飛んでいく。


しかし

「一人に気を取られてたら、足元すくわれるわよ!」


ラミアの猛攻を防ぐヴェルムの側面から放たれるスピカの氷魔法。


だが、ヴェルムがそれを予想しないはずは無い。

彼女の魔法が当たる直前で彼は高速で上空へと飛ぶ。


たったの一瞬で彼はラミアの至近距離にまで接近した。


「血を流さなきゃいいんだろ?ならこんどこそ終わりだぜ!!!」


ヴェルムはラミアの胸に手を当て、雷魔法をはなとうとしたその瞬間だった。


「うぐっ!!!!!」

ヴェルムに付着していた幾つもの血が刃となり、彼の身体へと刺し込まれる。


「なんっ……だ…………これは……」


「気づかなかったんですか?私の魔法は血を操る魔法です。当然、あなたの服や顔に付着した血だってそのまま操れます」


ラミアは苦しむヴェルムを上空から見下しながら続ける。


「あの時、血の雨を振らせたのは貴方の身体に血を付着させるため。防御したとしても、飛び散った血は少なからずあなたに付着するはずです。そしてそれを利用した。ただそれだけの話です」


月明かりの下。ただ真紅に染まるラミアの瞳に、ヴェルムは恐怖という感情を覚えていた。


「これが……」

ラミアは震える手でヴェルムに最後の魔法を繰り出す。


「これが!あなたの果ての姿です!!!」

「くそ!くそ!ふざけるなぁぁあああああ!!!」


ラミアは再び血の雨を形成し、ヴェルムへと放つ。

雷の盾を間に合わせられなかったヴェルムは、そのままラミアの攻撃を食らい、地面へと叩き落とされた。


そして

土煙の中。そこにいたのは全身穴だらけとなったヴェルムの死体だった。


「やったわね、ラミアちゃん」

「はい」

ラミアは小さく頷いた。


けれど、その顔に笑みはなかった。

足元に転がるヴェルムを、ただ静かに見つめる。


ずっと殺したかった父の仇。ずっとこの瞬間を待っていた。


なのに

「お父さん」

小さく零れた声は、風と共に消えていく。


ヴェルムは倒した。

それでも父親は帰ってこない。

あの日の生活はもう、戻ってこないのだから。




─────────────────────────




ヴェルムとの戦いが終わったあと、スピカとラミアはシキの元へ来ていた。


シキの魂そのものは幽体離脱によって無事だった。ならば、戻るための身体さえ治せばいい。


ラミアが操血魔法で腹部の傷を塞ぎ、失われた血を補う。


「もう大丈夫ですよ」

「じゃあ戻るね!!!」

半透明だったシキの身体がふっと消え、次の瞬間。


「ふっかーーーーーーつ!!!!!!!!」


横たわっていた肉体が、勢いよく跳ね起きた。


「ありがとうラミアちゃん!!!!」

「いえ。でも、シキさんの戦い方ってすごいですよね」


「バカと天才は紙一重って言うでしょ?それと同じよ」


シキの戦い方を聞き、感心の瞳を向けるラミアにスピカの一言が炸裂。


「もう!!!余計なこと言わなくていいの!!!!」


そんなスピカにシキはポカポカと叩きながら反論するのだった。

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