〈6-9〉反撃の末に
「行っくよぉぉぉおおおおおお!!!」
トルポルに向かい全速力で走り出すシキ。
直感で攻撃を避けるも、全てを避け切ることは不可能だ。
「闇雲に突っ込んできたか。大雑把な女だ」
トルポルは集中的にシキに落雷を落とす。
しかし、シキは幽霊の身代わりを用意していた。
一度消えればもう一度、次が消えればまた次へと。
更には直感で避けてくるシキの速度は止まることを知らない。
幽霊の数が多いこの大都市だからこそ出来る芸当だ。
「ちっ、ならばこれで!」
トルポルは指に雷を集中させ、高速で雷の一閃を放つ。
落雷と同時に放たれるそれは、シキの幽霊の身代わりが間に合わない程の速さだ。
しかし、二人はそうなることを既に予想していた。
「スピカ!」
「わかってるわ」
その瞬間、スピカの天球魔法がシキを中心とする。
雷の一閃は円を描くように大きく軌道を逸れた。
「めんどくせぇ。雷魔法・雷帝ノ轟槍!!」
トルポルは続け様に雷の槍を出現させ、それをシキの遥か後方にいるスピカに向けて放つ。
「氷魔法・氷結ノ凍壁!!」
スピカは巨大な氷の壁を形成。
雷槍は氷の壁を凄まじい勢いで貫通して氷壁に大穴を開ける。
氷壁の中から雷槍がスピカへと直撃する瞬間、その軌道は再び大きく逸れた。
「氷魔法は時間稼ぎの為。天球魔法の中心は既に私に戻ってるわ」
「小賢しいな」
トルポルはスピカを睨みつける。
だがトルポルに彼女を見つめている暇など無かった。
「やっと!!ここまで来れた!!!」
シキがついにトルポルの数メートル近くまで接近していた。
「はっ!こんな至近距離に来て大丈夫か?俺の攻撃をもろに食らうことになるってのを考えなかったかバカ女」
トルポルはシキに向けて巨大な雷球を放つ。
しかし、その攻撃が当たる直前でシキは大きく起動を変えた。
天球魔法の中心は既にトルポルへと移り変っていたのだ。
「くそっ!またテメェかインテリ女!!」
「ええ。一本取られたようね」
トルポルの瞳に移るスピカは、既に氷魔法を形成。
巨大な氷の槍をトルポルに向けて放つ。
そしてその後ろでは
「バカとか低脳とか言ったお返し、返してあげるから!!!」
シキが既に闇魔法を放とうとしていた。
「氷魔法・零度ノ極槍!!」
「闇魔法・黒ノ滅激!!!」
前後、二人から一斉に放たれる氷魔法と闇魔法。
「ほざけ!!雷魔法・雷帝ノ郷滅!!!!!!」
トルポルの両手から放たれる巨大な雷の一閃により、二人の魔法は相殺される。
しかし、シキもスピカも、その顔は静かに口角を上げていた。
攻撃を防ぎながらも、その表情に何かを感じとったトルポルが周りを見渡す。
そして、その視線が上空へと向いた時、彼の瞳は大きく見開かれた。
上空。そこには既にシキの幽霊達が集まっており、魔法を準備していた。
「テメェら……小賢しいことしやがって!」
「あら、あなたがシキに言ったのでしょう?魔法の使い方が下手くそだって。だから私の知恵を貸してあげただけよ」
その言葉はトルポルにとっての皮肉であった。
まるで彼に言われた言葉の恨みを返すかのように、スピカがトルポルに鋭い視線を向け、小さく笑う。
「いっけぇえええ!!!ゴーストちゃん!!!!!!」
シキの号令と共に、上空にいた幽霊が一斉に魔法を放つ。
他属性の魔法が同時に放たれ、それはまるで七色に輝く虹のように輝きを帯びていた。
「クソ共が!!!雷魔法・雷帝ノ咆哮!!!」
トルポルは再び全身から強力な雷を放つ。
しかし、前回は多方向からの魔法だったのに対し今回は上空からの集中攻撃。
更に両手はスピカとシキの攻撃を防ぐので精一杯だった。
「うっ、うぐぐっ、こんな、こんなもの!!こんなものぉおおおお!!!!」
トルポルは全身にありったけの力を込め、その放電をより強くする。
「がんばれぇえええ!!ゴーストちゃーーーーん!!!!!」
対するシキの幽霊の数は未だ四十体以上。いくらトルポルと言えど、この軍勢を一人で対処するのは不可能だった。
「くっそっ……がぁぁあああああ!!!!」
トルポルの身体は幽霊の魔法の重圧に耐えきれない。
地面に亀裂が入り、片足が崩れ、そして本気の抵抗も虚しく最後にはその身体を勢いよく地に伏せた。
「やった!!スピカ!!やったよ!!!!!」
「ええ。上手くいったようね」
シキの足元に倒れたトルポルが動く様子は無い。
あれだけの集中砲火を食らったのだ。いくら雷帝の魔術師とはいえ重症どころでは済まないはずだ。
こうして、シキとスピカ対トルポルの戦いは二人の勝利で終わった。
────────はずだった。
─────────────────────────
シキとスピカが戦ってる間、その近くの別の場所ではラミアとヴェルムが激戦を繰り広げていた。
「おらおらどうした魔女さんよぉ!!!ぜんっぜん俺に近づいてきてくれねぇじゃあねぇかよぉ!!!」
「うるさいですね!あなたなんかに近づきたくないだけです!!」
雷魔法と操血魔法。二つの魔法が衝突し合う。
トルポルが一撃火力の雷であれば、ヴェルムは手数の雷だ。
彼は数多の雷を作り出し、その矛先をラミアへと向ける。
対するラミアも、血を硬化させ対応。
「まだまだです!!」
ラミアは再び血で羽を作ると、そのまま上空へと飛び立つ。
そしてヴェルムの真上へと行き、巨大な血の剣を形成する。
「操血魔法・紅月ノ剣!!」
血で作られた紅く巨大な剣は、ヴェルムへと向けて一直線に落下していく。
しかし
「やるじゃねぇか。雷魔法・蒼ノ雷剣!!!」
対するヴェルムは、蒼く輝く雷の剣で相殺。
衝突する二つの剣が互いに崩れ、辺りには雷と血が散布する。
「おらおら!降りてこいやぁ!!!」
「えっ!?」
剣同士の衝突と同時に、ヴェルムはラミアに向けて雷を落としていた。
その雷はラミアの血の羽に直撃し、彼女を強制的に大地へ落とす。
その瞬間
「終わりだな」
「い、いやっ………………」
ヴェルムは高速でラミアが落ちてくる地点に近づいていた。
咄嗟に血を掻き集めるも、間に合わない。
「トドメだ。雷魔法・撃雷ノ槍」
その攻撃は、ラミアの父コメスを葬った魔法だった。
雷の槍がラミアの胸を貫通する。
「あっ……あがっ………………」
ラミアは口から大量の血を吹き出す。
「良かったじゃねぇか。お父様と同じように死ねるなんて、光栄に思え!!!」
貫いた雷の槍が、ラミアの内側から電撃を放つ。
「いやぁぁぁあああああああ!!!!!!」
ラミアの断末魔に、ヴェルムは高笑いを決める。
そしてその雷槍が引き抜かれた時、ラミアは大量の血を流しながらその場に倒れた。
「威勢張ってた割には大したことなかったな。あの世でお父様ってやつと仲良くしてな」
ヴェルムは唾を吐き捨てるような視線で動かなくなったラミアにそう言い残すと、そのままシキとスピカが戦っている場所へと向かった。
残されたのは、血溜まりの中に倒れた指先一つ動かぬ少女の身体だけだった。
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そして場所は戻り……
「やった!!スピカ!勝ったよ!!!」
地に伏せ、動かなくなったトルポルを見てはしゃぐシキ。
その光景にスピカはそっと胸に手を当て、安堵した。
その瞬間だった。
「シキ!!!!!!」
「えっ?」
スピカがとある存在に気付き、ありったけの声で叫ぶ。
しかし
「気付くのが遅かったな!」
「っ!!!」
ヴェルムは手に雷を纏わせ、シキの身体を貫通させた。




