店
店の前に着くと、店内には3、4人程お客さんがいるのがわかった。
父の店は約縦2m、横10mの大きなガラス張りの入り口がある。
店の中に入ろうと、ガラス戸に手をかけたところでユウタが私に気づいて厨房から小走りで出てきた。
「凛ちゃんどうやった?パパおった?」
その声で周りのお客さんたちもぞろぞろと私の周りに集まってくる。
今この店内にいるお客さんは全員父と仲がいい人たちで、ユウタから聞いて事情を知っている人たちだ。
私も全員と顔馴染みだし、一緒に飲んだこともある。
「いやいなくて。まだ電話でない?なんでかな」
私が言い終わる前に、お客さんの一人が早口で話し出した。
「凛ちゃん!もしかしてだけどさ、お父さんヤクザとか半グレ絡みでいざこざなかった?」
私はドキッとした。
確か数日前、オープン前に店に食材を置きに立ち寄った際に父が地元で有名なヤクザと話しているのをみた。
それも深刻そうな雰囲気で。
だがそれをこの人たちの前で話してもいいのか、と我に返った。
私の中で、父の友達や後輩は上部だけの関係だと思っているし、この人たちも同じだと。
父だけが本当の仲間だと思っているのだ。昔から。
私は首を軽く横に振り、「全く知らない。店のメニュー決めようかって言ってて来たらいないし、電話も出ないから心配で。」とだけ話した。
みんな私が何も知らないのを知ると少しがっかりしたような顔をした。
まぁ今ここにいる人たちはいち早く父の状況が知りたい聞きたがり達だから仕方ない。
さすが父の友達だ。腹の底に知れないクチが軽い連中。




