英雄候補?
土下座少年の名は――なんだ?
俺は、この少年を知らない。
だが――知らないといけない。
バスタルだからだ。
弟子の名前を知らないなんて、ありえない。
さすがに、これはバレる。
俺は少年を屋敷の食堂へ通し、机を挟んで椅子に座らせた。
ミーナは下がろうとしたが、あえて隣に残す。
――ボロが出たら、任せるためだ。
我ながら完璧な布陣だと思う。
「……で、話とはなんだ」
席に着いてから、わざと数秒の沈黙を置く。
この沈黙こそが威厳――だと、俺は信じている。
「俺の、じぃちゃんの話なんだけど……」
じぃちゃん?
また新キャラか。
まあいい、とりあえず聞こう。
「……爺さんがどうした」
「爺さん?……そんな呼び方だったっけ」
――やばい。
いきなり踏み抜いた気がする。
弟子の祖父とバスタルの関係性が、まったく想像できない。
俺は咳払いして誤魔化した。
「……話を続けろ」
威圧で押し切る。
これぞバスタル力。
「あ、うん。じいちゃんがさ、俺に出ていけって言ったんだ」
「……」
「俺の才能が怖いんだと思う。だから――」
少年は拳を握りしめる。
「俺は、じいちゃんと戦わなきゃいけない」
……なるほど。
いや、全然わからない。
何を言っているんだ、この土下座少年は。
祖父は武闘家か何かか?
こういう時のために、ミーナがいる。
「ミーナ。お前はどう思う」
「はい。私は――試練だと思います」
即答だった。
「英雄は、試練を与えるものですから。
私も、つい先日バスタル様から試練を与えられました」
……それ、ビンタのことだよな?
「きっと、リオンさんも
ノエルさんから試練を与えられているのですよ」
ナイス、ミーナ。
試練理論はよく分からないが、
少年の名前と祖父の名前が一気に判明した。
――リオン。
――ノエル。
俺は思わず、口元が緩んだ。
謎が一つずつ繋がっていく感覚が、妙に気持ちいい。
「で、師匠。どうなんだよ」
リオンは前のめりで俺を見る。
ミーナも、期待に満ちた目を向けてきた。
――バスタルなら、こう言うだろう。
「任せろ」
だが俺は、違う。
「……ついて行ってやるが、
戦いになっても手伝わない」
それだけを、はっきり告げた。
「それでいいよ。
師匠は、見ているだけで」
「さすがです、バスタル様」
リオンもミーナも頷いた
……しっかり、逃げる準備はしておこう




