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英雄の覚悟?

え?

……ミーナ、やばくないか。

俺は建物の陰から、ミーナとデルの姿を見ていた。

ミーナは、目の前の金髪の男に追い詰められ、壁にもたれかかっている。

顔は泥だらけ。肩で息をしながら、それでも鋭く男を睨んでいた。

デルは――完全に腰を抜かし、尻もちをついたまま動けない。

最悪の状況だ。

こういう時、英雄なら格好よく登場するんだろうな。

剣を掲げて、一喝して、一瞬で場を制圧して。

……でも、俺には無理だ。怖いし

なんで、こうなった。

屋敷を出たあと、俺はリオンが危険だと思って探していた。

これは本当だ。逃げてたわけじゃない。

ガチで探した。

でも、見つからなかった。

そもそも、リオンってどこにいるんだ?

手紙はあいつが持っていった。

俺は当てもなく街をさまよい、

結局、諦めて屋敷に戻った。

――屋敷は、上下に真っ二つになっていた。

あの時は、本気で震えた。

口が、うまく閉まらなかった。

中に一人で入るのが怖くて、

またリオンを探しに戻ろうとした、その時。

聞こえた。

間違えようのない声――ミーナの声だ。

そして、今、この状況にいたる

……出なきゃ、まずいよな。

でも、出て何をする?

魔法、使えないぞ。

必死に考える。

一、話し合い。

剣を構えて殺す気満々の相手に通じる気がしない。却下。

二、石を投げて逃亡。

魔法で追われたら即死。却下。

三……ない。

焦りで、頭が真っ白になる。

このままだと俺は、

聞き耳を立てるだけの家政婦だ。

「バスタル様が来れば、あなたは負けます」

ミーナの声が聞こえた。

迷いのない、自信に満ちた声。

……俺は、こんなに自信がないのに。

金髪の男が、ミーナの首元に剣をかける。

あわあわあわ。

どうする。マジで。

「バスタルが、英雄をおかしくした」

男が言った。

「やつは死ぬべきだ。俺は、やつを否定する」

「ねえさんが今のあなたを見たら、怒りますよ」

……ねえさん?

どうやら二人は知り合いらしい。

「ワンダが今の俺を見たら、確かに怒るだろうな。

だが、死人は語らねえ」

「……先にお前がワンダに伝えてくれ。

世界を変えたあと、お前のところに行くってな」

男が腕を上げ、剣を振り下ろそうとする。

ミーナは、目を閉じた。

――もう、考えるのはやめた。

「待て!」

俺は、建物の陰から飛び出した。

ミーナ。

金髪の男。

そして、腰を抜かしたデル。

全員の視線が、俺に集まる。

足が震える。

長いローブで隠れているのが、せめてもの救いだ。

「俺の仲間に手を出したら、分かってるな」

できるだけ凄んだ。

ビビって引いてくれたらラッキー、くらいの気持ちだ。

当然、そんなわけはなかった。

男はミーナへの興味を失ったように、こちらを向く。

「……バスタル・ヘタリクス。お前は殺す」

「新しい世界の英雄のために」

……あ。

思い出した。

魔道具店で声をかけてきたやつだ。

たしか――ライナ。

デルが言っていた名前だ。

「ライナ。俺を殺したい理由は何だ」

「お前が、この世界の英雄だからだ」

「……どういう意味だ」

「俺は一度、お前に相談した」

知らない。

たぶん、バスタルの記憶だ。

「英雄とは、自己犠牲を顧みず、見返りを求めないものだ」

「お前は、そう言った」

……あー。

それ、バスタルは絶対言うやつだ。

あいつはボランティア企業戦士だから。

忘れてくれ。

そう言ったら、殺すのはやめてくれるかな。

「その考えが国民に広まった」

「英雄に責任を押し付ける世界ができた」

「全部、お前のせいだ」

「だから俺は否定する」

「お前が作った、英雄の世界を」

土下座しようかな。

俺が謝って終わるなら、そうしたい。

でも――言いたいことがあった。

「英雄像を押し付けてるのは、

お前なんじゃないか」

……やばい。

「ライナ。本物の英雄を――教えてやろう」

あーあ。

流れで言っちまった。

今すぐ取り消したい。

「……教えてみろよ」

ライナは殺意を剥き出しにし、剣を構えて突っ込んできた。

俺は迎え撃たず、全力で逃げた。

建物の影へ、走る。

マジで、こわい。

――でも、これでミーナとライナは引き離せる。

あとは。

俺が死なずに、逃げ切る方法を考えるだけだ。

それが、

死ぬ前に思いつくかどうかだな。

俺は死んだら、どうなる。

また元の世界に戻れるのか。

……まあ、戻っても死んだような人生だけど。

とりあえず逃げよう。

俺は幼い頃、かけっこだけは誰にも負けなかった。

逃げのスペシャリストだ。

それだけは――自信がある。

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