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英雄でモブ?

どうなってんだろ?

リオンとノエルの戦いが、始まっていた。

……いや、本当に始まったのか?

そう疑いたくなるほど、何も見えない。

漫画でよくある、スピード線が見える――

そんな描写すら、俺の目には存在しなかった。

俺には、ノエルとリオンの動きがまったく見えない。

目を凝らしても、そこにあるのは空間だけ。

つまり――

今の俺にとって、二人は

存在していないのと同じだった。

頼れるのは、周囲の反応とミーナの声だけ。

「リオンさん、そこです! 雷で攻撃を!」

どうやらリオンは、雷の魔法も使っているらしい。

炎だけじゃなかったのか。

……やっぱり主人公っぽい。

俺が物語を書くなら、間違いなくリオンを主人公にする。

ミーナは完全に興奮していて、実況が止まらない。

「危ないです! あっ――!」

次の瞬間、建物の壁が大きく凹んだ。

……たぶん、リオンが吹き飛ばされた。

どうやって?

正直、めちゃくちゃ聞きたい。

だが聞いたら、“見えていない”ことがバレる。

ミーナには、もう少し頑張って言語化してほしい。

そんな俺の願いとは関係なく、戦いは続く。

「まだまだじゃの、リオン」

ノエルの声が、上から聞こえた。

宙を飛んでいる。

止まっているから、俺にも見えた。

……余裕の声だ。

リオンは右拳に炎、左拳に雷をまとい――

そして、また二人とも消えた。

「もっと魔力を込めて! そうです、そのまま!」

ミーナの実況だけが、戦場を繋いでいる。

「雷――いけます! やりました!」

その言葉と同時に、研究所全体が白く光った。

勝ったか?

そう思った瞬間、それが間違いだと分かった。

「……ほぉ。そんなこともできるのか。

勉強になるのぉ」

ノエルの声は、相変わらず余裕そうだった。

……どうやって避けたんだよ。

そのとき、俺は気づいた。

今の俺の役割。

バトル漫画で、戦闘が見えず、

歓声だけ上げるモブ。

英雄がモブ。

……笑えない。

ドンッ、と鈍い音。

今度はリオンが地面に叩きつけられた。

動こうとしているが、動けない。

地面が、ゆっくりと凹んでいく。

――重力魔法。

ノエルがそれを解き、宙から降りてくる。

「もう……いいじゃろう、リオン」

だがリオンは、ふらつきながら立ち上がった。

「……俺は、負けられない。未来のために……!」

「なんの話じゃ」

……俺とノエル、完全に同じツッコミだった。

そして、二人はまた消える。

「雷が――そこ! え、あ……やばいです!」

次の瞬間。

「バ、バスタル様、危ない!」

「え?」

振り向いた、その瞬間。

――近い。

ノエルの拳が、俺の目の前で止まっていた。

(……殴られる?)

リオンを止めなかったことに、怒ったのか?

勝てる気がしない。

ミーナに頼ろうと、

口を開きかけた、そのとき――

「さすがじゃのぉ……英雄バスタルよ」

……なにが?

「リオンの限界を、見抜いておったとは」

俺は、何もしていない。

ただ、前に出ていただけだ。

だが視線を落とすと、そこには倒れたリオン。

……なるほど。

俺が割って入って、“止めた形”になったらしい。

(いや、なんで俺、ここにいるんだ……?)

入り口付近にいたはずなのに。

どうやら無意識に、

戦いを見たくて前に出ていたようだ。

やっぱり、バトルってかっこいい。

俺は参加したくないけど。

そう思うと、

とことん英雄に向かない性格だと自覚した。

そしてノエルが、俺の方へ歩き出す。

……やる気か?

だがノエルは俺の肩を軽く叩き、

リオンを抱え、俺を通り過ぎて別室へ向かった。

扉の前で、振り返り、こう言う。

「――英雄同士、話そうか」

……なんて、かっこいい言葉なんだろう。

俺は、ただそう思った。

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