戦闘開始?
「……何してんの?」
ドーム状の建物の前に立った瞬間、
俺はリオンの右腕を見て、素直にそう思った。
――拳、燃えてるんだけど。
「よし、行くか」
リオンが気合を入れた、その次の瞬間。
炎をまとった拳を、建物の扉へと叩きつけた。
――バンッ!!
鉄板みたいに分厚そうな扉が、
音を立てて建物の中へ吹き飛んでいく。
……なにこれ。
完全に道場破りじゃん。
闇武闘大会とか開かれてたらどうするんだよ。
俺、巻き込まれる未来しか見えないんだけど。
驚きで口が開いたまま固まっていると――
本来、ここで止める役のはずのミーナが、
俺の方を向いて、にこっと微笑んだ。
「頑張りましょうか」
……なんでやる気満々なの?
俺は戦わない。
できることといえば、逃げることくらいだ。
リオンを先頭に、俺たちは施設の中へ入っていく。
いや、入る前に説明してほしい。
――ここ、何の施設なの?
そう思いながら後を追うと、
中には白衣姿の人間が大勢いた。
見慣れない機械。
床を這う無数の配線。
……なるほど。
研究施設か。
ということは、ノエルは研究者。
武闘家とか想像してたから、正直ほっとした。
はぁ……ひと安心。
「じぃちゃーん!!」
リオンが叫ぶと、研究員たちが慌てて道を開ける。
現れたのは、身長160センチほどの白髪の人物。
猫背で、やけにカラフルなベストを着ている。
「やれやれ……で、リオン。何用じゃ?」
「じぃちゃん、決闘だ。仲間も連れてきた」
「ほぉ……」
ノエルはリオンから視線を外し、俺を見た。
「なるほどのぉ……面白いの」
……ん?
何が面白い?
俺、参加しないぞ?
まさか俺も戦う前提?
いやいやいや、
「ついて行ってやる」って言っただけだよな?
その勘違い、今すぐ訂正してくれ、リオン。
――と、そのとき。
後ろで、ミーナが魔法で剣を創っていた。
……やる気満々じゃん。
俺はゆっくり、一歩ずつ後退する。
できるだけ目立たないように、小幅で。
ノエルが腕を上げ、指を鳴らした。
パチン。
その音と同時に、
研究用の機械や道具が、建物の端へ整然と並ぶ。
……すげぇ。
掃除、めちゃくちゃ楽そう。
ミーナ、屋敷の掃除、あれでやればいいのに。
「では、始めるかのぉ」
ノエルは右腕を前に出し、左腕を背中に回す。
軽く手を振り、「来い」と合図した。
……異世界の研究者、無駄にかっこよすぎだろ。
リオンは薄く笑い、両腕を構える。
完全に戦闘態勢。
その頃、俺も準備を終えていた。
入口付近まで下がり――
もちろん、戦う準備じゃない。
逃げる準備だ。




