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戦闘開始?


――どこに向かっているんだ?

俺は、心の中でそう呟きながら歩いていた。

屋敷を出て、ミーナと共にリオンの後を追っている。

行き先は不明。

「いつもの場所」とだけ言われ、それ以上の説明はない。

……ミーナは分かっているんだろうか。

質問しないということは、知っているということだろう。

なら、俺が聞くわけにはいかない。

バスタルなら、知っていて当たり前だからだ。

そんなことを考えているうちに――

気づけば、俺の屋敷がある街を越え、隣町に入っていた。

ここは……どこだ?

まあいい。

正直、自分が住んでいる街の名前すら知らない。

俺にとって地元なんてものはない。

どこにいようが、同じだ。

歩くたびに思う。

……やっぱり、新鮮だ。

慣れたつもりでいたが、全然だった。

武器屋、魔導具屋、空を飛ぶ人々。

箒に乗って移動している者までいる。

……箒、多くないか?

俺が立ち止まると、

ミーナが心配そうに顔を覗き込んできた。

「どうしましたか、バスタル様」

「屋敷のある街より……なんか、異世界っぽい」

「異世界っぽい、は分かりませんが……」

ミーナは少し考えてから、丁寧に説明してくれた。

「この街は、国で一番魔法研究が盛んなのです。

優秀な魔道士が多く、学術学院や研究所もあります。

ですから、屋敷のある街に比べて

魔法を道端で使う人も多いのですよ」

……なるほど。

的確すぎる解説だった。

確かに、魔導具店の数も異常だし、

空を飛んでいる人間の方が多い。

歩いている方が、少数派に見える。

俺が周囲を眺めていると、

少し間を置いて、ミーナが不安そうに聞いてきた。

「……あの、私の答え、合っていましたか?」

「ああ」

その一言で、

ミーナは満面の笑みになり、小さくガッツポーズをした。

「私、また一つ英雄に近づきました!」

……正直、何がそんなに嬉しいのかは分からない。

だが、ミーナが喜んでいるなら、それでいい。

「師匠、はやく行こうぜ!」

前方から声が飛んでくる。

一番前を歩くリオンだ。

……もう、だいぶ先にいる。

せっかちやつだ。

追いつくと、リオンは不満そうに言った。

「空を飛んだ方が早いって言ったのに」

……空を飛ぶ?

どうやるんだ、それ。

俺にも教えてほしい。

できるなら、俺も飛びたい。

――早く、魔法を使えるようになりたい。

だが誰も教えてくれない。

バスタルという名前と、英雄という立場が邪魔をする。

俺は魔法が使えないことがバレないよう、

とっさにそれっぽい言い訳をした。

「戦いの前だ。魔力は温存しろ」

リオンは真剣な顔で頷いた。

……戦い?

自分で言っておいてなんだが、

俺は戦う気なんてゼロだ。

というか――何の戦いだっけ?

英雄候補のじいさん?

ノエル?

ノエルって、何者なんだ。

……巻き込まれたくない。

本気で。

そう思いながら歩いていると、

ようやく目的地らしき場所に着いた。

怪しい、ドーム状の建物。

……闇武闘大会の会場とかじゃないよな?

嫌な予感しかしない。

「はぁ……」

この先、誰が出てくるんだろうな。

俺は手汗を悟られないよう、

そっとローブの中で手を握りしめた。

「……何してんの?」

ドーム状の建物の前に立った瞬間、

俺はリオンの右腕を見て、素直にそう思った。

――拳、燃えてるんだけど。

「よし、行くか」

リオンが気合を入れた、その次の瞬間。

炎をまとった拳を、建物の扉へと叩きつけた。

――バンッ!!

鉄板みたいに分厚そうな扉が、

音を立てて建物の中へ吹き飛んでいく。

……なにこれ。

完全に道場破りじゃん。

闇武闘大会とか開かれてたらどうするんだよ。

俺、巻き込まれる未来しか見えないんだけど。

驚きで口が開いたまま固まっていると――

本来、ここで止める役のはずのミーナが、

俺の方を向いて、にこっと微笑んだ。

「頑張りましょうか」

……なんでやる気満々なの?

俺は戦わない。

できることといえば、逃げることくらいだ。

リオンを先頭に、俺たちは施設の中へ入っていく。

いや、入る前に説明してほしい。

――ここ、何の施設なの?

そう思いながら後を追うと、

中には白衣姿の人間が大勢いた。

見慣れない機械。

床を這う無数の配線。

……なるほど。

研究施設か。

ということは、ノエルは研究者。

武闘家とか想像してたから、正直ほっとした。

はぁ……ひと安心。

「じぃちゃーん!!」

リオンが叫ぶと、研究員たちが慌てて道を開ける。

現れたのは、身長160センチほどの白髪の人物。

猫背で、やけにカラフルなベストを着ている。

「やれやれ……で、リオン。何用じゃ?」

「じぃちゃん、決闘だ。仲間も連れてきた」

「ほぉ……」

ノエルはリオンから視線を外し、俺を見た。

「なるほどのぉ……面白いの」

……ん?

何が面白い?

俺、参加しないぞ?

まさか俺も戦う前提?

いやいやいや、

「ついて行ってやる」って言っただけだよな?

その勘違い、今すぐ訂正してくれ、リオン。

――と、そのとき。

後ろで、ミーナが魔法で剣を創っていた。

……やる気満々じゃん。

俺はゆっくり、一歩ずつ後退する。

できるだけ目立たないように、小幅で。

ノエルが腕を上げ、指を鳴らした。

パチン。

その音と同時に、

研究用の機械や道具が、建物の端へ整然と並ぶ。

……すげぇ。

掃除、めちゃくちゃ楽そう。

ミーナ、屋敷の掃除、あれでやればいいのに。

「では、始めるかのぉ」

ノエルは右腕を前に出し、左腕を背中に回す。

軽く手を振り、「来い」と合図した。

……異世界の研究者、無駄にかっこよすぎだろ。

リオンは薄く笑い、両腕を構える。

完全に戦闘態勢。

その頃、俺も準備を終えていた。

入口付近まで下がり――

もちろん、戦う準備じゃない。

逃げる準備だ。


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