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遭遇

短編です。

10〜20話で完結させようと思ってます。

主人公シオミの生き様を是非ご覧ください。


瞬間、相手から放たれるのは宙を華麗に舞い弧を描くムーンサルト。


それを一歩後ろへ引き、頬を掠るギリギリの所で躱す。


相手の動きを読んでさらに1歩下がり、次の攻撃に備える。


だが予想とは裏腹に相手はその場から動かず挑発的な眼差しでこちらを見ている。


「ふぅ...ふぅ...」


集中により周りの音が遮断される。静寂の中、感じるのは己の呼吸音と脇腹を伝う汗。


相手の挑発に乗り、更に乗り越えてやるのが俺の性。


だがこのまま相手との距離を詰めても相手の間合いでやられるのがオチ。


だが俺は奴があの技を使ってくる事は予測出来ている。


相手が攻撃して来た所をカウンターで返して更に俺の必殺技を決める。


「おらぁぁぁぁぁあ!!」


俺がこれから繰り出すのは三日三晩練習した伝説級の即死コンボ。この決闘に決着を付ける事になる必殺技。


K.O.!!


目の前の画面に映るのは、読みを外して敵のコンボでボコボコにされ地面に這いつくばっている自キャラ。

コンボを出す事もなく決着がついてしまった。


「ったはぁぁぁ!」


集中により詰まっていた息を大きく吐き出す。


「んであの技使わねえんだよぉ!俺読んでたのにっ!」


「相変わらず読みが下手くそだなソルティは。」


ニヤケ面で答えるこのデブはこのゲーセンで知り合った宿敵であるサトウ・ヨシキだ。


「......ソルティって何なんだよ。」


「あだ名だよ、シオミだからソルティだ。」


サトウはドヤ顔でそう語る。

どうせ洋画かそこらの受け売りだろう。

海外かぶれな奴だ。


「じゃあテメェのあだ名はクソデブチンカス野郎でいいか?」


「あだ名を付けていいのは勝者のみだ。ソルティ、お前に俺のあだ名を付ける権利はない。付けたきゃ俺に勝つんだな。」


サトウはやれやれと言わんばかりの表情をする。


「次は絶対ぶち殺してやるからな。来週まで首洗って待ってろ。」


「弱い犬はよく吠える......よく言ったもんだよな。」


いちいち気に障る野郎だ。


「そういえばソルティ、再来月の店内大会のエントリーはしたのか?」


「再来月?え、サイファ4の大会あんの?!」


サイファ4。

シオミ達がやっていたゲーム「サイバーファイターズ4」の略。

サイファは現在第6作目まで出ているが一部のファンは未だシリーズ最高傑作と言われている4作目をプレイしている。

このゲームの店内大会が開催されるのは実に久しい。

前回大会があったのは3年前、そこからしばらく音沙汰がなかったがまさか再来月また開催されるとは。


「ああ、オース最強が決まるんだ。アツいだろ。」 


テンションが上がったシオミを見ながらサトウはニヤついてそう言う。


「前回は俺もお前もまだサイファ4やってなかったからな。お互い初めての大会か......てか再来月の何日だ?」


シオミはサトウに問う。


「28日だ。時間は忘れたが確か朝っぱらからだったな。」


「再来月の28日ってことは79日後か、まだ結構あるな。」


「そのくらいの計算でユナイト使うなよソルティ、バカになるぞ。」


「あ?使ってねえよ。俺の計算力舐めんな。」


ユナイト。人間の脳に接続されてるインプラントにダウンロードされているアプリケーションの総称。

ユナイトの種類は多くあり、計算能力を向上させる物や記憶力を向上させる物などがある。


サトウは呆れた表情をする。


「反射して見えてたぞ。緑に光ったUライトがバッチリな。」


Uライト。人間のうなじに付いているインプラント。

ユナイトを使用する時は緑色に光る。

他にも生命維持活動に異常をきたした際などに赤く光ったり

違法のユナイトを使用した際に紫に光ったりなど様々な役割がある。


「誤作動でもしたんだろ。てか俺バイトあっからもう行くわ、また来週な。」


シオミは椅子から立ちあがる。


「応、じゃあなソルティ。次は俺に勝ってくれよ?」


サトウはニヤケ面でそう応える。


「うっせ。」


シオミはスタジャンのポケットに手を入れながら歩き出し、店を後にする。




店を出てしばらく、商店街の大通りから少しそれた路地を歩いていると向かいから3人組の男が歩いてくる。背丈はシオミと同じくらい、175cm前後の男2人と大柄な男1人。


3人は会話をしながらもチラチラとこちらを見ている気がする。

気のせいだと思いたい。


シオミと3人組の距離は少しずつ縮んでいく。

その度、シオミは少し警戒をしながら歩く。


すれ違うその瞬間、シオミの肩にいきなり衝撃が加わる。


「いってぇ〜!あーいってぇ!」


3人組の内の1人が無理矢理シオミに肩をぶつけてきた。

ぶつけて来た男はわざとらしく痛みを訴える。


この流れは......


他の2人も口を開ける。


「あーあー!大丈夫か?!こりゃひでぇ怪我だなぁ?!兄ちゃん、どこに目つけて歩いてんだ?!」


「おいおい、あんまり騒ぐな。お兄さん、お互い大事にはしたくないでしょう?こちらとしては怪我人が出ちゃってるからね、まあ治療費?慰謝料?だけ貰えればいいからさ、ね?わかるでしょう?」


カツアゲだ。

古から使われて来た方法でのカツアゲ。


相手は3人。

喧嘩なったら人数不利だ。

だがしかし、俺の前ではそんなの関係ない。


「なんか言ったらどうなんだ?兄ちゃ......」


大柄な男が喋っている中、シオミは恐るべき速度で......


「バーカ!!カツアゲ下手くそなんだよゲロカスヌーブ共が!!!」


全力ダッシュで逃げる。


「3人も居るのに俺のこと囲わねえとか下手すぎだろあいつら......まあ囲われてても俺は逃げれるけどな。」


「っ!あいつ!!おい、追いかけるぞ!!」


シオミに逃げられ面を食らった3人は出だしが遅れつつもシオミを追いかけ始める。


「待て!コラ!タコ!はぁ、はぁ、金なんてどうでも良い!俺らの事バカにしたこと後悔させてやる!」


「お前ら、こう言う時に役に立つユナイトねえのかよ!はぁ、はぁ。」


体力には自信があるシオミとは違い、チンピラ3人はすでに息が切れている。

撒くのも時間の問題だ。


「バカ共が、俺にかけっこで勝てるわけねえだろって」


逃走中のシオミが角を曲がる瞬間、ショートカットの女の子とぶつかりそうになった。


「キャ!!......ってお兄ちゃん?!」


その女の子はシオミの妹。シオミユメだ。

この辺でバイトをしていることは知っているのでそこまで驚きはしない。


「悪いユメ!今追われてるからまたな!!」


妹を尻目に兄は逃げ続ける。


だがしかし......


「キャ!!!」


ユメはシオミを追って来たチンピラ3人と衝突し、転倒してしまった。


その声を聞いた途端、シオミは足を止める。


「大丈夫かユメ!」


チンピラ3人も足を止める。

そして何やら目配せをし、ニヤリと笑った。


「お嬢ちゃん、あいつとどんな関係かな?妹さんかな?」


大柄な男がそう聞く。


ユメは何かを察し、沈黙を選択する。


「お嬢ちゃん、俺今質問してんだけど?」


大柄な男はユメの腕を強く掴み無理やり立たせる。


「っ!」


腕を強く掴まれたユメは頭で顔を歪ませる。


「おい離せ!そいつは関係ない!!」


そう叫ぶシオミの額からは汗が垂れ落ちる。


「関係ない割には随分必死だな?まあいい、こいつがお前とどんな関係だろうが人質になればそれで良い。」


大柄な男がそう言うと、他2人のチンピラがこちらへ向かってくる。


「兄ちゃんよお、さっき言った事忘れてねえよな?金だけじゃ済まねえからな?」


シオミは全てを察し、歯を食いしばる。



夕暮れ時。

ゴミ袋の山の上に捨てられたシオミは呆然と橙に染まった空を見て早一時間。

バイトの出勤時間はとうに過ぎている。

チンピラの攻撃を無抵抗で受けることで妹への手出しは回避することが出来た。

チンピラが去った後、隠れさせていた妹が探しに来たが、先に帰らせた。

兄のこんな姿はお互いの為見せたくはない。


ゴミ袋の山に捨てられた傷だらけの男。

オースではこんな光景は日常茶飯事。

前を通る誰もがシオミを気に留めずに通り過ぎる。


「はぁ、あいつら全員ぶっ殺してやるか。」


と言っても喧嘩であいつらに勝てるとは思えない。

そもそもシオミは喧嘩で役に立つユナイトを持っていない。

ユナイトを買うには金と売ってくれる知り合い......つまりコネが必要。

シオミにユナイトを買うお金はない......しかしコネはあった。


「頼むラヴ!一個だけで良いから安くしてくれ!!将来絶対お得意さんになるから!!」


シオミは土下座で頼み込む。


「あのな?シオミ。商売において私は贔屓をしないんだ。たとえお前が幼馴染だとしても、どれだけ大層な夢を持っていたとしても、どれだけ惨めで可哀想でも、安く売る事は出来ない。」


そう語るのはラビット・ラヴ

茶髪にショートカット、目元は若干タレ目気味で長年の酷使によるクマが特徴的な女の子。

シオミの幼馴染に当たる人物だ。

今2人がいるのはラヴのラボラトリー。

ラヴはいつもここでユナイトの開発研究、売買をしている。



「お前の傷だらけの顔見りゃ何したいかなんて赤子の手を取るように分かる。」


「ことわざが混ざってるぞ......わかってるならお情けでもしてくれねえか?」


「尚更ダメだ。これ以上そいつらとは関わるな。お前がボコボコにされた、それで終わりで良いんだよ。災害に遭ったとでも思って大人しく寝ておけ。」


ラヴの言葉は優しさから来る物だろう。

ああ言う邪悪な人間に自分から関わりに行って良い事なんてない。

それは分かっている。

だがそれでも......


「あいつらは俺の妹を人質にしやがったんだ。ぶっ殺さねえと気が済まねえ。」


「......はいはい、シスコン野郎早くくたばって下さい。とにかくそもそも金が無いんじゃ話にならないから。とっとと帰りな。あと臭いから風呂入れ。」


ラヴは手を振り払うジェスチャーで帰れと促す。


「わあったよ、無理なお願いしてごめんな。」


シオミは立ち上がり、店を後にする。


ラヴのラボを出て数十分。

着いたのはホッパーズマンション。

シオミ兄妹が住んでいるマンションだ。

マンションと言うにはあまりにもボロボロであり、外壁はツギハギになっている。

マンションの足元にはホームレス達が常に居座っている。


「ただいま......ってまだ帰ってないのか。」


玄関に妹の靴が無い。


シオミはソファに座るとユナイトを使用し連絡を取る。


「通信出来てますか?」


「はい、すんません、色々あって。」


「カツアゲ?的な。はい、そんで結構殴られて。」


「はい、すんませんでした。またよろしくお願いします。」


連絡相手はバイト先の店長だ。

シオミは電化製品を扱う店のバイトをしている。

違法な店では無い。


連絡を終えたシオミは立ち上がりバスルームへ向かう。


洗面台の割れた鏡に写るのはあざだらけの顔。

ゴミ袋の山に捨てられたことで体に臭いが付いてしまった。


服の洗濯とシャワーを浴びるためにまずスタジャンを脱いで次に中のパーカーを脱ぐ。


すると何か硬い物が落ちる音がした。


「あ?なんだこりゃ。」


足元に何やら黒く四角物が見える。


「なんかの記憶媒体......?」


その見覚えのない物体は何やら中にデータが入っていそうな見た目をしている。

裏面を見ると何やら文字が書かれている。


「Serving the Future......ラプラス?......もしかしてユナイトか?!」


シオミはスタジャンを羽織り急いで家を出る。


行き先は本日2回目のラヴラボだ。


「はぁ、はぁ、はぁ。」


シオミは息を切らせながらラヴに近づく。


「なんだよまた来たのかよ、だから臭えって......」


ラヴの言葉に食い気味にシオミは口を開く。


「持ち込みのユナイトのインストールなら無料でサービスしてるんだよな?!」


先程、記憶媒体の中がユナイトかも知れないと思った瞬間、昔聞いたラヴラボのサービスを思い出しここに駆け込んだ。


「お、おう、一応初回だけって事にしてるけどな。お前は初めてだから無料サービスだぞ。でもユナイトなんてどこで貰ってきたんだ?」


ラヴは少し驚いた様子だ。


「ユナイトかどうかはまだわかんねえけどこれ!見てくれよ。」


そう言いながら記憶媒体をラヴに渡す。


「ちょっと待ってて、確認してみる。」


ラヴが記憶媒体をPCに接続して数分。


「よかったなシオミ、ユナイトだぞこれ。」


「マジかよ......!それでどんなユナイトなんだ?!」


ラヴは眉間にシワを寄せ、なんだか難しい表情をしている。


「なんだこれ、中身が暗号化されてて読み取れない。」


「暗号化って......解読出来ないのか?」


「見たことないパターンだ、出来るかどうかはわからない......」


数秒間、沈黙の時間が流れる。


「......入れてくれ。」


「は?」


「だからそのユナイトを俺に入れてくれ!!」


「いや、まだインストール出来るなんて言ってないぞ?」


「出来ないのか......?」


「いや、ロックは掛かっていないからインストール自体は恐らく出来る......でもなあ?」


「なんだよ、無料なんだろ?」


「仮にインストールして正常に使用出来たとする。でもその中身は完全にブラックボックスなんだぞ?!脳が蝕まれる可能性だってあるんだ。」


自分の為にここまで言ってくれるラヴの優しさをシオミは理解していた。

ただそれでも......


「チャンスなんだよ......今の俺は冷静さを欠いている、だから勢いに任せたいんだ。どうせ俺は明日にはこの怒りも消えてまた変わりのない日常に逃げる。ユナイトの為に金を貯めることもなく非生産的な人生を過ごすんだ。」


「......それでいいじゃないか。」


「俺はずっと心の何処かで今のオースをぶっ壊したいと思ってる。妹が安心して暮らせる環境を作りたいんだ。オースに住んでいた人間は余程の富がない限り他の都市に住むことは実質的に出来ないだろ?それならオースを変えればいい。」


「傲慢だな、そして無謀だよ。」


「無謀か......その通りだな。それでもずっと考えちまうんだ。こんな何もない人生に甘えてちゃダメなんだって。何かを志して行動したいって。」


シオミの言葉にラヴはため息を吐く。


「私達が生まれる前、オースはこの国で一番の未来都市と言われていた。実際今でもオースのユナイトは他の都市と比べて大きく発展、普及が進んでいる。でもそれは争いによって発展してしまったんだ。私は昔のオースに憧れている。争いではなく、みんなが知恵を絞って、人を傷つけるんじゃなく、人の役に立つユナイトを開発する。そんな街が見て見たい。」


ラヴが自分の考えを教えてくれた事にシオミは驚く。


「シオミ、後ろ向け。」


「ありがとう、ラヴ。」


ラヴはインストール用の機器をシオミのうなじにあるUライトに当たる。


「インストール許可しろ。」


「したぞ。」


インストールが開始される。


「道程は壮絶だぞ。」


後ろからラヴが声をかける。


「わかってる、絶対出来るなんて思ってない。でも道中で死んでも後悔はない。」


数分して、インストールが完了したのがわかる。


「とりあえず、ユナイトがちゃんとインストールされた。今から使用してみるな。」


シオミのUライトが紫に光る。


「紫か、まあ流石に認可された奴ではないか......で、何か変化はあるか?」


「よくわかんねえ、でもなんか凄く違和感を感じる、なんだこれ......」


「違和感?どんなだ?」


ラヴはカップを手に取りコーヒーを飲む。


「なんか、デジャヴ?見てえな。」


「どういう事だよ、デジャヴを感じるユナイトってか......?こういうのは何かアクションを起こすに限るな。」


瞬間、シオミは気づいた。


ラヴはいきなり立ち上がりシオミにビンタをする。

それは今ではない。


「ビンタ......!しようとしてるだろ!」


未来の出来事だ。


「お、よくわかったな。そんじゃ......」


ラヴはまたビンタをしようとする。

しかしシオミはそれを簡単に避けた。

一秒置いて、再度逆の手でビンタをしようとする。

シオミはそれも簡単に避けた。

続いてチョップ。

シオミは片手で掴み止める。


「分かるんだよ......未来が分かるんだよ!!!!!」


シオミは大声で叫ぶ。

それに対してラヴは目をまんまるにさせ、声を出さずに口の動きだけで「マジ?」と言った。

それに対してシオミは頷く。


シオミが拾ったユナイトは前代未聞、空前絶後の未来予知をするユナイトだった......






シオミの見た目はなんとなくでしかイメージしていません。

読んで下さった皆様それぞれのイメージが正解って事でお願いします。

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