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芳一郎奇談-人形棲家  作者: 水嶋


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可愛い子猫

「又志智…こんな時間になっても帰って来ないなんて…何かあったんじゃ…やっぱり行かせるんじゃ無かった…」



「ニャーン」



「こま!?」



「何それ!?どう言う事!?」



ボトッ…




「これは…又志智の…首…!?」


「ニャー」


「何で…何で…」



「ゴロゴロ…」


「刃物で…切られてる…」


「ニャー」


「アイツが…光重が…!?」



「フー」



「こんな子供に…何もしてないこの血筋が…そんなに邪魔だったか?…」


「ウー」


「許さない…絶対…光重…呪ってやる…」


「ニャー」




「ゴメンね、こま…置いて行っちゃうけど…お前は自由に好きな所にお行き…」


「ニャッ」




バンッ



ドサッ…






ピチャ…ピチャ…ピチャ…



「ゴロゴロ…」






『○月○日深夜、拳銃の様な発砲音がしたと近所の通報により警察が駆けつけた所、拳銃で頭を撃ち抜いて自殺したとみられる女性の遺体を発見。近くにその息子と見られる男性の生首も有りました。尚、この女性遺体からの出血が見られず謎が多く残されています。』





○○○○○○○○○○





「不思議だよねえ。あの頭、処分した筈なのに家に帰ってたんだよ?それがまた無くなったって。どんだけ徘徊してんだよってね」


「へえ」


「ママが恋しくなって家に帰ってママのお墓に帰ってったのかなあ?」


「足もない頭だけで?」



「僕は豊香が恋しくて帰れないなあ」


「あらまあ、奥様に叱られますよ?」


「僕を叱れるのは豊香だけだよ」


「ふふふ」


「ホント、最近益々良い女になったね」


「分かるかしら?秘訣はね、赤い飲み物よ?」


「何だろう?柘榴とかかな?美容にも良いって聞いた事あるなあ」


「ふふふ、まあ近いわね」


「そ。まあ何でも良いや。今日は帰らないからね。朝までだよ?」


「甘えん坊ねえ、光重さんは…」


「僕は中身が子供だからね…」


「私も甘えちゃおうか…ニャー」




「可愛い子猫だね、豊香は…」


「ゴロゴロ…」





○○○○○○○○○○





「最近光重さんの様子がおかしくないか?」


「そうなんだよなあ。この間は夜中部屋で何か一人で叫んでた」


「刀を振り回してた時もあるぞ。うっかり近づくと斬り殺されるな」



「やっぱアレかなあ…将棋の…」


「そう言うのは俺信じたくねえけど…でも首だけ家に帰ってったのがなあ」


「俺ら散々外の世界でヤバい目には遭って来たけどよ、組の中までヤバいのはなあ。落ち着かねえな」


「確かにな。目に見えねぇモノの相手はなあ。まだ高木組相手にしてた方がマシだな」



「でもよ、光重さん最近豊香さんの所入り浸ってねえか?」


「だよなあ。奥方の方がこえーかもな今は」


「気のせいかもだがよ…豊香さん所行って帰ってくると酷くなってるってか、段々おかしくなってねえか?」


「まあ、光重さんは元々おかしな人だがな」






「あらまあ、遂に奥様とは別居ですか」


「豊香がそうさせたんじゃないの?」


「やだわぁ。人聞の悪い。ふふふ」


「そうじゃなきゃ豊香をこの家に囲えないだろう?」


「まあ、私を奥様にしてくれるのかしら?」


「君は僕の可愛い子猫だよ…」


「まあ、結局は私はペットなのかしら」


「奥様なんてつまらない地位にはさせないさ。余計な仕事はせずにずっと僕に可愛がられてれば良いんだよ…」


「ふふふ、上手いこと誤魔化されてるわね」


「君は余計な事は考えずに僕だけの事を考えてれば良いんだよ…」




「勿論よ…あなたの事しか考えて無いわよ…光重さん…ゴロゴロ」





○○○○○○○○○○○





「大丈夫ですか?顔色が悪いですが…」


「なに、ちょっと疲れが溜まってるだけさ」


「それなら良いんですが…何かと噂になってますし…」


「例の将棋小僧の事だろ?それなら引き合わせたお前にも責任あるぞ、小森」


「はあ…」


「まあ良いさ。それより豊香は?」


「何処かにいるとは思いますが…探してきます」




ピチャピチャ…




「!?」



豊香!?こんな夜更けに灯りも着けず台所で…


何してるんだ…?




何か舐めている…




油!?




あっ

何処かへ行く…



足音が全くしない…



廊下に映し出された影が…





猫!?




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