幸せを盗む人は馬に蹴られずとも…
白い子猫を旅行に行く間頼むと客から預かっていた。
その客はその後連絡が取れなくなった。
どうしたものか…
と思っていたがある日夢の中でその子猫が私に言った
「今付き合ってる光重と言う男はヤクザで危ないから離れた方が良い。この先もっと良い出会いがある」
ヤケにリアルだった夢なので気になって調べてみたら本当だった。
ヤクザなんて関わったらこっちの身が危ない。
私は何とか離れようと連絡をしなくなったが、あちらからも連絡をしてこなかったので、上手くフェードアウト出来たようだ。
まあ、羽振りも良かったし遊び慣れてそうだったし、出会いもお店だったし、私も数いる中の1人だったろうからホッとしていた。
あの夢から子猫も姿を消した。
その後お客で来たおじさん…
お爺さんに近かったこの相馬さん
「あっ、すみません…」
「あらあら、相馬さん、大丈夫ですよ」
「あらまあ、派手にこぼしちゃったわね」
この人は常連の羽振りの良い客に連れて来られていた。
遊び慣れても無い、ちょっと鈍臭くて見た目もパッとしないこの人にみんな見向きもしていなかった。
しかし、私は見逃さなかった。
馬主バッチが付いている…
ドラマであった奴だ
個人馬主なら多分年収は2千万近くはある筈だ
総合馬主や法人馬主だとしてもそれなりに地位のある人だろう
「相馬さんってご趣味は何ですか?」
「私は競馬なんですよ…でも賭けというより馬が好きでして…」
「へえ!素敵ですね!今度連れて行って下さい〜!」
ビンゴー!
それから付き合って行くうちに相当な資産家だったと分かった。
やはり光重なんかと手を切って正解だった。
相馬さんは今は奥さんとも死別していて独り身だ。
上手く取り入って後妻に入ろう。
どうせ長くは持たない…
その後悠々自適に過ごして子供の頃からの貧乏ともおさらばだ
その後ゆっくり良い男を見つければ良い。
但しイケメンに限る!な。
そう、長くは持たない…
「こんな私なんかと一緒になっても、この先介護でまだ若い豊香に苦労かかるんじゃないかな」
「そんな、私、相馬さんの人柄に惹かれたんです。愛してるんです。ずっとお側にいさせて下さい」
何とか年月をかけて上手く言いくるめて籍を入れさせた。
愛の言葉なんて息を吐く様に言える。
ウェディングドレスなんて今更着る気もないから披露宴形式のパーティをする予定だ。
相馬さんにとっては若いだろうがもう私も後がない。
20で出会った光重から手を切って18年経っていた。
相馬さんに狙いを定めてじっくり取り入った。
若作りをしているが今はもう30代も終わりに近い。
この先ずっと水商売をする気もない。
後は…
不慮の事故に遭ってもらう
「今日は愛馬の様子を見てくるよ」
「そう、私はお店で開いてくれるお別れ会で行けないけど…楽しんで来てね」
裏稼業の人間を雇って馬用の興奮剤を仕込ませている。
頃合いを見計らって水なり餌なりを相馬さんから与えさせて…
私の為に馬に蹴られて逝って貰う…
今日は私がお店を辞める最後の日だ。
お店の子やお客達がお別れ会をお店でしてくれる
この安っぽいドレスとも今日でおさらばだ
「豊香さん、寂しくなるけど…お幸せに!」
No.1の子が花束を渡して来た。
最近私の働くクラブにやって来てあっさりその座を奪われたけど私は逆転してやった。
顔は営業スマイルだが、内心地団駄を踏んでいる事だろう。
気分が良い
「有難う、ミア」
「おめでとう、豊香さん!幸せにね!」
「ええ、また相馬さんとも一緒にお店にも顔出すわね」
人生最高の日だった
「お客様、困ります!」
「どきなさい!」
外で何やら揉めている声がしていた
バンッ
ドアが開いて女が入って来た
「やっと見つけた!あんた!光重を誑かして更に別の男も咥え込んでるみたいね!」
「えっ!?誰!?」
「光重の妻よ!」
「えっ!?私はとっくに別れてますが…?」
「ふざけた事言わないで!私は家を追い出されたわ!アンタのせいで!」
「えっ!?何かの間違いです!もう会ってません!」
「まだそんな事を…!許さないから!極妻舐めんなよ!」
そう言って…
私はナイフで刺されていた…
ピッ…ピッ…ピッ…
ピーー…
「暫く意識不明だったけど…遂に…」
「相馬さんもあんな事故で亡くなって…豊香も結局後を追う様に…」
「相馬さんの愛馬も心臓発作で…何か薬が混ざってたらしくて暴れて…」
「あの世で2人仲良く馬のお世話をしてるんでしょうね…」
「あっ!カラス…ってあれ?」
「何?ミア」
「あのカラス…足が3本あった…」
「何馬鹿な事言ってんの。葬式で変なもの連れて来てないよね!?」
「やめてよ!私怖い話大嫌いなんだから」
「さあて、私達は浮いてるから早々に帰りましょ」
「だね」
ミアはその後豊香の働くクラブに転職したようですね。
ミアについては「探偵前物語」でチラッと出ています。
豊香はノラだったみたいですね
ノラは結局相手を見つけず旅立ったようです。
ノラについては「イヌネコ幻想曲」参照下さい




