里帰り
「私は今は大学で客員教授をしています、原田芳一郎と申します」
「はあ…」
「では、此方の人形とお家をお渡しします」
その後、佳奈と鈴木佳奈の家へ行った。
ネコ人形と青い屋根の大きなお家セットを鈴木佳奈のお母さんに渡した。
「この人形は…佳奈が大事にしてた…」
「そうです、元こまです。」
「一回お家諸共居なくなってネコ人形だけ戻って来て、また居なくなって…何故あなたが…?」
何か凄い不審な…犯罪者を見る様な目つきで見られてる…
「すみません、事情があって私達の家にやって来てました」
佳奈がすかさず説明をしてくれた
有難う佳奈…人外以外でも頼りになるな!
俺も援護射撃ですかさず名刺を渡した。
「大体事情は飲み込めました…しかし、いきなりやって来たあなた方の話を全て鵜呑みにすると言うのも…」
確かにそうだ。
まずあの人形と家は家族で家を留守にしてる間に消えてしまったらしい。
このお母さんはまだ俺を空き巣の詐欺師で子供の玩具を欲しがる変態だと疑いの目で見ているぞ…
「とりあえず…今年のお盆、8月13日の夕方に迎え火を焚いてください。それを目印にこの人形に佳奈さんが入って来ます。」
「はあ…」
「この人形には佳奈さんの思いも付いているので…お母さんに会いに来ます。16日にはまた私の元に帰ってきますが…」
「分かりました…やってみます」
「それでは宜しくお願いします」
「あの…今は…あなたの話だと…佳奈はあなたの中に居るの?」
「はい…でも、怖い目にあったので今は殆ど大人しく閉じこもっています…時間をかけて癒していきます」
「そう…有難う…あの…」
「はい?」
「あなたを…ぎゅっと抱きしめても良いかしら…」
「はい」
「佳奈…辛かったね…お盆に帰っておいで…待ってるからね」
「うん」
○○○○○○○○○○
「さあ、いよいよお盆よ!お父さん」
「おっおう!」
「では流れを説明するね。」
「ハイ」
「まず、お母さんの魂は梨香から抜けて胡瓜に乗って黄泉の国へ一回行きます。」
「胡瓜?」
「精霊馬ね」
「成る程」
「で、私の中の佳奈は迎え火を目印に鈴木家のネコ人形に入ります」
「ふむ」
「で、お母さんの魂はまた胡瓜に乗って私の中に入ります」
「ほう!」
「そしたらお父さんは私を通してお母さんと話が出来ます」
「おお!!」
「でも、お触りは禁止よ!私未成年だからね」
「娘にそんな事せんわ!」
「一応私の意識もちゃんとあるってお母さんの話だから…まあ、3人でチャットするみたいな感じかな」
「なんか佳奈は忙しそうだな」
「まあね。まあ、年一回のお楽しみだし頑張るわ」
「頼りにしてるよ!」
「因みにこまはそのまんま」
「ははは、まあ、抜ける必要も無いか」
「そうね。普段お母さんがずっと相手にしてあげてるしね」
「お盆!何か楽しみになってきたぞ!」
「戻り方も同じ手順でお母さんは茄子に乗って私から出て一回黄泉の国へ行くから」
「ふむ」
「まあ、茄子は牛だから乗っちゃえばゆっくり気楽な旅みたいだけど…いずれにしろ佳奈とお母さんの出入りのタイミングは気をつけないと。どちらか私の体から出る時にグズグズしてるとすんなり入れなくて彷徨っちゃうからね」
「承知しました!」
それから何とか上手く鈴木佳奈と目咲さんが入れ替わって佳奈の中に遂に目咲さんがやって来た。
「芳一郎さん、やっとお話できるわね」
「目咲さん?本当に!?」
「ええ、いつも近くに居たけど…お久しぶりね。相変わらず佳奈に叱られてるわね。ふふふ」
「ああ!目咲さん…何から話せば…でも大体の事は知ってるか…」
「そうね。相変わらず色々くっ付けてるけど今は多少マシなんじゃない?」
「確かに…前よりいたずらが減ってる気がする…」
「こまがね…何か美味しそうな奴は食べてるみたいよ?」
「ええっ!?」
「元が動物とか…不幸だった人外とか…なんでも人の不幸は蜜の味らしいわよ」
「…何か色んな意味で怖いぞこま…」
「だからこまは益獣なのよ。猫だからね」
「成る程…」
「ところで芳一郎さん」
「はい?」
「この間のプッピン先生のロリータパンクのお洋服の予約販売抽選会の申し込み忘れてるわよね?」
「あっ…」
「あれ程佳奈に念を押させたのに…」
「ゴメンなさい…」
「あーあ、また来年まで待たないとかなあ。仕方ないからミニムニュ先生のヘッドドレスで許してあげるわ」
「はい…以後気をつけます…」
久々に会えた目咲さんには梨香ちゃんのお洋服の事で叱られていた…
「それじゃあ、また来年」
「良いお年を…」
あっという間にお盆が終わってしまった…
「次は胡瓜にただ割り箸ブッ刺すだけじゃなくてカッコよくカスタムしてね!」
「?」
「周りの奴らはバイクの形やレクザスだったわ。何か悔しくなっちゃった」
「ほう」
「次はランボレギーニかフェラーレでお願いね」
「暴れ馬だね…」
「じゃあね!」
目咲さんは見た目によらずじゃじゃ馬らしい…
やはりあの口咲さんと血を分けた姉妹だな…
でも…
毎年こうやって、ずっとこの先も…
目咲さんと逢えると思うとモヤモヤしていた気持ちは少しだけ晴れていた
来年は叱られない様にしないと!
「佳奈も私に戻って来たよ」
「そう。お母さんに会えたのかな」
「うん。ずっと側にいたらしいよ。話は出来なくても…良かったって。前より元気になってる」
「そうか…良かったな」
「うん」




