えぴそーどいっち!
ストック分毎日更新します。
場所は日本、時は昼の三時を少し過ぎたあたり。
せっかく休みだと言うのにクソみたいな姉にギャルゲをやらされて17時間…。
おわかりいただけるだろうか?
17時間なんだ…。
17時間。
ぶっ続けで…眠りかけると鉄拳による物理的な睡眠解除…。
ちなみにこのような生活が既に三ヶ月続いてる……。
もう脳が焼け切れそうだよ。
乙女ゲーじゃなくてギャルゲな分、少しマシだけど…。
『喉が渇いた』と姉の命がくだり、ふらつく頭で階下に飲み物を取りに行く途中で、おれは見事に階段を踏み外した。
そして、現在進行形で滑り台を滑るが如く、長座スタイルで滑り落ちている。
とまることも出来ず、お尻でリズムを刻みながら滑り落ちていたら目の前が真っ白に染まり……。
なぜか尻の痛みが引いて後頭部に鈍い痛みが広がった。
頭は打ってないはずなのに、なぜだ?!
頭の痛みと同時に盛大に食器がわれるような音が響き女性特有の甲高い声が響く。
真っ白に染まった視界がゆっくり回復してくるとそこにファンタジックな舞踏会風景が広がる。
赤髪、青髪、白髪、銀髪、金髪……金髪ドリル?!
oh!まさにファンタジー!
どうやら俺は念願の異世界転移を果たせた……
「レオンハルト様!お怪我はございませぬかぁーーー!!」
みたまんま執事です!ってじーさんが人混みをかきわけ俺の方に向かってこようとするのを見ると………
どうやらレオンハルトとは俺のことらしい。
んー、これは転生の方だったか。
しっかし、尻餅つくような階段の落ち方で俺は死んだのか?
ないだろ?いや、ないない。赤ん坊じゃないんだから。それで死んだならあまりにも情けないって。
では、これいかに??
「レオンハルト!!ティアナはお前の玩具じゃないんだぞ!!ひどいことはするなっ!」
突然の怒声に驚きながら声の方を向くと、赤髪のイケメンが銀髪の美女を背中にかばっていた。
うん!めちゃくちゃ絵になるなぁ~。
って、絵になるなぁ〜。じゃなくて!!
え?!さっきまでやってた剣と魔法のファンタジーギャルゲの主人公とメインヒロインじゃないか!
あー、このパターンか。
わかるよ。わかる。
この手の『なろう』を嗜んできた書生にはわかるでござるよ。
書生の転生先はレオンハルト様ですね。モラハラ陰険粘着質なダメンズ王子様ですよねぇー。て、主人公君が俺のことレオンハルトって言ってたし。
つか、現在進行形のこのイベント、このシーン見たよ!見た見た!!
クソ攻略難易度高いくせにチョロインなティアナルートかハーレムルートに突入する前の確定イベント。
レオンハルトがティアナの腕をつかんで強引に引っ張ったのを主人公のアレスが間に入って、レオンハルトを突き飛ばすんだけど、これどうやったらこうなるんだ?
ゲームだと違和感ないけど現実だと違和感しかねーって。
って、問題そこじゃない!!
このイベント踏むと卒業間近にアレスと決闘すんのよ。このルートで攻略すると主人公のアレスがクソ強くなるから、レオンハルト戦は楽勝なんだよねー。
楽勝まずいて。!俺死んじゃうからっ!
レオンハルト死亡確定ルートのフラグじゃねーかよっ!!!!
まずいますまいまずいまずい!
どうする?どうする?どうするの?!
強くなって戦って勝つ?
いやいや無理無理無理無理。無駄でもいけるなこのワード。ってそうじゃなくて!!
レオンハルト様は戦いにまったく向いてない。それに、このイベントが起きてるって事は2年の秋だろ。
残り時間で奮起したくらいでアレスに勝てる気もしない。なにより俺自身が戦えないって!
ええーーーい!さて、どうする……。
「聞いているのか、レオンハルト!!」
あー、まて、うるさい!こちとら命かかてっんだぞ馬鹿者!
てか、レオンハルト君この国の王子で継承権第一位だぞ!
いくら主人公でもそれはだめだろが!!
ゲームだと違和感以下省略。
んー、そうなんだよなぁ。アレスはティアナをかけてレオンハルトに決闘を挑むから、ティアナの婚約者としてレオンハルトは戦う必要が出てくるんだけど。
このイベントを踏まずにアレスがレオンハルトに決闘を挑むとティアナが止めに入って、主人公フラれて終わるんだけど、このイベント踏むとティアナが止めに入らないんだよなぁ。
所謂ティアナEDのフラグなんだよねぇ、このイベント。
そして、フラグ建ち確定っと。
となると、レオンハルトは戦闘=死亡と……
ないわぁー。
詰んでんじゃねーかよ!!!
つか、転生?転移?憑依?乗っ取り?、なんだかわかんねーけどいきなり死亡フラグとかまじないわぁー。
そもそも、なんで俺はアイツと決闘しなきゃいかんのだ?
ティアナをかけて云々って理由だよな?
通常ルートなら国母となるティアナはレオンハルトを優先する。だから決闘に至らない。その為、恋愛値は上がりやすいくせに攻略できないんだけど……。
このイベントまでに全ステータスを一定以上に上げてこのシーンが見られれば確定でティアナエンドかハーレムエンドに行き着ける。だから、このシーンを踏むことで決闘フラグが立つってことなんだけど……。
これ、やっぱどうしょもなくね?
ん?て、まてまてまてまて?
決闘理由はティアナをかけてってなら、ティアナと……。
「レオンハルト!!」
うるせーなぁー、もう。わかったよ。お前のいいようにしてやるよ。俺の最推しティアナだってのによぉ。まったく!現実に死亡フラグなんてクソくらえなんだよっ!!
俺は立ち上がり服の汚れを払うとアレスを無視してティアナの前に立つ。
まぁー、間にアレスを挟んでるけど。
ムシムシ
「ティアナ、我は……」
ん?我?いや、俺だって
「我は……」
アレスがうざい……。
言い直す俺の言葉を怪訝な表情で見つめてくる、アレスがまじでウザい。
もうっ!我でもなんでもいいわっ!!
「ティアナ、我はそなたとの婚約を破棄する。」
俺の声がホール内に響き渡る。
ゆっくりと意味を理解した観衆がヒソヒソとざわめく。
あっけにとられた表情のティアナ。
やべぇ!ティアナはそんな表情すら美しい。
でもって、胸ぐらをつかんできたアレス君。
コイツ、マジ頭大丈夫か?
俺はこれでも継承権第一位の以下略
「お前!!それはどういうことかわかってんのか!!ティアナがどんな思いで……。たやすく婚約破棄だと!!ふざけるなっ!これほど尽くしているのにまだ、足りないって言うのか!!」
んー、NTRかまそうとしてる君が言っちゃいかんだろ。
君が。
しかも、足りないとかなに?なんで脚色してんだよ。俺そんなこと一言も言ってねーっての。あー、もう、アレスがいらんこと言うからティアナ様顔隠して肩震わせてんじゃん。
あーーーー、もうっ!!くそっ!!!!
泣かしてんじゃねーぞ!くそがっ!!!
「ティアナが足りぬだと?馬鹿はやすみやすみに言え!足りぬとすれば、それは我だ。我がたりぬのだ。今のままではティアナにそぐわぬ。」
俺の声が再度ホールに響き渡り、よりざわめきが増す。
馬鹿みたいに呆けた面を見せるアレスが滑稽で笑いそうになる。
「そんなことは、そんなことはございません!レオンハルト様に足りぬ事など、何も!わたくしが、私がいけないのです。私が足りぬばかりにレオンハルト様に迷惑ばかりおかけして……」
「ティアナ、なにを言っている。お前の行動、選択はいつも正しい。清く正しく美しいお前を置いて国母に相応しい者など我はしらぬ。そなたはもっと自分に自信をもて。」
「そんなことは……」
「王位継承第一位のこの我がそなたを認めているのだ。異論は認めぬ。それに引き換え、我はどうだ?今の我を見て王に相応しいと思う者はおるか?」
見渡してみるもティアナとアレス以外はそっと顔を背ける。
いやさあ、大概レオンハルトひどいけどその反応ないでしょーよ。まぁ。こうなることわかっててやってるからいいけどさぁ。
ゲームでも大概ひどかったけど、どんだけこの王子ひどいんだよ。
「ティアナ、これが答えよ。我はそちには足りぬ。だからこその婚約破棄だ。我は今より父と話してくる。案ずるな、そなたらに咎はいかんよ。」
「そんな……なぜ……」
ティアナのつぶやきが空しく響く。
「それでは、皆の者失礼する。」
ティアナとアレスに背を向け堂々とホールを出る。呼び止める声もない。けっこうスキャンダラスな事言ったと思うけどそれでいいのか?学園!
と思わなくもない。
そういえば、最初にいた執事のおじいちゃん。俺とティアナのとこまで野次馬に邪魔されて来れずに婚約破棄聞いて卒倒してたよ。ホールから出ていくときにかなーり気になったけど格好がつかないからほってきた……。大丈夫だよな?
たぶん、執事のブライってキャラだったと思うけど……。
んー、八割大丈夫だと思うけど少し心配だわ。
設定上けっこういいお年だったはずだし。
まぁ、気にしてても仕方ない。後の祭りだ。
それより、王城はどこで王様はどこにいるのか……。
ゲームでは選択して移動してたからわからないし、王子の記憶がない俺にリアルな道なんてわかんない。ていうか、これ一体何だよ?!
転生か?転移か???憑依か?乗っ取りか?
わかんないってことしかわかんねー。
なんか笑えてくるわ。
まっ、とりあえず父上(王様)に会いに行くかな。
「エルザ、出てこい。」
しーーーーーん
「エルザ!!」
しーーーーん
「はぁー、居るのはわかっている。さっさと姿を現せ。気付いてないとでも思ってるのか?」
空間が揺らぐとそこに長く美しい金髪の女性が姿を現し臣下の礼をとる。
攻略対象じゃないんだけどやたら人気の高いキャラなんだよなぁ。めっちゃ綺麗だし。
ちなみに彼女がティアナEDの真のラスボスです。実はティアナEDってラスボス戦4回あんのよ。
1戦目2戦目3戦目とどんどん弱体化していって最後には命を落とすレオンハルト様と、レオンハルトの弔い合戦とエルザが率いるその部下との4戦。
その4戦に勝つとティアナEDかハーレムEDにいきつけるってシナリオ。
ボロボロになりながらも引き下がらないレオンハルト様を見てダメンズキーな姉は超興奮してたけどね…。
レオンハルト様超純愛じゃん!とかのたまってたけど、俺には男の妄執にしか思えなかったよ。こういう奴ってストーカーなるよなぁとか思ってたけど、愛し方が独特だっただけでマジで愛してたのかもなぁと少し思うところもある。
まぁ、そんな訳でエルザさんとんでもなく有能で最強クラスのキャラなんだよねぇ。
なんでそんな人物がレオンハルトになんか付いてるのか…。しかも、どうにも傾倒してるっぽいセリフもあったのよなぁ。
正直謎だったわ。
「すみません。我が君。」
「よい。何を望むかはわかってるな?」
「はっ!王城まで護衛いたします。」
「うむ。頼む。準備を整えるまでソレイユとルナに頼みたいことがある。姿を現せ。」
エルザの表情が驚愕へと変わる。
「エルザ、呆けるな。」
「はっ!すみません。」
「許す。では、手配頼んだぞ。」
「ただちに」
エルザは答えると共にすっと姿をくらます。
それと同時に目の前の空間が揺らぎ褐色銀髪と白色金髪の二人が姿を現し臣下の礼をとった。
たしか、銀髪がソレイユで金髪がルナだったような……。
「ソレイユ、おまえにティアナの護衛を任せる。影ながら護ってやってくれ。」
「はっ!かしこまりました。」
銀髪褐色が答えたとこをみると名前はこれで確定だな。
「次にルナ、お前はアレスの護衛と監視だ。」
「はっ!かしこまりました。」
今度は白色金髪が答えた。これでルナ確定と。
「二人とも部下を使って構わん。適宜休みを取り、常にベストでいろ。」
表情を変えずに二人は俺を見つめるが、なにか言いたそうな空気がダダ漏れだって。
おおかた「休みを適宜とれ」とか言ったことに驚いたんだろうけどさ。レオンハルト様そんなこといわないもんね。部下は使い潰してなんぼの人だし。
まぁ、そんな二人の反応はムシムシ。
レオンハルトから俺に変わったんだから、今後これになれてください。
「二人のことを頼んだぞ。いけっ。」
「「はっ!!」」
打合せもナシに綺麗に揃った礼をするとか凄すぎだろ。てか、エルザ達やっぱいたかぁー。正直居るとは思ってたけど確信はなかったんよなぁ。つか、いなきゃはずい人すぎる。
一応、ファンブックにエルザ、ソレイユ、ルナが常に影からレオンハルトを護ってるって書いてあったからいけると思ったんだよねぇ。
「レオンハルト様!準備が整いました。こちらです。」
手配から戻ってくるとエルザはメイド服に着替えていた。
「レオンハルト様、我々の事はいつから気づいておられたのですか?」
「ん?それに答えて何になる?」
というか、答えられません。いつからとかわからんし、ファンブック便りです。
「いえ、すみません、何もありません。」
「そうか。」
「それでは、王城まで……」
「まぁ、まて。まだだ。」
エルザが不思議な表情でまだ?ですか?と呟いているがそれを無視する。
「シラガ!いるのだろ?」
その言葉にすぐに返事がきたのは驚いた。
「ほぉー、私まで気づいておられましたか。流石はレオンハルト様だ。」
またも空間が揺らぐとそこから褐色黒髪の男が現れる。エルザは目を見開きながら俺を凝視してるが……これはどういう感情だ?
「ふむ、素顔を晒したか。珍しいな。」
「ふふ、レオンハルト様、これが素顔だとは一言も申していませんよ。」
んー。なんかにちゃにちゃ気持ち悪いやつだなぁ。褐色黒髪キツネ目で意外と女子に人気があるってねーちゃん言ってたな。
まぁ、それはいいとして。
「そうか。それならば、それでよい。」
「ほぉー、これは面白い反応ですね。それで私へのご命令は?」
「ふざけるな。我にお前への命令権はないだろう。お前には父上に先触れを頼みたいだけだ。やってくれぬか?」
「そこまでおわかり頂いているのですか。ふーん、これはなかなか。重畳重畳。ふむ、ですとこのままでは少し勿体ないですねぇ。」
道化がかった仕草で手を顎にかけ悩んでますってポーズが妙に腹立つな。
「ふーむ……わかりました。その願をたまわりましょう。」
「すまぬな。頼むぞ。」
一体なにを考えていたのやら……。
「いえ、これも仕事ですから。それでは。」
綺麗に一礼するとそのまま姿を消す。
エルザ達三人が護衛なら、シラガは監視であり、採点者だ。レオンハルトを含め王子達には影ながら採点されていることが伝えられている。
その評価をもって国王が王位継承を決める。
ゲームシナリオが始まるまでレオンハルトが継承第一位に居たが学園生活で大きく失点する。
それまでの選民教育で育ち過ぎた貴族主義。元より持ち合わせたであろう加虐的な性格。異常に肥大化したプライド。ティアナに対しての異常な独占欲。
まぁ、ゲーム内のレオンハルトはよくこれで王位継承第一位になれたなと思うレベルでひどかった。
主人公がエンディングを迎えると国を出て出奔するため、その後がどうなるかわからないのだが、『こんなクソが王になったら即潰れるぞ!とか、ライター何考えてんだ!素人かよっ!とか、ファンタジーでも設定甘過ぎ!!』などとけんもほろろに……。
シナリオのゆるさ加減で掲示板が賑わっていたくらいだ。
まぁ、ダメンズスキーなうちの姉はそんなレオンハルトのダメさがぶっささってたみたいだけど。
普段ゲームをしない姉がCMでレオンハルトを見てキャラデザに一目惚れ、翌日買ってくると休みの度にぶっ倒れるまで無理矢理俺にやらせて、レオンハルトのダメンズ発覚でもうメロメロ。ストーリーを進める毎に見えてくるレオンハルトのダメンズっぷりに愛想を尽かすどころか、身悶えして喜んでる姉はマジでキモかった。てか、うちの姉は大丈夫か?色々心配すぎるぞ。
とと、それはさておき。シラガは採点者であり護衛ではない。エルザ達のように俺に命令権があるわけがない。王の直轄部隊の暗部。それがシラガだ。
「レオンハルト様、シラガのことも気づかれていたのですね。」
「ああ。父上から評価を受けていることは聞いていたからな。」
「レオンハルト様にはシラガがついてるとお聞きになられていたのですか?」
「はは、そんなわけないだろう。採点者が誰かなど聞いておらぬよ。」
ん?やべっ!じゃ、なんでシラガってわかったかってなるよな?!
「なんとなくだ。気配といえばいいか……。言葉で説明するには難しすぎる。これでよしとしろ」
「そんな、気配なんて……すご……すぎる……。」
あー、何その反応?!やっべ。『俺なんかやっちゃいました?』しちゃいました!!
てか、設定知ってただけだから!気配とかわかんねーからなっ!!!
「あ、ああ。エルザ、先を急ぐぞ。」
「はっ!レオンハルト様!王城まで命にかけて動向させていただきます!!」
あえ?!いや何その熱に浮かされたような目!!てか、お前もチョロインか?!ん?いや、攻略対象じゃねーか。なら、なんだ?!チョロの助か?!チョロ子さんか?!
よくわからんが命をかけた動向ってなに?!護衛だから常に命かけてくれてるから間違いではないのか?
いやそうじゃなくて!!
言葉にされるとなんか、重い!!
はっ!オモインだったのか!!
「レオンハルト様なにをお考えで?」
女の人ってこういうときすっごく敏感よねぇー。勘の良い子は嫌いだよ!
って、はい。なんかすみませんでした。
読んでくれてありがとう!