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第5話 喪失
パリの夜は静寂に包まれていた。腐敗した街の地下壕で、怪物と化したヒトラーは苦悶の表情を浮かべていた。傍らにいるエヴァ・ブラウンは、恐怖と悲しみを隠せず、か細い声で彼に「やめて」と囁く。しかし彼の耳には届かなかった。
やがて彼女自身の身体にも黒い菌糸が忍び寄り、変貌の恐怖に怯えながらも、エヴァは決意した。彼が深い眠りに落ちた夜、彼女は静かに銃を取り出し、その手は震えながらも覚悟を秘めていた。
引き金を引く音が夜の静けさを断ち切り、ヒトラーが目を覚ますと、隣には冷たくなったエヴァの姿があった。彼女の血は菌糸に吸い込まれて跡形もなく消えていく。
絶望に打ちひしがれた彼の心に、契約の影が囁いた。「弱き者は不要だ」と。怒りが爆発し、菌糸は暴走して肉体を蝕みながらも、その影を引き裂こうとする。
しかし、彼は深い孤独の底に沈み、帝国の闇はより深く染み込んでいった。




