09 炎狩人印象
「あの、炎狩人さんって皆さんにとって、どんな存在なんですか?」
旅館の宿主さんに尋ねると、当たり前とでも言うように、
「そりゃ、ヒーローでしょうよ。どこでも飛び込んでって、世界を救ってくれているんだから」
ヒーローか。
ヒーローなんて、架空の存在で、綺麗事って感じで嫌気がさす言葉だった。
だけど、確かにそうだなって思う。
確かに、あの燈の玉を見つけてやるっていう、野望に満ちた眼差しはヒーローそのものだったように思う。
街で会う人々に訊いても、同じような返答。
勇者。英雄。憧れ。
いいな。
私もそんな風になれたらな。そう、純粋に思ってしまった。
だけど、現実ってのは甘くないんだろうな。
相当、厳しい訓練をして、それでもなれるかどうかみたいな、多分、そんな厳しい世界だ。
それだから、街の人達はこんなにも尊敬していて、守ってくれるものだと信じている。
こんなことを考えずに、挑める性格だったらな。
なんて、無理なことを思う。
不安と怖さ。そ んなものが淡く心に入り交ざった。
「おい。飯にしようぜ」
迅斗が屋台を指さした。
「そうだな」
端夜もそれに続いて、そのお店の列に並んだ。
今日は炎狩人の仕事はお休み。
一日かけても、燈の玉がある場所に着かないから、やむを得ず、というわけだ。
そういう日も、一か月に、二、三度ほどあるらしい。
「いらっしゃいませ。お、炎狩人さんですか」
「ああ。はい」
「お、じゃあ。一品おまけしますよ」
「あざーす」
会話をしながらさらに乗せられた料理を食べていく。
そそくさと迅斗が食べ終わると、お店を見て、走って行った。
「俺、ちょっと買っていきたいものがあるから」
走り去る迅斗を唖然と見つめる。
味わいながら、ゆっくりと食べている端夜に単刀直入に尋ねた。
「炎狩人って、どうやってなったんですか?」
「炎狩人の学校に行くと、なれる」
「それって、どういう学校なんですか?」
「入学試験があるが、何歳からだって入れる。七十歳くらいの高齢の人もいたし、五歳くらいの子供もいた。入学してから三年後の卒業時の試験に合格すれば、どんな人でも炎狩人になれる」
やってみたい。
そうは思っても、声を出す勇気は出ない。
中途半端な自分が、常々嫌になる。
「端夜は、どうして炎狩人になったんですか?」
空を見上げて、息を一つ零した。
「美しい世界を守りたかったから。それと、姉の無念を果たすため」
そう言って、背中を翻した。
端夜は、まるで影に包まれているかのような空気感を纏っていた。




