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『特権がわかる権利』

 膨大な疲労感によって地面に座り込んだ俺の視界に文字が浮かび上がる。


 『獲得 魔力を吸収する権利


  生命体に傷をつけた時にその傷の大きさに応じた量の魔力を奪い、自分の魔力をその分回復することができる』


 「特権が手に入ったってことは、成長……つまりアイツを倒せたんだな……。それにしても次の特権は魔力を吸収か」


 魔力って確か、この世界で生きている生命には必ずあるエネルギーみたいなものだったか。それがどれだけあるかは個人差なんだっけ。

 あまり意識したことはないが、魔法を使用する時は必ず一定量の魔力を消費しているらしい。だから魔法を使いすぎると身体の魔力が足りなくなって魔法が使えなくなる。だから減った魔力は睡眠をとったりして身体を休ませることで回復させなければならないんだっけか。


 「うーん……魔力が足りなくなったことはないからな。まだあまり使うことのなさそうな特権かな」


 そんなふうに、新たに手に入れた特権について考えていると、俺の耳に草を掻き分けこちらに歩いてくる音がした。


 !? モンスターか!? しかも単体にしては音が多すぎる。今モンスターの群れに襲われたらまずいぞ! さっきの戦いでもう足がクタクタだ……!


 しかし俺の警戒や不安は杞憂に終わった。なぜならその群れはモンスターではなく、俺の住む村の人々だったからだ。


 「皆さん! 来てくれたんですね」


 俺がそう声をかけるも、誰もそれに答える人がいない。どころかだんだんみんなの顔が青くなっていく。

 いったいどうしたのと俺が聞くまでもなく、人々のうちの1人が俺の背後を指差したことで、俺もその理由を理解した。


 「テル……お前、後ろのは一体なんなんだ……?」


 そう俺に声をかけてきたのは俺の父、イーサン・プレミアである。


 「あぁ……これは……俺が倒したんだよ。父さん」


 「そうか。お前の特権は今日だったもんな」


 父さんの表情が驚愕からなるほどなといった感じに変わっていく。納得してくれたようだ。

 しかし父さん以外はこの状況を理解できてないらしい。周囲の人々は「いくら特権を得たとてこんなモンスターを、得た初日で倒せるわけがないだろう!」といったふうに疑いの言葉を上げ始める。

 

 まあ仕方がないだろう。俺もあちら側なら父と違って俺の言葉を信じることはできない気がする。

 

 そんなふうに皆からの疑問の声が大きくなってきたころに、白い髪の若い少年が手を挙げて俺の元へと歩いてきた。


 「僕の特権の『特権がわかる権利』であなたの実力を見れば、あなたがこのモンスターを倒せるかどうかがわかると思います。この特権の発動にはすこし厄介な条件を満たさなければならないため、あなたの協力が必要ですが……どうでしょうか?」


 「その条件というのは一体?」


 「僕の手であなたの肌を触れなければならないのです。肌に触れられるのは嫌がる人もいるので……あなたは大丈夫でしょうか?」


 「別に問題ないです! むしろそれだけならぜひお願いしたいです!」


 彼に悪意はないだろうし、俺も倒したことを信じられないのは悔しいからな。肌に触れられるだけで周囲に信じてもらえる可能性があるのならささっとやっていただきたい。


 「それでは……」


 そう言って彼は俺の首に触れる。すると彼の手がピカッと光った。直後に彼の顔がみるみるうちに青くなっていく。そして彼はそのままの表情で大きく声を上げた。


 「あ、あなたの特権はおかしすぎますっ!」


 その声を聞いた人々は、「何がおかしいんだ?」や「結局彼はこいつを倒せるのか?」と、疑問を彼に聞き始める。


 「あなたの言葉で俺の特権について皆に説明してもらえないでしょうか?」


 そう俺が言うと、彼はこくりと頷いて、すうっと息を吸い込んで皆に話し始める。


 「まず、彼……テルさんがこのモンスターを1人で倒すことができるのか、ですが……できます! 彼の特権であれば、倒すことは容易とはいかずとも可能でしょう!」


 その言葉を聞いた人々の疑問の声は、俺が倒すことができるのかというものから、俺の特権は一体どんなものであるのかというものへと変わっていく。


 「そしてテルさんの特権がどんなものかですが、条件を満たすことで新たに特権を得ることができるというものなんです!」


 人々からは俺が最初にこの特権を得た時と同じようなリアクションがあがる。「そんなズルのような特権があり得るのか」みたいな。

 そんな人々に、白髪の彼は続けて話し始める。


 「その特権ですでに複数の特権をテルさんは得ており、それを行使すればこいつを倒すことも不可能ではないでしょう! ……僕から言えることは以上です」


 そうして人々の集団の中に彼は戻って行った。

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