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最大威力

 「はぁ……はぁ……よしっ……! とりあえずこのまま一旦距離をとろう……!」


 そう思い、後方に走り出した俺の前に文字が浮かび上がり、それは動き続ける俺と一定の距離を保ちながら追ってくる。

  

 『獲得 受け流す権利 手の甲を対象に対して布を振るように動かすことで対象が近くにいる時、対象を手の甲を動かした方向に流すことができる。』


 「この文字って追いかけてくるのかよっ! それはそれとして、この特権はなかなか便利な特権だな」

  

 手の甲を布を振るようにか。それだけで対象を受け流すことができる。


 「おっと……! ちょうどこれを試すことができそうなことをしてきそうじゃないか……!」


 そうして俺が視線を向けた先のモンスターは、今まで見てきた中で俺に直接ダメージを与えることができて離れた俺にも当てられる攻撃。そう、あのビームの構えをしていた。


 「俺はそいつに対しては今まで避けることしかできなかったが、この特権があれば……! ハハッ! それに対する新しい選択肢が生まれたぞ……!」


 俺はドンと構え、ヤツの口の中を凝視する。

 

 さっきまでは回避で手一杯だったから気づかなかったが、あの紫色の光。あれは放出されるまでドンドン色が濃くなって、さらに発光量が大きくなるみたいだ。そして今はもうすでに色濃く、そして眩い光を発している。それはつまり、もうすぐあれは放出される。


 それを認識した俺は、手の甲をヤツに向けた右手を自分の胸の少しに出す。


 そして、ヤツの口から大きなビームが放出される。


 そして俺は右手を右上に向かって動かした。


 「どっかに流れちまえッ!」


 しかしそのビームは、方向を変えることはなかった。つまり俺の受け流しは、何かしら特権を発動する条件を満たさずに失敗したのだ。


 「ウソだろッ!? 失敗したのか!?」


 俺は、受け流すのを失敗したせいでドンドン迫り来るそのビームからなんとか身体を守ろうと、寸前で左手を自身の前に出す。

 直後、俺は「へっ!?」という素っ頓狂な声を上げる。


 「ええっ!? 成功した!? で、でも明らかに失敗したみたいな……かん……じに……いや! そうか! 今、がむしゃらに前に出した左手が……!」


 そうして俺は左手を見つめると、それは確かに俺には手のひらを向けていた。つまり、ビームに対しては手の甲を向けていたのだ。


 「手の甲を向けながら左手を動かしたから、偶然タイミングがあって左手がビームを受け流したのか!」


 それにしても、これで受け流せていなかったら俺は一体どうなっていたんだろうか。それを考えるとどんどん不安になる。


 「ま、まあタイミングは大体わかったし、次からは全部しっかりと受け流せば問題ないだろ」


 そうしていると、ドシドシと大きな音を立てながらモンスターは俺に近づいてくる。

 そのままモンスターは俺に大きな拳で、上から殴りかかってくる。


 「今度は近接攻撃か! ならさっきと同じように……」


 そうして俺は右手を手の甲を向けながら右側に動かす。するとモンスターの全身がギュルリンと、俺から見て右向きに流される。

 俺はそんなモンスターを全力で蹴り飛ばす。それを受けたモンスターは、呻き声を上げながら膝を地につける。


 「よし! 効いてる!」


 明らかにダメージを受けているモンスターだが、すぐに立ち上がって再度殴りかかってくる。


 俺はその攻撃を回避して、またモンスターを蹴りつける。

 しかしモンスターはダメージを受けているが、先ほどのようにはならずに大きな両脚で踏ん張り、さらに攻撃を仕掛けてくる。


 「あれ? さっきと同じように蹴ったはずだけどな……。さっきよりも効いていない?」


 そんなことをいいながら俺は攻撃を回避し、またもモンスターを蹴り飛ばす。しかし今度はほとんどダメージを負った様子も見せずに攻撃を仕掛けてきた。


 「……!? どんどん攻撃までの間隔が短くなっている!? なんだか俺の攻撃に合わせてドンドンあいつの身体が硬くなってきている気がするぞ……」


 それ以降、俺の蹴りでモンスターが怯むことは無くなった。故にモンスターの攻撃がドンドン加速して行くこととなり、俺は回避で体力を消耗させ続けられることとなる。


 どうにかしてこの状況を打開しないと! 


 「もっと高い威力で攻撃できれば……あるいはあいつの身体を柔らかくできれば……いや、両方やってやろう!」


 まずヤツの皮膚を柔らかくする。そのためには火で炙ってやればいい。効果がでるかは分からないが……

 

 「炎よ。我が呼び掛けに答え、大きく、強く燃えろ! ファイアー!」


 俺は攻撃を回避しながらヤツの腹に、特権の力で5倍の威力となったファイアーをぶつける。


 「よし! もう一回くらい炙ってやる! 炎よ。我が呼び掛けに答え、大きく、強く燃えろ! ファイアー!」


 俺はもう一発ファイアーを先ほどと同じ位置に撃ち込む。するとモンスターは少し動きを止める。おそらく怯んだのだろう。


 「とりあえずこれで十分あいつの肉は軟化しただろう! あとは最大威力でぶん殴るだけ。とはいえ俺が出せる最大威力の攻撃は、多分ただ蹴るだけだ。これの威力をなるべく高めよう……」


 威力を上げると言ったら助走をつけることだろう。


 そうして俺は右足で地面を全力で後ろに蹴る。そうすることで、俺の身体は高い速度で地面を滑り始めた。


 そのまま俺は身体を横に向け、先ほど使用した右足を自分の側に引き寄せる。


 「あとは怯んでるあいつに助走をつけた威力20倍の横蹴りを喰らわせてやるだけだッ!」


 そうして俺は滑りながらドンドンモンスターに近づいて、もうあと30cm程度滑れば蹴りが届くところまで近づいた。そして俺はタイミングを見計らって全力で蹴りをはなつのだった。

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