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超巨大なモンスター

 「クッソ……! 逃げるぞ!」


 俺は後ろに振り向いてキュアナの手を引いて走り出す。


 「う、うん……きゃあッ!?」


 俺とキュアナは突然、轟音と共に起こった強烈な振動に体勢を大きく崩す。


 「あいつッ!? 地面を叩いただけで地震を!?」


 「まって! テル! もう一回くるよ!」


 「クソッ! 嘘だろ!?」


 嘘であると思いたかったその言葉も、後ろを見ると、両手を組んで振り上げながら地面に視線を向ける巨大モンスターが見えてしまったことで嘘ではないと思い知らされる。


 どうにか備えてないと、下手したらずっこけちまうぞ!? クッソォ! 備え方が思い浮かばない!


 「キュアナッ! どうにかして耐えろッ!」


 「どうにかって一体どうやって!?」


 「知るかよそんなこと! それより来るぞッ!」


 そうしてヤツの巨大な腕が振り下ろされる。


 ドォンッ! とさっきよりも大きな音と共に、俺たちの元へ襲い来る強烈な振動に、すでに体勢を崩していた俺たちは耐えきれず大きくこけてしまう。


 「グゥッ!?」


 「キャアァ!?」


 チクショウッ! このくらいならまだ立つことならできるけど、それでアイツから逃げ切れるのか!?

 

 そう俺が考えていると、すぐ隣から透き通るような黄色の斬撃が飛び、巨大なモンスターに向かってゆく。


 「はあっ!? ちょっ! お前! なんで攻撃を!」

 

 俺は隣で座り込みながら特権を行使するキュアナに向かって疑問を投げかける。


 「えっとね……今のでちょっと脚、動かなくなっちゃって……もう逃げられないの……」


 震える声でそう言う彼女の脚を見ると、血を流していた。おそらく彼女のすぐ足元にある石の突起のようなもの。あれに引っ掛かってしまったのだろう。


 「だったら! 俺が外まで運んでやる! だからそんな顔をするなっ!」


 俺は恐怖からか、今にも泣きそうな顔をしているキュアナをヒョイと抱え上げ、再度走り始める。


 「ご、ごめんっ! 私、脚引っ張っちゃって! 無理だと思ったら置いて行って!」


 「大丈夫だ! 俺の今の筋力は4倍になってるんだぞ!? お前一人抱え上げあげるくらい簡単だ!」


 「ごめん! ありがとう……!」


 とはいえホントあの地震は一体どうしようか……。もう1発やられたら今度こそ俺も終わりだぞ!?

今ある二つの特権でどうにかなるのか!? いや、今使える特権は三つか! キュアナの特権も使えばなんとかなるのかもしれない! 


 「キュアナ! アイツがまたさっきのをやってきそうなときに、お前の特権を使って動きを止めてくれ! 目とか! とにかく痛そうなところにあの斬撃を打ち込んでやれ!」


 「わ、わかった! そうする!」


 再度逃げ始め、そしてすぐにヤツは先ほどのように両腕を組んで振りかぶる。


 「今だ! キュアナ! 頼む!」


 「は、はぁッ!!」


 キュアナの前から飛び出した斬撃は斜め上に向かって進む。そしてその斬撃はヤツの目に突き刺さる。


 「ナイスッ!!」


 目を痛めたヤツは、脚を止める。


 「これなら逃げ切れるッ!」


 もう、出口はすぐだ! 外の光が見えてきた! 


 「これで、脱出! だ!」


 そうして俺はキュアナを抱えながら森の外の大地に飛び出した。


 すると俺の視界に文字が映る。


 『獲得 脚力を10倍に高める権利』


 「おおっ! 特権が! ということは今ので成長をしたってことか!」


 「おお。特権、また手に入れたの? 良かったじゃん。それと、ありがとう」


 キュアナは笑顔で俺に対して感謝を告げる。


 「どういたしまして。とりあえず一旦降ろすぞ」


 「うん。わかった」


 そうして俺は、一度キュアナをゆっくりと地面に降ろす。それとほぼ同時に、大きな足音が聞こえてきた。


 「おいおい……キュアナ、聞こえてるか?」


 「うん……まさかまだ追ってきてるのかな……。アイツ」


 俺たちの耳に届いた足音は、ついさっきまで聞こえていた、紛れもないあの巨大なモンスターのものだった。


 「くっそ。下手したら森から出てきてここまで来るぞ! アイツ!」


 「そんな……村にすらあんなの倒せる人なんていたか分からないのに……。王都の騎士に助けを求めたら倒してもらえるだろうけど、今から王都に助けを求めても多分間に合わないよ……!」


 「仕方ない……。ちょっと、俺が倒してくるよ、アイツ」


 「はぁッ!? 何言ってるの!? 今のあなたに勝てるわけがないよ!」


 そう。今の俺じゃあ多分勝てっこないだろう。だが、さっき俺は特権を手に入れた。これを手に入れたワケがアイツから逃げて森の外まで出てきた。とかだったら? もしそうだったら俺はアイツとの戦いでさらに特権を手に入れるのかもしれない。


 「まあ、そうだな。だけど、ちょっと足止めするくらいならできると思うんだ。その間に誰かが援護に来てからでもしたら倒せるかもだしな」


 「そ、それでもっ! 誰も援護に来なかったら終わりじゃん! テルが犠牲になるだなんて……ダメだよ!」


 「そうだな。正直それは建前みたいな感じだ」


 「じゃあなんでっ!」


 「本当の理由は……ただ、特別になりたい。アイツを倒して、あんなモンスターを倒せるようなすごい存在になりたい。それだけだ」


 俺は、前世ではどれにおいても平凡で、自分だけのすごい点だなんてなかった。それだけに、特別になりたい。今世では色々やって、特別になりたいのだ。


 「それじゃあ、行ってくる。お前はそこら辺で安静にしておけ。俺がやられたとしても、その頃には逃げられるくらいには回復してると思うぞ。それじゃあな」


 「ちょっ! ちょっと待ってよ!」


 俺はそんなキュアナの静止の声を無視し、『特別になりたい』という欲望に駆られて再び森の中へと入ってゆくのだった。


 

 


 

 


 

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