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モンスター

 そして俺たちは、その森の前までやって来ていた。

 

 「ここか……。遠くから見ることはあったが、すぐ手前まで来たのは初めてだな」


 俺の目に映っている森は一見普通の森なのに、妙に不気味で中からは変な鳴き声まで聞こえてくる。


 「ここにモンスターが……!」


 「興奮してるみたいだが、入ったらすぐにここから出るぞ? 危険だからな」


 「えー……まあそういう話だったからね。仕方ないか……。それじゃあ早く入ろう!」

 

 そうして俺は彼女と共にその森へと入っていく。


 「この森、中はこんな感じだったのか……」


 森の外からは普通の森に見えていたが、中はたくさんの木がへし折れていたり、粉々となった岩のような物もある。


 こういうのは中にいるらしいモンスターの仕業なのだろうか。


 「それで? 特権は新しく手に入った?」


 「そういえば手に入ってないな。この程度じゃ成長じゃないのかな」


 でも料理が成長となって、危険区域に立ち入ることが成長じゃないだなんてな。


 「きっとまだ森に入ってないってことなんだよ! だからもうちょっと奥に行こう!」


 「いや、さすがにこれ以上入るとホントにモンスターに出会うだろうしダメだろ」


 「うーん……それもそっかあ……」


 キュアナは一瞬考えるような動作をした後、俺に「それじゃ、帰ろっか」と言う。


 俺はその言葉に、「分かった」と答え、もと来た方向に振り向く。すると、俺の視界に二足歩行で緑色の生物が映る。しかも3匹。


 「ねえ、あれってその……もしかしなくてもそれだよね……」


 キュアナは少しひきつったような表情で、そして後方に下がりながら俺に、目の前の存在について確認する。


 「ああ……。まあ、良かったな。特権、試せるぞ」


 俺もまた、後方に下がりながらキュアナに、そう言う。


 「そ、そうだ! 私には特権があるんだ! み、みてなよ! あんなモンスター、一撃なんだから!」


 そう。キュアナの言葉の通り、俺たちの背後に居た生物は、モンスタであった。

 

 緑色のカラダに二足歩行……そして俺たち二人ともが背後にいたことに気づかなかった……。この特性はたしかゴブリンだったな。家にある図鑑的なやつにそんなモンスターだと書いてあったはずだ。

 ゴブリンであれば木をも1撃で切り倒すキュアナの特権であれば倒すことも可能だろう。

 ただ、俺も筋力を4倍まで上げられるならゴブリンくらいなら倒せるんじゃないか? しかもモンスターの討伐ならさすがに成長に値するだろう。


 「キュアナ、右の2匹はお前が倒してくれ。俺は自分の成長のために左の1体倒してみる」


 「へえ。分かった。確かにそれは成長になるだろうね」


 「ああ。それじゃ、お互い健闘を祈る」


 「分かった! それじゃあ!」


 そうして俺は特権を使用し、自身の筋力を4倍まで増幅させ、ジリジリとこちらに向かって来ていたゴブリンのうち、1匹の背後に走って回り込み、全力で飛びかかる。


 「はあッ!」


 そんな掛け声と共に俺は全力でゴブリンを殴り飛ばす。


 「グキャアッ!?」


 いくら15のガキの筋力とはいえ、4倍なら相当の威力。それをモロに受けたゴブリンは大きく後方に吹き飛ばされる。

 俺はそんなゴブリンの元へ、全力で走って向かう。


 「ははッ! 脚もだいぶ速くなってる! もうあんな遠くのゴブリンのところまで辿り着いたぞッ!」


 吹き飛ばされ、起きあがろうとするゴブリンに俺は馬乗りになって顔面を殴り続ける。

 

 1、2、3……10。殴り続けて大体10発目。ゴブリンは白目を剥いて動かなくなっていた。そんなゴブリンを見下ろしながら、俺は立ち上がる。


 「ハァ、ハァ……やったか? まあ念の為に死体を燃やしておくか。炎よ。我が呼び掛けに答え、大きく、強く燃えろ! ファイアー!」


 そうして魔法を発動し、俺はゴブリンを燃やし尽くす。すると俺の前に、新たな特権を手に入れたとのマジが浮かび上がる。


 『獲得 氷塊を作り出す権利

     

     自由な形の氷塊を作り出せる』


 自由な形で氷塊を? これは色々試してみたい特権だな。


 俺が色々考えていると、キュアナが俺の肩をポンと叩き、声をかけてきた。


 「そっちも倒したみたいだね! それで新しい特権は手に入った?」


 「あ、うん。なんか氷塊を作り出す権利ってのが手に入った」


 「氷塊を? あとでここから無事に出られたら試してみてよ」


 「無事に? すぐ出口からでるだけなのに?」


 そう口にしながら俺は後ろを振り向く。すると、最初はすぐ後ろに見えていた光が、見えなくなっていた。


 「なッ……! どうしてこんな奥まで!」


 「えっと……戦ってたテルを追いかけてきたらここまで……」


 まさか……! あの殴り飛ばしたのに追いついた時にここまできてたのか!?


 「ごめん……多分俺のせいでこんなとこまで……」


 「いや! 別にいいよ! それより早くここから出よう?」


 「分かった……それじゃ行こう。……ッ!」


 俺が振り向いた瞬間、すぐ近くから強烈な振動が襲ってきた。


 「きゃあッ! 何!? 今の揺れ!?」


 キュアナが、大きく驚きながら俺に問いかける。


 「分からないけど、多分近くにこれを起こしたモンスターか何かがいるんだと思う……!」


 こんな現象、15年間この世界で生きてきて自然に起こったことはない。ということは何かが起こしたモノと考えるのが自然。そしてここはモンスターの巣穴と言っても過言じゃない。だからこれは、これを起こせるようなモンスターが起こした現象ッ!


 「そんなのが近くにいるんだったら早く逃げなきゃっ! 私たち多分そんなのには勝てっこないよ!」


 キュアナがアワアワと慌てながらそう言う。


 「そうだろうけど、もうすぐそこまで来てるぞ……! これを起こしてるヤバいモンスター……!」


 そう言った俺と、キュアナの目に映ったのは俺たちの何倍も大きな、超巨大なモンスターであった。

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