試験終了まであと少し
「くっ……特権がダメなら魔法だ! 炎よ。我が呼び掛けに答え、大きく、強く——」
「させないよ! やあ!」
男は自身の特権が通じないことを知り、瞬時に魔法、『ファイアー』の詠唱を始めた。
が、魔法は詠唱が必要なため、瞬時に放つことができる特権と比べると発動までにかなり時間がかかる。
その隙をついてキュアナは両手から二つの斬撃を放った。
「なっ、く、ぐわあ゛あっ……!!」
男はキュアナから放たれたその斬撃によって、詠唱途中にやられるのだった。
「ふう……殺しちゃダメだから切れ味は結構悪くして放ったけど、それでも気絶させるくらいはできて良かった」
キュアナの特権によって放たれる斬撃は、威力、速度、サイズなどなど様々な部分を彼女の意思でコントロールできる。
もちろん上限はあるものの、下限はないため上限の範囲内でならかなり自由度が高い。だが上限に近づけば近づくほど同時に放てる斬撃の数が減ったり、他の要素の上限が低くなったりするため、わりと面倒でもあったりする。
今回は威力、サイズ、速度などを威力は高め、サイズと速度は普通程度にし、切れ味を極限まで落とした斬撃だった。
で、その斬撃にやられて目を閉じて地面に倒れ込んでいる男は一体宝石は何個持っているのだろう。
それを知るためキュアナは男の持ち物を漁り始めた。
現在のキュアナの持つ宝石の数は七個。
これはかなり多い方で、それは彼女自身も何人かの受験者、もといライバルを倒してきているため知っている。今、大体のライバルの宝石の所持数はせいぜい2、3個程度だろう。
けど彼女はまだ不安らしい。
ひとまず宝石の数が二桁になるまでは集め続けるつもりのようだ。
「あった、宝石。これと、あとどれだけ持っているのかな」
キュアナは男の懐から宝石を発見する。
だが複数個ある可能性もあるため、手を止めずに漁り続けると、もう一つ宝石が見つかった。
「うん、もうなさそうかな。この人の持っていた数は二個みたい」
宝石がもうなさそうだと思った彼女は手を止め、立ち上がってそこから離れるのだった。
ちなみに、キュアナはこれから無事に探索をして宝石を発見し、目標の二桁を達成したりする。
――――――
「こっちの、今世の世界にしかない、前世にはなかったお菓子も結構あるが、やっぱり前世の方にもあるせんべいとかのお菓子の方がなんとなく美味しく感じるな。こっちの世界にもあって良かったぜ。菓子に限らず、わりと前世にあったものが今世にあるのは嬉しいよな。何年こっちで過ごそうと、定期的にこう思っちまう」
俺はバリバリとせんべいを噛み砕いていた。
ついでにお茶も飲んでいる。
これらは全て俺がこの空間でくつろげるように持ち込んでおいたものだ。
茶菓子の他には敷き布団やクッションとかがある。
一度確かめたことで気がついたが、おそらくこの空間は果てがない。
つまり、無限に広がる空間というわけで物置にもなったりして便利だ。
「にしても、こうくつろいでいると今が試験中って言うのを忘れそうになるな。今って何時だろう」
俺はこの空間に放り込んでいた時計で時間を確認する。
その時計の針が指す数字を見て俺は気がつく。
「あと少しでこの試験も終わりじゃないか。ぼちぼちこの空間から出るとしよう。っと、宝石って多分試験が終わる時にはちゃんと手に持っておかないといけないよな。この空間に入れてちゃあ持っているとカウントされない気がする」
この宝石についての説明を思い返し、そう考えた俺は山積みの宝石を持ち上げる。
「よおし。いっぺん持ち上げちまえば……特権のおかげで、たとえ一本指でそれを支えようと落とすことは無くなるんだよな」
俺は山積みの宝石のうち、一つを左手の人差し指の上に乗せる。すると他の宝石もそれに吸い付くように、物理法則を無視して地面に落ちなくなった。
これは俺の『落とし物をしなくなる権利』の力で、一度俺の持ち物としてしまえば落とさなくなるのだ。
さすがに完全に支えをなくすと落ちてしまうが。
そうなると、今指で支えている一つ以外はどうなんだという話になるが、それは大丈夫らしい。
どうやら山積みの宝石が、全てまとめて一つの持ち物と認識されているようだ。まるで米粒の集まりをご飯という一つの食べ物と認識するかのように。
そうして準備を完了した俺はその空間から外に出るのだ。




