見逃してくれ
「さて、残るはアンタたち二人みたいだが……なぜ今の今まで待機していた? 俺を狙うならさっきの二人と一緒に戦えばよかっただろうに」
俺は防御に長けた二人を倒したのち、強者と俺が思った二人に声をかける。
「俺たちはお前とは戦わないことにするよ」
「? それはあれか? 戦わずともわかるってやつか? 勝敗が」
「ああ、そういうことだ」
二人のうち、左の剣を所持する男が俺とそう言葉を交わす。
(こいつの特権は確か、『剣で受けた攻撃を掻き消せる権利』とかだったか。んな特権があれば十分俺ともやりあえそうな気もするが……まあいい。こいつらがそう望むなら戦いを避けつつ俺が得をする感じに話を進めるか)
俺は奴らの考えがどのようなものかと考えながらも、どう話していくかの方針を定める。
「なるほどな。んで、そうなるとお前らは俺に降参する、つまり見逃してほしいってことだよな」
「……そういうことになるな」
俺のやや強気な言葉にも男は肯定する。
「見逃してもらうにはさ、何か俺がお前らを見逃す気になるものを俺に渡してくれないか?」
「なるほど……取引ってわけか。要求は?」
「宝石だ。この試験に合格するためのな。……俺は優しいからさ、ここでお前らを倒してお前らの持つ宝石を全部奪い取ることもできるんだが、1人一つずつで見逃してやろう。どうだ?」
この会場にあるほとんどの宝石は俺が持っているが、この二人はきっと実力者だ。俺の持っていないものを持っているだろう。そう思った俺は言った。
それを聞いた二人の反応は大きなものではなかった。どうやら宝石を取られることは想定していたのだろう。
「……わかった。だが、せめて俺たち二人で一つだけで勘弁してくれないか? 俺たちは二人で三つしか持っていない。二人一つずつ、合計二つ渡すと、どちらかが合格できなくなっちまう」
(こいつ……自分が不利な立場にいるのにも関わらず、条件をさらに緩くしてきやがった。いや、ひとまず落ち着いてこいつらの持つ宝石の数が本当に言っている通りなのかを見ておくか)
俺は特権を発動する。
『見通せる権利』
俺はその権利で、奴らの持つ宝石の数を見通す。
するとどうやら見通した宝石の数は奴らの言葉と同じだった。
(嘘はついてないのか。ならまあ……仕方がないか。俺も悪党になるつもりはないからな。条件を呑んでやろう)
そう決めた俺はその通りこいつらに告げた。「それで手を打とう」と。
「い、いいのか……! わかった。差し出そう」
「ああ、それで十分だ」
俺は彼からそれを受け取る。
「それじゃあ俺はもう行くよ」
「ああ、わかった」
そう言って俺はその場から立ち去るのだった。




