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新しい人生

 俺は、飛び出していた。なぜか。それは、今まさに車が横断しようとする道路のど真ん中に飛び出してしまったあの少年をそこから突き飛ばすため。


 俺だったら間に合う。俺だったら助けられる。周りは誰も動こうとはしていない。俺にしか……助けられない……!


 俺は少年の背中を押そうと手を伸ばした。しかし俺の手は少年に触れることはなかった。少年は、俺とは反対側の歩道にいたらしい女性に手を引かれて車から逃れたようだ。


 ドンッ


 そんな音が鳴る直前、俺の頭には、様々な自分の、人生の記憶が蘇っていた。


 ??? あぁ、これは走馬灯ってやつか……。そうだったな。そういやあの頃から俺は普通だった。何をやろうと俺は普通。どの分野においても俺は、特別にはなれちゃいなかった。他者よりも優れていたことはなかった。だから飛び出しちゃったんだろうな……。俺が少年を助けようとしたのは、決して少年を思いやってのもんじゃなくて……少年を助けて、俺しかできなかったことをしたかったみたいだ……。結局俺がしようとしたことは……あの女性がしたみたいだが……。


 そして俺が走馬灯から覚めた頃には、俺は、車に撥ね飛ばされていた。体全体で数十キロのスピードで走る車の勢いを受け止めた俺は、道路に倒れ込んでしまっていた。


 あ、これ……ダメなやつだ。マジか……。視界……ボヤける……。あぁ……特に悪い人生ってわけじゃ……なかったけど……なんか、たいていの人ができないようなこと……できるヤツになりたかった……な……。






 あれ……俺、生きて……る? けど……なんか違和感……。てか俺、なんで生きて……。


 そんな疑問を持ちながらも、俺は目を開く。すると俺の目には眩い光が差し込んでくる。その光はずっと目を閉じていた俺を刺激する。


「うわっ!」


 目を開いた俺の視界には大きな女性の顔が映り込む。


 誰っ!? でかっ!? 巨人っ!? これってどういう状況!? ダメだ……。わけわかんなくて頭が回らない……。


「○!※□◇#△!」


 大きな女性は、やさしい声で何か俺に向けて言葉を発しているようだ。


 この人、何か言ってる……? しかも俺に向かって……? 何て言ってるんだ? この人。


 俺は女性の言葉に耳を澄ませて聞き取ろうとする。


「やったぁ……! う□○た……!」


 ダメだ。分かりそうなんだけど聞き取れん……。


「私の子……!」


 あいや、なんかわかる。わかるぞ。少なくとも外国とかじゃないみたいだ。えっとー……何? 私の子? どういうことだ? うーん……? 


「生まれた! 私の子……!」


 え? う、生まれた?  ほんとにどういうことだ? てかこれってやっぱり俺に向かって言ってる?


 俺は、キョロキョロと周囲を見渡し始める。


 なんか……物がデカすぎじゃないか!? それと、ここは病院ではないのか。いや、今更か。ここは……木造の一軒家ってところか。

 うん。ちょっとずつ状況がわかってきたな。簡単に整理すると、まず俺は車に撥ねられて死亡した。そしてなぜ今ここにいるのか。生きてるのか。それはこれまで確認してきた要素で容易に考えられる。ただ、まるで現実的ではないな。けどそうであると考えるしかこの現状を説明できやしない。てなわけで俺が導き出した結論は……俺は死んでから転生をしている。それも、なぜか前世の記憶を持って。

 そして今俺の視界に映っているこの人は俺のお母さんっていうことだろう。そういえば父親はいないんだな。周りには見つからないし。まあ生まれた直後は仕事で来られないなんて親もいるらしいしそんなものか。

 まあいろいろ訳わかんないけど、とりあえず……普通に新しい人生を生きてみるか!






 時計の指す時間は11時58分。もうすぐで、俺に『特権』が与えられる! それ次第で俺の人生がガラリと変わる! 前世ではひたすら平凡だったからなあ。

 ……思えば転生してきてから15年か。まさか転生した後の世界が異世界だとは思わなかったな。最初は日本かと思ってたんだが……父さんが明らかに金属でできた剣をブンブン振ってるとこを見たあたりでここが異世界じゃないかって思い始めたんだっけ。

 それでまー、本を読んでこの世界はモンスターがいたり、魔法を使えたり、まるでファンタジーの世界ってのを知ったり、母さんや父さんから15歳の誕生日の正午に1人1つ与えられる特殊能力『特権』について教えられたりして今日でついに15歳! 

 俺も特権が与えられる訳だ。特権には魔法でできちゃうようなハズレのものもあるみたいだし……せっかく転生したんだ。そういうのは嫌だなー。どうせならめちゃめちゃいい感じの……いわゆるチートみたいなやつがいいな。


 さて、そろそろか。どんな感じで与えられるんだろう。それを考える間もなく、俺の周りが、いや、俺の身体がピカっと発光して光に耐えれず俺は目を閉じる。

 次に目を開けた時、俺の視界には

『 特権

 権利を得る権利

 

 成長に応じて、上限なく特権を得ることができる』

という文字が映し出されていた。


 特権を……上限なく得られるっ!? なんだそれ!? なんてチートだよっ! 確かにどうせならチートみたいなのがいいとは思ったけど、普通特権は1人につき1つだぞっ! 許されるのかよこんなの……。いや、許されたから俺に今与えられちゃったのか……。

 だけどまあせっかくこんなチートが与えられたんだ。上手く活用してやろう! それで、特権を得るには多分成長をすればいいんだよな? 成長に応じてってあるし。それで成長っていうのはどんなだろうか。いくらファンタジーみたいな世界とはいえレベルとかはないみたいだし。うーん……わかんないな。


 「とりあえず色々試してみるか!」

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