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触れた手はひんやりと心地良く

作者: k.k.

 強めの風が吹き抜けると同時に瞳にゴミが入り足を止める。

 軽い痛みに歪む口からため息が零れた。

「なんで……」

 ずっと人生を早く終わらせたかった。

 しかし、今はすでに亡くなっている嫌いな人と同じ道、同じ所に行くのかと考えると死にたくないと思ってしまう。

 強く死にたいと思っていたにも関わらず、賢者の石なのか人魚の肉なのかは知らないが、今は不老不死にすらなりたいと願うほどに死にたくない。

 逆に好きな人に会えるなら死んでも良いのではないのか? そう思う人もいるだろう。

 けれど好きな人と一緒のところになんて行けないのは自分自身がよく分かっている。

 よく思い出すのは体調を崩した時に頬に触れた金属の義手だ。

 始めは周囲と同じで忌避して不気味に感じていたけれど、熱にうなされた頬に触れた手はひんやりと心地良く優しかった。

 もし生まれ変わりがあるのだとしたら、示し合わせなければ人の一生では会えないだろう。

 それこそ不老不死にでもならなければ叶わないーー言っても死後の世界や生まれ変わり、不老不死なんてファンタジーは到底本気にしてはない訳だけど。

 ゆっくりと瞬きをして街の中を歩き出す。

 現実と空想を混同するほど病んではいない。

 けれど死なない限り知りえないので、どうしても好きな人と一緒のところには行けないだの、嫌いな人と同じは嫌だと拒否してしまう。

 だから、とりあえず今はーー拒もうと受け入れようと死を迎えるのが先か、死を否定して不老不死はともかく半永久的な生を見つけるのが先か。

 そんな妄想して叫びたくなるほどの空虚から目を逸らし続ける。

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