06 『はぐれた者達』
空への渇望。あの大空を掴むことが出来ればと小さい頃はよく思っていた。どこぞの機械猫の空の世界の映画の影響もあったのかもしれない。
しかし今や掴むための力を、羽を手に入れた。
この力を持ってすれば音速を超えられる。
しかし、今はその力を使う目的は決まっている。
「どうだ? 風圧とか問題ないか?」
「うん、アストラのおかげで髪型がちょっと乱れるくらいだよ」
豪速で空を揺らすのはスノーをお姫様抱っこし、悪魔の翼をはためかせるオレだ。
今は目の前を先に飛ぶシスター達を追いかけている。
オレの翼は禍々しく、だがその様相はゲームに出てくるような悪魔の羽でもなければ、竜のようにごつごつした鱗もない、どこかさびれ汚れたマントのようだった。
「関節もないし、動かしてるって感覚もないけど確かに飛んでるんだよな・・・」
明らかにスノーと初対面した夜の時の翼とは大きく違う。飛ぶことに特化したように、その翼は風を切って、確実にシスター達との距離を縮めていく。
「しかし不思議な光景だよな。オレからすればシスター達三人が透明なバイクにでも乗ってるかのような、珍妙な態勢で空飛んでるんよ」
「でもあの大きな鳥・・・」
スノーが指さすがやはり見えない。
オレの目は明らかに視力1.0を超えている。スマホのレンズ以上の性能だというのに、見えないということは視力の問題ではない。おそらくは元々の資質みたいなところに問題がある。霊感と同じようなものだろうか。
「転生しても霊感ゼロは引継ぎされたのかなぁ・・・?」
そうなるとスノーには霊感があるということになる。この世界に本物の幽霊がいるのかは定かではないが、シスター達を乗せている大きな鳥やレオンの出した犬とやらを見る力がスノーにはあるのだろう。
生前にはなかった有り余る身体能力に特殊な魔法、しかしそれでも”見る力”はなかったことにがっくしと肩を落としていると、ふと肌を震わせるものがあった。
「――――これは、おぐっ!」
「あ、アストラ! シスター達がどんどん下降してる!」
言葉にし難い気配に目を凝らしていると、スノーに思い切り首を引っ張られた。変な息が洩れ、瞠目する。相変わらずの怪力にいつかオレは事故で死ぬんじゃなかろうかと思ってしまう。
「まぁ可愛い子に首折られて死ぬなら本望・・・いや、まだ悪魔も幽霊も見てないし死ねんわ」
オレが悪魔だから、というのは無しだ。オレはオレ以外の悪魔に会ったこともないし怨霊も、はたまたスノーの見ている世界も見ていない。簡単には死ねない。
改めて現実を見直し、オレもまた下降する。
吹き上げる風を感じながらオレは地に足を付ける。と、同時に一層今まで感じていた不安感が増した。どこか親近感があり、しかし受け入れてはならない違和感が、オレの目の前にはあった。
「スノー、大丈夫か?」
「? 別に大丈夫だよ」
スノーは特に何も感じていないようだ。しかしこの醜悪な気配は明らかに人間の身体には毒だ。一番参考になる例は紛争地帯の空気。死臭と血生臭さ、崩れた建造物の煙などが合わさった、言葉にし難い臭いでもあり、どこか懐かしささえ覚える悪夢の臭いだ。
鼻を抑え、ついでにもう片方の掌でスノーの口を抑える。
「もふぁもふぁっ!?」
「気づかなくても人体に有害なのは間違いない。お前の鼻づまりは後々で治していくとして、ちと隠れるぞ。シスター達が近づいてきた」
急に口を抑えられてびっくりするスノーにオレは語り掛ける。その後彼女は少し右に目をやりオレと共にシスター達から離れていく。同時に、醜悪な気配からも離れた。
スノーの口を解放し、オレ達は少し離れた茂みから今さっきまでオレが立っていた位置にシスター達がやってくるのを見た。
「どうだいレオン、気配は」
「えぇ、こちらに近寄ってきてます。靄が、すごいですね・・・! 僕でさえも真剣になってしまう」
「レオン、足が震えてるわよ。シスター、迎撃準備は出来たわ。火属性の二重魔法連撃で魔獣の”骸”を焼く」
「いえキャリーサ、連撃は三重がいいわ。砲台も二つではなく四つ・・・、天使にも手伝ってもらいなさい」
「―――分かりました。来て、ラルフォン」
少女が呟くと、再び森林がざわめく。
「騎士の人が出てきた・・・」
「今度は騎士か」
「ほぅ・・・」と感嘆の台詞を漏らすスノーには悪いが、相変わらずオレには見えない。だが、彼らに迫っている脅威はスノーよりも感知している。
「来るか」
「来るね」
「――来る」
レオンは息を吐き出し、シスターは呟き、キャリーサは指先で何かを虚空に書いている。
「」
無音。スノーの息を飲む音が鼓膜を叩く。
静寂、―――その瞬間だった。
今まで少しずつ近づいていた醜悪な気配の奔流が、まるで助走をつけたかのように急に加速する。加速して、加速して、加速して。
茂みの奥から耳障りな嗤い声が響く。
その茂みから、人の髑髏と狼の顔が混ざったような顔が突き出された。
しかし、だ。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははh!!!??」
間髪入れずにキャリーサの突き出された掌の先から魔法陣が飛び出し、マシンガンの如く炎の矢が連射される。
嗤い声が途切れる。しかしその衝撃は終わらない。
矢の形をした炎の追撃が、最初に突き刺さった火矢の後を追って魔獣にぶつかる。
「レオン!」
「了! 『天の意思よ、この手に火を』!」
キャリーサの叫び声にレオンが呼応する。レオンが握りこぶしを作るとその周囲に赤色の魔法陣が出現し、逆巻く火炎を形成する。渦巻くそれは少しずつ大雑把にも槍を形作る。
熱くはないのか、と場違いな疑問と裏腹にレオンはそれを構える。
出鼻をくじかれた魔獣は汚い嗤い声を上げながら茂みに再び姿を隠す。さーっと、空気に溶けるという表現がしっくりくるように、魔獣はその場から姿を隠す。不気味な嗤い声がシスターとオレの居る周りを彷徨う。
「あ、アストラ・・・」
「大丈夫だ。こっちに意識を向けていない」
怪奇現象とちらっと覗いた魔獣の顔を直視したスノーが声を震わせてオレを見る。オレはぐるっと周囲を見渡して魔獣を見つける。姿は見えなくともあふれ出る瘴気が最も濃い”何か”がシスター達を見据えながら動き回っている。何故かオレ達には目も向けていない。
魔獣は怨霊が獣に憑りついたもの。しかし憑りつかれれば最後、内側から臓腑、骨、肉、皮をその瘴気で侵され、腐食させていく。同時に実体を得た怨霊の力は大きくなり、その形を自由に作り変えることが出来る。
そして今、目の前にいる魔獣は、元の姿とは似ても似つかないおぞましい姿へと変貌していた。
「顔半分人間でもう片方が狼、怨霊は零体だけど姿見は人間に近いらしいし、・・・そう考えるとこれは狼人間のなりそこないって感じだな」
雰囲気はどこぞの有名魔法使い映画に出てくる人狼のそれだ。だが、怖さとおどろおどろしさは別格だが。
魔獣はそのままあちこちから嗤い声を上げてそっとその動きを止める。
そして、
「あははははははははははははははははははははははははははははははははhッ!!???」
一瞬にして上空へ、飛びかかる形で魔獣がその姿を現す。
しかしその顔面をまたもや火矢が襲う。
奇襲を読まれ、魔獣が大きく距離を取り、低く嗤う。
「シスターの言った通り、三重にしておいて良かった。二重だったらあの奇襲は防げなかったわ。・・・でも・・・」
キャリーサの顔が曇る。
「本当なら今さっきの攻撃で身体の半分くらいは消し飛ばせるはずだったけど・・・」
「ほとんどダメージ出てないよねぇ・・・、魔力込めたキャリーサ?」
「込めたに決まってるでしょ! あいつ、魔法に耐性あるとか言わないわよね?」
「落ち着きなさいキャリーサ、焦りは隙やよ。魔力を込めたなら、あとは手数か属性か。魔獣の一番の苦手は火属性。だとしたら足りないのは手数だろうね」
歯を剥くキャリーサにシスターは制止する。そしてもう片方の手を魔獣に向ける。
「――――!!」
「消し飛び」
広げた掌を閉じる。シスターの声と同時に閉じた手を囲むように小さい魔法陣が幾つも展開され、閃光を放つ。
視界に広がる閃光の束が魔獣の身体を貫く。
「ぎぃあやぁははははははははははははははははははははははははッッ!!!?」
キャリーサの魔法と違ってこちらは魔獣に効果があるようで、光線が魔獣を飲み込む。
「すご・・・!!」
「あれが魔法か・・・・」
感嘆しかない。
オレの中の魔法の印象はかなり複雑な手順と道具を使って為されるものだ。魔女の鍋によって作られた素材に長ったるい呪文に魔法陣。スノーの部屋にある「魔法学」の本にも原点となる魔法はとんでもなく複雑だと書かれてあった。今では様々な学者が研究して簡略化したらしい。スノーも毎日呪文の暗記をしているが、あれがまさに簡略化されたものだ。
「簡略化したと言っても結局最低限魔法陣描いたり、変な素材が必要だったり、魔法は繊細で気難しいもんだと思っていたが・・・」
よくよく考えてみれば、オレの「代償の魔法」も魔法の一つだがオレは軽くこの力を扱える。変な呪文も魔法陣もないため、認識は「魔法」ではなく「能力」だった。しかし「代償の魔法」は紛うことなき魔法のため、彼らのような魔法の撃ちやすさには納得だ。しかしそうなるとスノーが毎日してる魔法の呪文の暗記には何も意味が無いように思える。
おそらく、相性や体質、はたまた民族の先天的な問題が絡んでいるのかもしれない。
「そこは今度ゆっくり考えてみるとして・・・」
ちらりと目を魔獣に向ける。
シスター達の連携によって奇襲を悉く潰されていき、シスターの魔法に全身を貫かれていく魔獣だが、嗤い声は止まらない。
耳をつんざき生理的嫌悪感を引き出してくるその嗤い声は、どこか余裕すら感じられる。
「・・・・あの魔獣」
ぽつりとスノーが呟く。
「力を、溜めている・・・?」
疑問を投げかける。その疑問にオレは一瞬意味が分からなかったが、よくよく魔獣を見てみると心臓部分に濃い瘴気が集められていた。
「―――――ッ!!」
それが刹那に煌めくのが見えた瞬間、オレはスノーの前に出た。
「クソっがぁ!」
反射的に右手を突き出す。同時に空気が張り裂ける音が鳴り、魔獣の胸部からどす黒い瘴気を帯びた極光が周囲の全てを包み隠す。
「しまっ―――!」
「シスター!」
「!」
レオンの声、そしてシスターの目の前に飛び出したキャリーサが何かの呪文を唱えるところまで見て、そのまま爆風に呑まれた。
肌に殺気が叩きつけられる。黒い瘴気が視界を飲み込む。しかし不思議と爆風が収まり、瘴気が駆けた跡にオレは無傷で立っていた。
「あれ?」
間抜けな声が出た。
一瞬死を見たが、不思議なことにオレは少しの傷も違和感もなくそこに立っている。
周囲は嵐が来たかとばかりに荒れており、木々はへし折れ、葉はそこら中に散っている。シスター達もおらず、魔獣も消えている。だがオレはその場から一歩も動かされていなかった。
「まるで地表と一体化した感じ・・・・そうだ、スノー、大丈夫k」
身体全体が杭として地上に突き刺さったようにピクリとも動かなかった事実を確認した後、オレは後ろで隠れていたスノーを見る。
そして言葉が途切れた。
確かにオレは魔獣の攻撃の前にスノーを庇う形で身体を盾にした。だが後ろを振り返ると、底にスノーの姿はない。吹き荒れて裏返った茂みがあるだけだ。
オレの一番近くの茂みは乱雑に抜かれた跡がある。誰かが飛ばされるのを防ぐために雑草を握ったが、そのまま根っこ事飛ばされたと考えられる。
ここから推測されることはただ一つ。
「まさか、まさかまさかまさか・・・!!!」
間違いなく、絶対にスノーは今さっきの爆風で飛ばされたのだ。
☆★☆ ☆★☆ ☆★☆
森の奥、屋敷から随分と離れたところでスノーは目を開けた。
「あれ、ここは・・・」
ゆっくりと立ち上がり、当たりを見回す。お出かけ用のワンピースは土と雑草に汚れており、頬や手などの露出部位も土や草の臭いがする。
魔獣の攻撃、自爆、それは分からないが、スノーは爆風に飛ばされないように隠れていた茂みの雑草を掴んでいた。しかしアストラの肉盾も空しく根っこ事上空へ飛ばされたのだ。助けを言う間もなく飛ばされ、そこから先はあまりの怖さに目を閉じたわけだが、スノーには違和感があった。
「服は汚れたのに、怪我してないし・・・折れてもない・・・」
それは不可思議なことだった。
スノーが飛ばされた上空は優に五十m以上。そこから地面に落ち、何度もバウンドすれば普通人は砕け散る。少なくとも死んでいる。そのはずだ。
だが言葉の通り、現にスノーは少しの怪我もなければ骨折などの問題もない。跳んでみたが身体の不調はなかった。
「ん~、不思議だ。・・・何かの魔法とか?」
こんな超常現象を起こせるのは魔法だけだが、スノーはすぐに首を振る。スノーはこういう魔法を知らないし、なんならそもそも魔法を使えない。
「悩んでても仕方ないかぁ! 身体はなんだかんだ言って丈夫なのが取柄だしね! 遠くに飛ばされたっぽいし近くにアストラも居なさそうだし、はてさてどうしようか」
残念なことにスノーは飛ばされている最中目を閉じていた。その為どこからどこまで飛ばされたのかが分からないのだ。辺りを見回しても家も領村も見当たらない。本当の未開拓地に飛ばされたようだった。
これではどこに迎えばアストラに会えるか、家に帰れるのか分からない。
「・・・・確か、アストラが言ってたなぁ。森の中で迷子になったら真っ先に山頂に上れって」
悩み暮れるスノーの脳裏によぎったのはアストラの豆知識だ。アストラ曰く、「そこまで山自体が危険じゃなければ山頂に登る。山が樹海や雪山だったら慎重に来た道を戻る」とのこと。実際に山で遭難した時は山頂に上った方が電波が届きやすくなったり、登山ルートに入ることが出来るからだと言うが、それはあくまで危険性の低い山での話だ。本来なら自身の辿った足跡や景色を見て、来た道を戻るのが正解だ。下手に山頂に登っても、登っている最中に崖から転落したり山頂の空気が薄く酸素不足になったり等、危険に曝される可能性がある。
しかしこれについて、もっと悪い話をしよう。
スノーの世界は魔法学が研究され、発展してきた。多少なりと魔道具があったり、天使や悪魔といった未知の存在と契約を結んだりという特徴があるがアストラの生前のような世界ではないので電子機器は少しもない。
山頂に登って助けを求めてもトランシーバーはなければスマホもない。舗装された道が山にあるというのもかなり珍しく、基本的に山を通る際はトンネルを掘る。整備はしても舗装はしないのが普通なのでテレジア家が少し変わっていると言える。そして、そんなテレジア家でも舗装しているのは家から盆地にある領村までの道のりだ。登山用の道は作っていないのだ。
だからスノーは間違った選択をした。
アストラの豆知識は日本で通じるのであって、スノーの世界では通用しない。
「この感じ、あっち側が山頂かな」
なんとなく土を踏んだ感じ、斜めになっているところから山頂をあてずっぽうに決める。そもそも空飛んで落ちた時点で来た道なんて分かりもしないので仕方がないのだが。
「アストラは良いよね。体格良いから吹き飛ばないし」
思い浮かべ、はぁとため息をつく。スノーの実質的な保護者は筋肉質な悪魔だ。体躯はニm以上あり、背中は頼りがいがある。頭も悪くないが時々変な冗句を言うため馬鹿なのかそうじゃないのか分からない。
今頃彼は自分を探しているのだろうかと考えながら、山道らしい山道を進んでいるとふと山の、スノーが進む先の木々からがさがさと音が鳴った。
「・・・・・」
咄嗟に息を潜めて乱立する木々を睨みつける。時々枝葉が揺れ、ゆるりゆるりと右往左往する。
スノーはそっと拳を構える。スノーは只の怪力女子ではなく、アストラから体術を叩き込まれている戦闘系女子だ。勿論体術と言っても、武術の極致と言えるものではなく単純に路地裏のチンピラをぼこぼこにしたり、武器を持った相手を投げ飛ばすくらいの喧嘩と体術を主とするぐらいだ。悪魔相手には太刀打ちできないが、そこらの野獣くらいなら間合いを意識すれば簡単に倒せるとアストラのお墨付きもある。
「魔獣か、・・・でもあの時魔獣は自爆したし・・・」
あの異形かと考えるが、人狼のような魔獣はスノーたちの目前で大爆発を起こした。あの中心地に居た魔獣があの爆風を受けて無傷な訳がないとスノーは首を横に振って魔獣の生存を否定する。
「だとしたら向こうから私に近づいてくるのは肉食獣か・・・」
がさがさと近づいてくる何かにスノーは息を吸って精神統一する。逃げてもおそらくあっちはスノーの臭いを嗅ぎ分けて襲ってくるだろうと、それならば逆に拳を思い切り振り切って一撃を決めて逃げるのが正解だ。ひるんだすきに迂回して山頂に登ればいい。
「ふぅ――――」
ごそごそと木々から何か、人間大の生き物が近づいてくる。枝葉や伐採されていない蔓でよく見えないが明らかに気配はこちらを見つけた狩人のそれだ。アストラであれば真っ先に警戒するが、スノーではそれを感知する術はない。
やがて何かが確信を得たように、こちらに向かって加速する。
やがて何かが勢いよく木々の間から顔を出し、
「ご無事かお嬢さnプルコギッッ!!!?」
「レオン!?」
金髪が振り乱れ、会心の一撃が突き刺さった不審者が真後ろに倒れる。それにスノーが驚くが、それを上回って女性の驚きの声が止まの中を木霊する。
慌てて不審者に駆け寄る女性と、頬に拳跡を付けられて伸びている不審者、その男に一撃入れたスノーは目を見開く。
「あれ、キャリーサさんにレオンさん?」
「・・・!? そういうあんたはテレジア家のご令嬢じゃない」
「「えぇ・・・」」
お互いに見つめ合い、困惑の声を漏らす。不審者の隣では白いモフモフの犬が目を回す男の顔を舐めている。
よく思い返せば、確かに近づいてくる足音は四足歩行というよりは二人の足音だったなと気づくスノーであった。
「とりあえず、状況確認でもしましょうか・・・?」
「そ、そうね・・・」
混沌とした空間に女子二人、不審者と犬一匹。
スノーがおそるおそる出した提案にキャリーサは頭に手を当てて頷いた。