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05 『見えざる存在』

 まるでその空間だけ時が止まったような感覚だった。


 固まるシスター、「あちゃー」と顔に手を当てる女子、オレ、ごみを見る目のスノー、そしてそのスノーに殴られて虫の息の男子。メンツは属性過多で脳みそが忙しい。


 役者は揃ったというべきか、跳梁跋扈というべきか。


 「なんだこの時間・・・、てか誰だこの不審者・・・」


 黒い執事服・・・、西洋のホラー映画でよく見る祓い屋の格好をした男子はおそらく向こうに居るシスターと女子の仲間だろう。しかし女子も横の年配とは違いバーのスタッフみたいな服装だ。


 「誰よ」


 厳かに、しかし怒気も孕んだ声音でスノーが向こうに居るシスター達に問う。いくらでかい山とはいえ、ここは立派なテレジア家の領地だ。何人たりとも不法侵入は許されない。


 男子を殴り飛ばしたスノーが女子を睨みつけた瞬間、女子が「ひっ」と呻く。しかし隣の年配のシスターは怯みもせずに堂々とスノーの前まで歩み寄ってきた。


 「私達は教会の人間さね。教会手帳もあるし、ここに入ってもいいと通行証も貰ってるよ」


 懐から取り出されたのは茶色のカバーに金の六芒星の装飾が施された一冊の手帳と、「エルディオ=レイムス=テレジア」の名と押印された樹枝型角版状結晶の通行証明書だ。


 少なくとも、目の前の人間は本物のシスターらしい。


 「なぜ教会の方々が此処に・・・?」


 紛れもなく本物の証拠に困り顔になるスノーに、シスターはうんうんと頷く。


 「実はこの近くの町で少し前に悪魔騒ぎがありまして、悪魔は無事に倒せましたが、その影響で生じた怨霊がこの山に逃げたのです。発見が早かったのであまり強くありませんが、魔獣になられると危険です」


 「魔獣って、悪魔の残滓が獣に憑りついて狂暴化したもの・・・」


 考え込み、魔獣に関する知識を引き出すスノーにシスターは存外驚いた表情を見せる。


 魔獣はいわば怨霊が獣に憑りつくことで出来上がる化け物だ。怨霊は悪魔が現世に姿を見せたときに生じる悪魔の残滓の一部であり、時間が経つほどにその力は増していき狂暴になるという嬉しくない能力がある。この世界で言う怪異は魔獣や憑りつかれた人間、ポルターガイストは怨霊を指す。


 まず悪魔と関わる仕事をしない人にとっては覚える必要のないことだ。


 「ほっほっほ、こりゃ驚いた。あんた別に聖女じゃないんでしょう? 貴族の令嬢が「魔獣」なんて単語を知ってることに驚きだよ」


 「は、はぁ・・・」


 「こりゃ将来が楽しみだねぇ、聖女にでもなるのかい?」


 「えぇと、それはまだ決めてなくて・・・」


 グイグイとくるシスターにスノーが「助けて」とこちらを見てくる。しかしオレは助けられないし、助けない。こうしてオレ以外の人ともコミュニケーションを取れるようにしろと、オレは後方保護者面をしながら腕を組む。


 シスターで年配というのもあり、鉄拳を突き出せないのかどんどん後ろに下がっていくスノー。止まらないし止められない年配の怒涛の質問責めに目を回しかけていると、ふとシスターの肩を叩く者が一人。


 「シスター、遊んでる場合じゃないですよ」


 女子だ。赤毛赤眼の女子だ。今さっきまでスノーの目線に委縮していたというのに、今のなんと勇ましいことか。


 その女子は更に手前に倒れている男子の脇腹を蹴り、


 「レオン、いつまで倒れてるのよ。女に殴られたくらいで致命傷なんて格好悪い」


 「手の甲にキスすらはねのけられた・・・」


 「あんた顔は良いけど目に見えて女好きだからキモイのよ」


 「・・・・・・・ううっ」


 「泣いてないで立ちなさい。もう一度、今度は本気で蹴るわよ」


 「わ、分かった! 起きる! 起きるから!!」


 蹴る準備をする女子に恐れ、がばっと起き上がり立ち上がる。彼はレオンと言うらしい。ついでに自身がイケメンだと自覚しているタイプの奴らしい。オレの嫌いなタイプの人間だ。


 レオンは脇腹をさすりながらシスターをスノーから引き離す。


 「こ、怖いよアストラ・・・!」


 「あれだけ詰められたらオレでもちびるわ。おーよしよし、怖かったなぁ」


 半泣きのスノーがオレの腕を抱く。反対の手でスノーの頭を撫でると腕に顔をうずめてきた。寂しがり屋の猫かな?


 引き離されたシスターは少し抵抗するもやがて諦めたか、ほぅっと息を吐く。


 「目的を見失ってたわね。何せ、最近の若いもんは総じて勉強嫌いやから・・・」


 解放され、身だしなみを整えるシスター。改めてみると中々それっぽい雰囲気を感じる。


 「そういうわけだから一刻も早く来た道を引き返して家に閉じこもってください。魔獣はこちらで何とかしますので」


 「はぁ・・・」

 

 「スノー、ここは彼らの言う通りにすべきだ。オレもスノーを家まで送ったら周囲を探索するよ」


 困惑顔のスノーにオレは笑いかける。スノーには戦う力はなく、魔法も使えないため保身もままならない。悪魔のオレが言うのも何だが、戦える多数で捜索した方が早いというもの。


 オレの心配を知ってか知らずか、スノーは「そうだね」と一言。そして直後に、


 「でもここから屋敷は遠いよ。その間に怨霊に襲われないとも限らない」


 「ふむ、確かにそうだねお嬢さん。ここは僕らと共に集団行動すべきだ」


 「あ、こらレオン!」


 なんとここに残る意図を含んだ発言をした。咄嗟に止めようとしたが、レオンに先を越される。これにはお仲間の女子も怒髪天を突く勢いだ。


 「この人はテレジア家のご令嬢でしょ! 聖女でもシスターでもない人をわざわざ危険な目に遭わせてはならないわ!」


 「だけどキャリーサ、僕らは三人行動を義務付けられているし、彼女の言う通り帰りの途中で襲われないとも限らない。かといって彼女を家まで送れば怨霊にもっと遠いところまで逃げられるかもしれない。そうした場合被害はもっと広がる・・・」


 「このエロガキ、綺麗な女子の前だとなんでこうも口が達者になるのか・・・」


 ぐぬぬと歯ぎしりする女子、キャリーサ。おそらくレオンと歳はほぼ変わらないはずだというのに、キャリーサが年の離れた姉貴に見える。しかしオレの意見は姉貴寄りなのでスノーに助言する。


 「悪知恵ってか。でもスノー、やめとけよ。オレが家まで送った方が安全だぜ。飛べるし、高速で移動できるぞ」


 「却下です♡」


 「えぇ・・・・」


 すごい良い笑顔でオレの意見は叩き潰された。


 「虎穴に入らずんば虎子を得ずって言ったのはアストラでしょ」


 「言ったの何ヶ月月前だよ。いや、でも危ないって。スノー魔法使えないし、多少体術に心得があるからって、怨霊に効くかわかんないし・・・」


 少なくとも怨霊とか霊の類は物理法則の外側にいるから体術は効かないのでは? というのがオレの見解だ。例え武術が出来てもスノーには厳しいだろうと、やはりスノーの心配が優先されたオレはスノーを止める。


 だがスノーはその笑顔のままで「アストラ」と一言前置きし、告げる。


 「私の人生をよりよくしてくれるように、手伝ってくれるんだよね?」


 「――――」


 「契約は、契約だよね?」


 「――――」


 口ごもるオレにスノーは問いかける。いたずらっぽく微笑みを浮かべながら、沈黙を答えとはみなさない、口に出して答えるように詰めていく。


 しびれを切らし、オレは大きく息を吐く。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった。オレがしっかり守るから、危ない真似はするなよ。離れてても呼んだら行くよ」


 「うんうん、その答えが欲しかった」


 今度こそ紛れもない笑顔でスノーが頷く。小悪魔みたいなやつに育ったなと、オレはどこらへんで育て方をミスったのか振り返る。


 「私は大丈夫。三人と一緒なら心配しなくて済むし」


 「お嬢さん、良ければ僕と指を絡ませtあばらぁッ!!?」


 うねうねと指を動かして迫るレオンの背中から鈍い音が響く。倒れ伏したレオンの後ろには正拳突きをしたキャリーサの姿が。


 「はぁ、仕方がないわね・・・・」


 やれやれと肩を落とすキャリーサ。口ぶりからして止める真似はしないようだ。追い打ちとばかりにレオンの脇腹を蹴り上げ、痙攣するレオンを指さす。


 「こんなのと一緒だけど、良いの?」


 「構いませんよ。私の心は一直線なので」


 「あら、なら対レオン特攻ね。大丈夫そうだしそろそろ行きましょうか。シスター」


 「ほっほっほ、お嬢さんに頼られちゃ断れんなぁ。ほれ、レオン、起きなさいや。年頃の男子は総じて女の子の拳はご褒美じゃろうに」


 「僕はそんな特殊もってない!」


 勢いよく立ち上がり、突っ込みの役割を果たすレオン。


 先頭を切って歩き出すシスターについていく二人と追いかける二人。追いかけながらスノーは横を並走するオレに向かって少し申し訳なさそうな顔を向ける。


 「ずるいことして、ごめんなさい。心配してるの逆手にとって・・・」


 きっとそれはある種の彼女なりの謝罪だったのだろう。


 オレはほっとどこか安心した気分になり、しかし一方的には受け取らない。


 「いいよ。オレも心配で君を縛っていたかもしれない。これからもそうするんだから謝る必要なんてないのさ」


 きっとどこかでオレはオレを信じ切れていなかったのかもしれない。


 

 

 ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆

 


 

 道らしい道を進んでいると、ふと鼻がその悪臭に気が付いた。数十mも進むとその臭いは強くなり、スノーやシスター達も気が付き始めた。


 「この臭いは・・・」


 「―――急に見え始めたな」


 キャリーサがしかめ面で鼻をつまみ、レオンは手帳に何かを書き込みながら辺りを見回す。シスターはだんまりだ。


 スノーは慌ててオレの背後に隠れて深呼吸をする。・・・こら、人を壁にするな。


 「レオン、どんな感じだい?」


 「割と最悪なパターンだよシスター。今さっきまではずっと薄かったのにあの茂みから急に濃くなった。何に憑依したか分からないけど、できれば肉食じゃなければいいなぁ」


 げんなりと肩を落とすレオンに、ついさっきの言葉の意味が気になったスノーが話しかける。勿論臭いを嗅ぎたくない為オレを盾にしている状態で。


 「その「見える」とか「急に濃くなった」とか、何が見えてるんですか?」


 「――あぁ、お嬢さんここは臭いからなるべくハンカチで口元を抑えた方が良い。良ければ僕のハンカt、・・・自分のがあったのか・・・」


 よけい肩を落とすレオン。オレが見えていないとはいえ、オレを挟んで会話するのはやめてほしい。


 臭いを嗅いだ時よりも落ち込み方が激しいレオンに代わり、キャリーサが前に出て説明をする。


 「レオンには悪魔の残滓、・・・怨霊の通った後を靄として見る力があるの」


 「そ、それって天使の力・・・!」


 キャリーサの発言、その「力」という単語にスノーが反応する。


 悪魔の上位個体と同じように、天使にも個々で特殊な魔法が使える。それは天使と契約した人も同じであり、契約の繋がりを媒介に天使の力を人も使うことが出来るのだ。


 しかしスノーの反応とは裏腹にキャリーサは首を振る。


 「違うわ。一般的な言葉で例えるなら体質、専門的な言葉で言うなら『加護』よ」


 「『加護』・・・?」


 「生まれつき天使の力を扱える・・・、祖先が天使や大聖女様と縁のあるところは大体『加護』を与えられるわ。『加護』はなくとも常人にはない圧倒的な魔力量や天使との契約相性が良かったりその恩恵は様々。私とシスターは普通だけど、そこでがっかりしてるレオンの家系は天使と強い関係があるわ」


 「強い関係・・・代々受け継がれる天使の契約とか?」


 「そんな重たいものじゃないわよ。単純に彼の曽祖父が天使と恋人関係にあったってだけよ」


 「「ぶっっっ!?」」


 二人して吹いた。スノーもそうだがオレも驚きだ。


 途端赤くなるスノー。


 「こ、こここ、こいびち・・・」


 「落ち着けニワトリになってる」


 「こ、恋人ってことはあんなことやこんなこと・・・」


 「漫画の見過ぎだ。恋人の全員が全員致している訳じゃない。あれを現実でやるのはごく一部だ」


 おそらく姉の部屋に山積みなっていた同人誌(「アーッ!♂」な小説や漫画)を読み過ぎたせいか。いろんな想像を膨らませて赤面するスノーの頭をぽんぽんと叩く。


 話が逸れた。


 「とりまあのレオンが天使と縁あって加護を持ってる。これで納得しとけ。その先も後も考えるな」


 今はそれどころじゃなくなっている。


 レオンの加護はおそらく地球用語でいう「サーチ」だ。追跡型とも言うと思うが、どちらでもいい。問題なのは「急に濃くなった」だ。


 今までが薄く、茂みから急に濃くなった。そして肉食でなければいい。


 これはつまり怨霊側にバフがかかったということだ。


 「確か『魔獣』だったか。危険度が増すらしいがこの感じ、肉食っぽいな」


 鼻を鳴らし、ある程度の予想をつける。


 肉食らしい、なんとも生臭い血の香りと微量な毛皮の香り。大体狼とかその辺りではなかろうか。


 魔獣になると何が問題なのか。それは魔獣の本質的なところにある。


 魔獣は怨霊が人や動物の魂に憑依した姿だ。しかし魔獣になると本来の姿とはかけ離れ、若干元々の姿が何なのかわかるぐらいの醜悪な見た目に変化する。それと同時に実体となることで力の強さが変質し、悪魔ほどではないにしろとてつもない力を持つようになる。


 逆に怨霊は力をほとんど持たない。


 物体を多少動かしたり飛ばしたりという、ポルターガイストのような現象しか起こせない。しかし中には例外もあり、魔獣を超える力を振るうものもある。


 改めて「悪魔学」の内容を思い出し、オレは軽く身震いする。

 

 「悪魔を超えることはないっつっても物理的な被害出るんだろ? 流石に幽霊とか異形の力とかよりも熊や猪に出くわした方が生きた心地しないよ」


 自殺の名所に行った時、成仏しきれなかった幽霊に絡まれる恐怖よりも茂みの奥で木の実貪ってた熊見た時が一番身の危険を感じた。怨霊と魔獣にはそれほどの違いがあるのだろう。今のオレは悪魔であるため体格差で害獣退治は赤子の手を捻るくらい簡単だし、アリを潰すくらいの感覚だが、魔獣は聞くだけでもすごそうなのが分かる。


 「魔獣ってどんなの? やっぱり大きい?」


 「大きいんじゃないの? 見たことないぞオレは」

 

 だからこういう質問にはとても弱い。悪魔なのに全く答えられない。


 こっそり聞くスノーにオレは首を振る。スノーは「ですよねー」と息を吐く。分かってるなら聞かないでほしい。悲しくなるから。


 自身の不甲斐なさに半泣きになっていると、ふとシスターがレオンに尋ねる。


 「レオン、どれくらいで着けそうだい?」


 「あっちもまだ徘徊中って感じですし、新しい身体ですから慣れていないのかも。割とすぐ着くと思うけど臭いの元を調べなきゃ。――――ルイン、出番だ」


 柵を飛び越え、レオンが何かを呟く。するとスノーが小声で喘ぎ、こちらに背を預ける。


 「い、犬・・・?」


 飛び出た言葉はオレの目を疑った。


 「犬・・・?」


 「見えないの? あのレオンさんの真横に大きいもふもふの犬が・・・」


 指をさす方向に目を向けるが、そこには何もいない。


 ついさっきシスターをみて「大きい鳥」といったように、オレには見えないものがスノーには見えるらしい。


 レオンは臭いが濃くなった茂みへと足を踏み入れ、しばらくするとまた柵を超えて舗装された道へと降り立つ。


 「シスター、臭いの出所を見つけたよ。少しずつ離れてるみたいだ。どうやらテレジア家統治の町に向かっていく感じ」


 「テレジア家は強い結界が張ってあるが、町の方は怨霊をはねのける力はあれど、魔獣はでしょう・・・。ここは私の天使を使って先回りします。キャリーサは攻撃の手段を整えてください。レオンは随時魔獣の移動状態の確認を」


 「はい!」


 「承知!」


 シスターの鬼気が研ぎ澄まされ、それぞれに指示を出す。今さっきまでの井戸端会議大好き婆さんの気配は微塵もなく、仕事をする人の顔をしだす。


 そして――、


 「ラシエル!」


 叫ぶと同時に虚空から風が吹き、周囲の人の髪が飛ぶように揺れる。


 つい前に聞いた言葉。その意味を探る前にスノーが驚いた顔でその虚空を見ていた。


 「大きな鳥・・・!」


 オレも目をこすって風が吹き荒れた虚空を見るが全然見えない。


 しかしその存在は確かにいるようで、シスターがよじ登り、手綱を握る姿勢になる。そこに次々とレオンやキャリーサを乗せていく。


 「すまないお嬢さん、僕らは一旦あちらに向かう。必ず戻ってくるから待っていてくれ!」


 レオンの言葉と共に更にもう一度旋風が巻き起こる。


 「あ・・・!」


 何かに手を伸ばすスノー。何かに憑りつかれたようにそれに手を伸ばしている。いったい何をしているのかとまじまじと見つめていると、急にシスター達が上昇し、圧倒言う間に空を駆けて行った。


 取り残されたスノーは残念そうに肩を落とす。


 「足掴めなかった・・・」


 「足掴もうとしてたのか・・・」


 オレには見えなかったが、どうやらスノーは鳥の足を掴んで自分もついて行こうとしたらしい。


 「鳥がすごい申し訳なさそうな顔で私の手を避けるの」


 「そりゃ連れていきたくないだろ。実戦経験ないお嬢さんを」


 自分の掌を見てため息を零すスノー。その姿がとても可哀そうに見えたので、オレはそのまま家に帰るという選択肢が出来なかった。


 哀れすぎたのか、同情の念が芽生えたオレはスノーに提案する。


 「そんなに見たいなら連れて行ってやるよ」


 「え・・・」


 ぱちくりと目を見開くスノーに苦笑いを返し、


 「見に行きたいんだろ、その鳥とやらを。あれくらいの速さだったらオレなら追いつける」


 人差し指を出して、シスターたちが飛んで行った空を見る。


 「――――うん!」


 スノーの意思は二つ返事だった。


 

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