プロローグ
この世にはどれほどの謎が残されているのだろう。
俺は生まれてこの方、ずっとそんなことばかり考えて生きてきた。
体力をつくり、身体技能を磨き、技を得て、生存方法を学んだ。知識を蓄え、少しばかりの占いと沢山の元気と好奇心で世界中のオカルトを見て回った。
小学校ではただのオカルト好きだったが、中学校、高校はひたすらに自らの力を高め、休みができる度に日本全国世界全土の心霊スポットを巡り、忌み地と呼ばれるその理由を、そこに眠る呪具を記憶に収め、目で見て回った。
一時期は羽目の外し過ぎで留年しそうになったり、停学処分を喰らいかけたりしたが何とか大学進学まで漕ぎつけた。
そんな割と不安定な日常を送る俺だが、ある日を境にぽっくりと死んでしまった。
理由は世界心霊スポット巡りをしている最中に政府軍とギャングの抗争に巻き込まれたから。
心霊スポットに行っても特に実害らしい実害はなかったが、流石に銃弾飛び交う地域ではそんな幸運も終わりを迎えたのだろう。
この世界には多くの謎が残されている。きっと大往生で俺が死んだとしてもその全てを見ることは叶わない。現に俺は死ぬまでの間霊的現象を見たことがない。呪具もたくさん見てきたし、心霊スポットでの罰当たりな行為も総なめした。学校では何回も廃校舎で呪具の研究をしたし、儀式的なことも幾千とやってきた。
それでも尚、夢に神様も仏様も出なかったし、悪夢にうなされることも金縛りに遭うことも、霊が降りてきたことも、ましてや父がよく話していた悪魔的な存在にも会うことはなかった。
「次生まれ変わったら悪魔が見える世界に」
銃弾が俺の身体を貫通し、血の海の中沈んでいく意識をつなぎ合わせ、口を開く。
血塊が喉に詰まって上手く発音できなかったが、俺の耳にはしっかりとその言葉が届いた。
銃撃戦、つんざく悲鳴、ヘリが空気を切り裂く音、空間を振動させる砲弾の発砲音。沢山の音の中で確かにその声は聞こえた。
何故最後に出た言葉が”霊”じゃなくて”悪魔”だったのか。疑問に思う間もなく、俺の意識は淀みの中へと落ちていった。
落ちていった――――。
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