第五話
「なるほど確かに」
「それならすべての問題が丸く収まるわね」
「でもさぁ」
バトとサーナがラールの意見に賛成する中、俺は声を上げた。
「俺って今まで基本ソロだし、パーティとかレイド組んだとしても大体固定メンツだからはじめましての人を指揮する能力なんてないよ?」
「なら自由なギルドにすればいいんですよ」
「自由?」
「はい。 ギルドには入団条件を決めているところがありますよね?」
「あぁそうだな」
確かによくある話だ。有名なところだとギルドランク三位のギルド【歴戦の集い】というところは入団条件として最低でもソロランキング三桁以内をキープしていることなんてものがある。それのおかげで【歴戦の集い】は上位ギルドとして広まった。
「でもよぉ、条件どうするよ」
「それはトゥルーが決めることだろ?」
「そうね」
「そうですね」
入団条件かぁ……まず俺の名声目当てはいらないかな。このゲームのプロをしているから俺の名前出していろいろされると困るし。あとは単純にこのゲームを楽しんでいる人がいいかな。その方が空気が良くなるだろうし。
「よし決めた」
俺はメモ帳を開くと、そこに書き込んでいった。条件はこうだ。
・俺もしくはメンバーの推薦があること
・レベルに関係なくDTIOを楽しんでいる人
・ノルマなどは一切無し
俺は書き出したメモを公開モードにして三人に見せた。
「これでどーよ」
「これならいいんじゃないか?」
「私もそう思うわ」
「同じく」
「じゃあ条件はこれでいいとして、ギルドエンブレムどうしようか……」
ギルドを作るにあたって第二の問題点ギルドエンブレム。一度登録したエンブレムは変更不可のため、慎重に行う必要がある。ちなみに画力はそこそこなので自分で描くという線はない。
「俺は依頼したからな」
そういってバトは自分のギルドのエンブレムを見せた。バトのギルドは鎧が中心にあり、その後ろに三本の剣が交差しているようなものだ。
「私は自分で描いたわ」
サーナのギルドのエンブレムは陽だまりが一本の木を照らしているエンブレムだった。確かにぴったりだ。
「私は文献から引用しました」
ラールのギルドのエンブレムは神樹として有名なユグドラシルの画像を切り取りエンブレムに使用しているようだ。確かにラールのギルドの名前にはちょうどいいだろう。
「やっぱ依頼が一番無難かなぁ」
「そうね」
「でも誰に依頼するかなぁ……」
適当に依頼してしまうと、もしその人がどこかのギルドに所属していた場合、高額な金額を後から請求されたり、貸しを作ったといわれ俺の関係ないところで俺の名前が悪用されるかもしれない。
「ハヤッターで募集をかけてみては?」
「ハヤッターで?」
「はい。 トゥルーさんはもはやこのゲームをしていない人でも名前を聞いたことがあるぐらいには有名ですので集まってきてくれると思いますよ」
「そんなもん?」
「そんなもんです」
俺の問いにラールは紅茶を飲みながら答えた。
「じゃあ後で募集をかけるとするか」
「じゃあ最後の問題だな」
「そうね」
「ですね」
「ギルドの名前……か」
ギルドの名前もエンブレム同様変更することはできない。
「なんか考えはあるのか?」
「実はさっき考えたんだ。 条件を考えているときにね」
「そう。 なら聞かせて頂戴」
「ギルドの名前は【真なる絆】だ」
「お、いいじゃないか」
「いいと思うわ」
「私もそう思います」
「よし、じゃあとりあえず決めることは決めたな」
「そうね」
「三人ともありがとうな」
「おう、気にすんな」
「トルゥーには助けられてるしお互い様よ」
「ま、そういうことですね」
「まぁとにかく助かったよありがとな!」
そして俺たちは会計を済ませて店を出た。店を出た瞬間周囲がざわついたのはいうまでもないだろう。
「コネクトオフ」
俺はDTIOをログアウトすると、遅めの夕食を簡単に作り、課題や明日の荷物、ふろなどを済ませた後にハヤッターに投稿した。
「さてと、明日は午後に特別芸術授業とやらがあるからもう寝るか」
そして俺は眠りについた。まさかその投稿がバズるとは、その時の俺は思いもしなかった。