第三十二話
更新です。次の話が今回の章の見せ場の一つになります!
「まに……あえぇぇ!」
俺は自身のMPを全部消費して血液を生み出し、膜のように広げて硬化させる。とはいえ、俺の戦闘スタイルはあくまで高速戦闘特化だ。
血液操作の固めた血液の硬度は主に二つの条件に依存しており、それは厚みと使用者の防御力である。
俺はレベルが高いため、素の状態でもそこそこの防御力はあるが、流石にこの状況では気休め程度の防御力でしかない。
「っ!」
俺の血液は降り注ぐ小さな岩の破片は防げるが、大きい岩は勢いを殺しきれずに俺の血液を貫通する。その度に、じわじわと俺のHPが削られていく。
「持ち堪えてくれよ……!」
幸いなことに、十秒ほどで岩の爆散は止んだ。そのタイミングで俺も血液化を解除する。思ったよりHPを消費したようで、すでに半分を切っている。MPに至ってはゼロだ。
岩の爆散をソロモンも食らったようで、二体とも瀕死なのがせめての救いか。
「二人とも、平気か?!」
「お、おう……なんとかな。 それよりだ!」
「私たちより、リラちゃんとルナちゃんは?!」
二人も不意のをつかれたのか先ほどよりもHPを削られている。サーナは残り四割ほどで、バトに至っては二割を切っている。そんな状況でも二人は自分たちよりリラとルナさんのことを気にしたようだ。
俺はすぐに二人の元に移動する。
「二人とも、大丈夫?!」
「は、はい……なんとか……」
「すみません、足を引っ張ってしまって……」
二人のHPは半分ほどまで減っていた。俺が防ぎきれなかった岩があたりに散乱してあり、二人の体には小さな切り傷がたくさんできていた。
「なんとか魔法で壊せないかと思ったんですけど、壊した後のことを考えてなくて……」
テヘヘと言いながら頭をかくルナさん。しかしその腕は少しまだ震えている。確かにいくらゲームとはいえ、大きな岩が地震に向かって飛んできたら、普通の人は恐怖するだろう。
「二人とも、もう少しだけ頑張って」
「トゥルーさんは何を……?」
「何をって、決まってるだろ、リラ」
俺は二人にインベントリから回復薬を手渡した後に立ち上がる。
「あいつをぶっ倒す」
「そんな、無茶です!」
「そ、そうですよ! わ、私たちを庇ったせいでトゥルーさんの方がHP少ないのに!」
「まぁ、これでもソロランキング一位の、ちっぽけなプライドみたいなもんがあるのよ」
俺はそう言いながら左手をひらひらとさせながら、バトとサーナのところに戻る。
「さて、どうするか……」
俺がそう呟くと同時に、ソロモンがセーレを発動させて、転移をさせた。そして、ダンタリオンを投げ捨て、転移させたものを、新たに握る。
「おいおい、それは少しズルが過ぎるんじゃないのか……?」
その手に新たに握られたものとは、さっきいやほど見てきた……魔剣マルバスだ。確かにさっきソロモンを倒した時に消滅していなかったが、そんなことありかよ!
「ここにきて、回復とはいやらしいわね……」
「そうだな……このHPでやり切れるか……?」
バトとサーナがごくりと生唾を飲み込む音が聞こえる。俺も同じ気持ちだ。
俺たちの目の前には、徐々にHPが回復していく二体のソロモンの姿があった。既に二体ともHPの半分ほどまで回復している。
「あーー!」
「な、なんだよ……!」
「ちょっと、急に叫ばないでよね!」
「ははは、悪い悪い」
俺は二人の横で大声を上げながら、深呼吸を一回行う。
「なぁ、サーナ。 できる限りの回復をもらっていいか?」
「いいけど、何するつもりよ……?」
「もう、出し惜しみはしない。 確実に、そして早々にあいつらをぶっ殺す」
「……そう、わかったわ」
俺の言葉を聞いたサーナは数回ほど俺に回復魔法をかけてくれる。HPは六割ほどまで戻った。さらにMPを回復してくれたようで、MPも二割ほど回復している。これで少しは血液を生み出せる。
「ついでにMPも少し回復しといたわよ」
「あぁ、助かる」
「じゃあ俺たちは下がるが……本当にいいんだな?」
「……あぁ」
「なら俺たちは止めやしないよ。 なぁ、サーナ?」
「そうね。 それより私のせいでこうなってしまったのだから申し訳ないわ」
「気にしないでくれ……それじゃあ下がっててくれ」
そういうと二人はすぐに離れて、リラとルナさんのいるところまで下がった。
「あの、お二人とも……いいんですか?」
「あぁ、心配しなくてもいい。 トゥルーがあんな風になったなら……もう勝ったも同然だ」
「えぇ。 それよりもしっかり見るといいわよ。 大会でも見せないし、映像にも残らないトゥルーの本当の奥の手と全力を見れるから」
「そ、そんなに珍しんですか?」
「あぁ、俺たちでも過去に三回しか見てないからな」
「あれを見せられると、いやでも差を実感するのよね」
「そ、そんなに凄まじいのですか……?」
「まぁ、見てればわかるさ」
「それよりも貸を作ったのが私としては悔しいわ……」
遠くから四人の話す声が聞こえる。どうやら無事に下がれたようだな。俺は目前のソロモンに視線を向ける。ソロモン二体のHPは既にほぼ満タンだ。余裕の表情で俺を見下ろす。
「楽しむのは一旦終わりだ。 ここからは……一方的な蹂躙だ」
俺はインベントリから二本一対の剣を取り出す。抜き身の刀身が光を眩しいぐらいに反射させている。
「久しぶりだな……【黒銀】、【白金】」
黒銀と白金の解説は次回します!




