第三十一話
こっちも更新です
「好きなだけ暴れな。 どうせ、逃げられないんだからよ」
俺の中でソロモンは振り払うように腕を無造作に動かす。その動きと連鎖するように、俺のHPバーが減少する。しかしその刹那、ソロモンの腕には無数の大小の切り傷が生まれ、俺のHPとMPのバーがじわじわと回復する。
「お前の攻撃力と俺のスキルの回復力、どっちが上か根比べと行こうか?」
俺のHPが回復している理由、それは吸血鬼のスキル、吸血の効果だ。攻撃時にHPとMPを僅かに回復するスキルで、接触攻撃が条件となっている。
ここだけみればあまり強スキルに感じないが、このスキルのとある仕様が、俺の戦闘スタイルの根幹に関わっていると言っても過言ではない。その仕様が、
「これ、血液化による攻撃にも適応されるんだよねぇ」
つまり極論で言えば血液をMPで生み出し、その血液の攻撃でMPを回復する。永久機関ということだ。
「いいことを教えてやろう、魔剣の帝。 この技を使って俺が倒せなかった敵の数は……ゼロだ」
「?!」
俺はさらにMPを使用し、血液の量を増やし、俺の中にいるソロモンに対しての攻撃を苛烈にしていく。
「さぁ、断頭の時間だぜ? 魔剣の帝さんよ?」
もうソロモンには俺の煽りに反応する余裕はないようだ。腕を振れば十数本の刃が切り裂き、足を持ち上げれば血液でできた無数の針が軽々と貫通していく。
そうこうしていると、ソロモンのHPは残り僅かになっていた。
「仕上げと行こうか」
俺は血液化を解除して、ソロモンの頭上で胡座をかきながら残りの血液を操作してとあるものを作り出す。
まるで棺を二つに割ったようなものがソロモンの両脇に現れ、その内側には数えるのも億劫になるほどの、針がある。
「知ってるか? 鋼鉄之処女ってやつを。 まぁ差し詰め、鉄血之処女ってとこか?」
俺が指をパチンと鳴らす。その合図に合わせて、左右の棺が段々と引き合うように閉じていく。立ち上がる余裕もないソロモンは両の手の剣を離し、こじ開けようとする。しかし、その手を針が貫き、徐々に抵抗する力が弱くなっていく。
「次はもっと、手応えがある魔剣を持ってこいよ?」
ガシャン! と、鉄の扉が閉まるような音が響くと共に、ソロモンのHPバーがゼロになり、鉄血之処女の中からポリゴン体が空に登っていく。
「皇帝、打ち取ったり。 ……なんちゃって」
俺は血液を解除して一つの小さな球体状に変化させて、握りつぶす。物理法則? ゲームだろ、ここ。
「さて、二人は……」
俺が二人の方に視線を向けると、すでに二人ともソロモンのHPを残り三分の一ほどまで削っていた。
「こっちは、終わったぞー」
俺がそう言いながら手を振ると、二人が反応した。二人といっても、ソロモンの方だけど。
「ちょっ?!」
「な?!」
俺に反応したソロモンは何故か急に攻撃をやめて、合流し出した。俺たちも合流することにした。
「何だ、急に?」
「今まで見たことないわよこの行動パターン」
「サーナ、回復もらっていいか?」
「えぇ、問題ないわ」
俺たちはソロモン二人、いや二体に視線を向けながら会話する。ソロモンはお互いの魔剣を発動させて攻撃を繰りか出してきた。しかし、先ほどと違うところは、連携して攻撃を行なってきたということだ。
「おいおい、これやばいんじゃないか……?」
バトが冷や汗を流す。それもそうだ。モラクスで百を超える大小様々な石の槍が、アミーによる炎を纏い、セーレによる物体転移で、無作為かつ無造作に降り注いでいるのだから。
「トゥルー! 二人を!」
「あぁ!」
俺は血液で矢を作り出し、降り注ぐ岩を撃ち抜くが、焼け石に水だ。非常に高温の炎を纏っているらしく、岩に到達するまでには半分ほど血液が蒸発してしまっている。
「ダメだ! 蒸発しちまう」
「なら、冷やせばいいのよね?」
そう言いながら、サーナが手に持つ杖剣を掲げながら詠唱を始める。完全に省略できないということは、広範囲の魔法だろうか。
「堕ちる太陽 消える朝。世界はいずれ その熱を失う。 震える鼓動は 潰える生命の如き」
「おい、待てサーナ!」
このゲームは物理法則に載っている。そして、高温に熱せられたものが、急激に冷やされた場合……
「爆発するぞ?!」
「【氷獄世界】」
俺の静止が一足遅く、サーナの魔法が発動した。
サーナの使った魔法はあらゆるものを凍結させる魔法なのだが、その原理は、現在の温度をマイナスに反転させるというものだ。そして、急激に増やされた無数の岩は、物理法則に則り、熱収縮を引き起こし、そして、爆散した。
鉄血之処女
存在する拷問器具、アイアンメイデンをトゥルーが自身の血液で再現したもの。本来は名前をつけていない技だったが、過去にファンに命名されてから名乗っている。ちなみに元ネタの意味を調べて一週間悩んだ。
氷獄世界
広範囲を凍結させる精霊魔法の氷系の上位魔法。他の氷系の魔法は徐々に温度を下げて氷を生成したりするが、この魔法は現在の温度をマイナスに反転させ、急激に温度を奪い凍結させる。絶対零度の温度を超える場合は絶対零度の値に変換する。
(例1:100℃→−100℃)
(例2:1000℃→−273.15℃)




