第二十七話
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イベントが始まった瞬間、俺たちは強制的に転移させられた。そして一瞬のうちにして、あたりの景色が一変する。
「お、ここは」
「湿地エリア見たいね」
「んてこたぁ、あいつか?」
「じゃあ俺とバトはたいしてやることないし、サーナさん頼んだぜ」
「バトはともかく、あんたは手伝いなさい!」
「えぇ……」
「文句言わない!」
「だってあれ燃費悪いんだもん〜」
俺たちがわちゃわちゃとしていると、目の前にステージ1/3という表記と、タイマーの様なものが表示される。
そして、目の前にボスモンスターが生み出される。そのモンスターは俺たちの予想通りだった。
【グラトニースライム Lv.5200】
俺たちの目の前には、濃い紫色でできた、五階建ての建物ほどの高さを持つスライムの姿がある。このスライムはレベルは大した事がないものの、ある特徴がある。
「やっぱこいつじゃん、こいつ物理攻撃効かないから嫌いなんだよね」
「だな」
「ルナさんとリラもこっちおいで。 巻き込まれるよ」
「あ、はい」
「サーナさんだけで平気ですかね……」
そう言いながらも二人は俺とバトがいるところに避難してくる。俺たちがその場に座ってサーナに任せようとすると、なぜか俺だけ耳をつままれながら引きづられた。
「あんたは手伝う!」
「わーた! わかったから離せ! 痛い痛い!」
「VRだから痛くないっ!」
そう言われながら俺はサーナと一緒にグラトニースライムの前に陣取る。それを待っていたかのように、タイマーが作動し出し、その瞬間に目の前のグラトニースライムが紫色の液体の様なものを吹きかけてくる。
「おっと」
「当たらないわよ、こんな簡単な攻撃」
俺とサーナはそれぞれ翼を生やし、飛ぶことで紫色の液体を軽々と回避する。俺たちがさっきまでいたところに着弾した紫色の液体はシューと音をたてながら地面を溶かしている。
「トゥルー」
「はいはい、働きますよ」
俺は鞘からシェニフェールとルーヴェインを抜き、血液操作で射程を延長してグラトニースライムを切り刻む。グラトニースライムはものの数秒で無数のサイコロ状に変化した。切り刻まれたグラトニースライムは元に戻ろうとして、ウニウニと動いている。
「せっかく切り分けたんだから、大人しくしてくれよっと!」
俺はすぐに重力魔法で上から押し付けるように重力をかける。動いていた無数のグラトニースライムの欠片は、重力に抗う事ができずに、その場で動きを止める。
「早くしてくれよ! これMPを消費し続けるんだから!」
「わかってるわよ!」
サーナはそう言いながら武器を取り出す。サーナが扱う武器種は杖剣と呼ばれる、変わった武器だ。剣柄が通常の剣よりも長く、杖のようになっている。また、刀身の根本の一部が持ち手になっており、杖として扱うときはその持ち手を持って扱う。
さらにはその持ち手と柄を握ることで、より力を込めた状態で切り付ける事ができるという、遠近ともに万能な武器種の一つだ。だが、もちろんそれ故に扱う難易度はそれなりに高く、サーナレベルで扱えるプレイヤーはごく僅かだろう。
「【細氷風域】」
サーナがそう唱えると、極小の氷が無数に現れ、グラトニースライムの欠片に突き刺さっていく。極小の氷が突き刺さったところから段々と凍結していき、十数秒で完全に全ての欠片が凍結する。
そして流動体でなくなったことで重力を受け流す事ができなくなり、そのまま押しつぶされていき、最終的には消滅した。
「ま、こんなもんね」
「七割ぐらい俺のおかげだと思うけどな」
「いいじゃない、倒せたんだから」
「はいはい」
グラトニースライムが倒されたことで、先ほどまでグラトニースライムがいたところに光で構成された扉が現れる。その扉が生成されたタイミングで、タイマーが停止する。タイマーには00:00:32.12と表示されている。
「お、終わったか」
「い、一分もかからないなんて……」
「これがソロランキング一位と三位の実力……」
バトとルナさんとリラで空気感が違う気がするけど、まぁいいか。俺はドロップアイテムを横目で確認しながら光でできた扉まで歩いて行った。
「ほら、早く行こーぜ」
「次は俺の出番があるかな?」
「はいはい、今行くわよ。 二人とも、いきましょ?」
「は、はい!」
「私たちいるかなぁ……」
俺たちは扉の前に集まると、代表して俺が扉に触れる。目の前には続行or撤退の選択肢が現れた。俺は迷う事なく、続行を選択する。その後、俺たちはもう一度転移させられた。
ちなみに次のボスは俺たちがよくお世話になっているスネークドラゴンこと金策蛇ドラさんだったので、バトが斧で一刀両断して終わった。多分、五秒ぐらいで。
なんか涙目になってた気がするけど、きっと気のせいだろう。蛇もドラゴンも泣かないからね。
武器種概要:杖剣
杖としての効果と剣としての効果を併せ持った、DTIOのみで存在している架空武器のひとつ。
遠近ともに戦闘可能な万能な武器種だが、制作コストや使いこなすには相当の鍛錬を要する。
荒れ狂う止まり木
所有者:サーナ
効果:精霊魔法の詠唱省略、再発動可能時間の短縮、効果範囲と威力の増大、MP消費量を軽減する効果を持つ
概要:精霊の加護を受けた特別な木材で製作された杖剣。耐久値と切れ味に関する追加効果を持っておらず、杖としての側面が大きいが、精霊の加護により鉄よりも遥かに頑丈で鋭くなっている。精霊の加護により精霊魔法に関しての恩恵は大きいが、デメリットとして精霊魔法以外には一切の恩恵がない、精霊の気まぐれさのような武器。




