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1話

初投稿です

「アーシュ、残念だが君とはここまでだ」


 その精悍な顔に影を落とした勇者クロマは、ベッドに腰掛ける青年に告げる。

 右手を強く握りしめているのは、今しがたパーティからの脱退を宣告された青年・アーシュである。空よりも鮮やかな青を宿した彼の瞳には、毒々しい桃色へと変色した左手の痛々しさすら忘れさせる威圧感があった。

「分かってるよ」

「……オディゴー達とも話して決めたことだ。恨んでくれるなよ」

「気にするなよ。お前らの判断は正しい」

「……今後のことはまた明日話そう。今日はもう休め」

 軽口が飛び交うこともなく、重く沈んだままの空気に耐えられなくなったクロマは、逃げるように退室していった。

 扉が閉ざされ、友の背が見えなくなると、アーシュは空色の眼差しを静かに伏せた。

 余人には冷たく見える振る舞いが、彼の優しさから来るものだとは理解していた。仲間の前で冷たい現実を突きつけるようなことをせず、敢えて2人だけで話す場を設けてくれたということも承知している。

 しかし、その気遣いこそが彼の心を切り刻んでいた。

 怒りの炎を焚く気力すら失ったアーシュにできるのは、握りしめた右手から滴る真っ赤な雫を睨みつけることだけだった。


 ◆


 勇者クロマが率いるパーティ。

 その役割は、魔獣と共に世界を支配せんとする魔王の討伐。いわば、世界を()()へと導くために選ばれた者達の集まりである。

 必然、その一員として人々に認められるには生半可な腕前であってはならない。勇者一行へと期待を寄せる人々からの信頼は、旅先での支援にも影響するからだ。

 アーシュは、孤児の出自でありながら一行に数えられるに足る実力を持っていた。

 それが『盗み』の腕だ。

 常に勇者の旅において、古代の秘宝などの確保は重要であり、彼の技術はパーティにとっても大切な役割を担っていた。

 その他にも、敵の目を『盗んで』罠を仕掛けたり敵地へ潜入するといった様々な場面において、彼が持つ高度な『盗み』の技術は如何なる敵にも効果を発揮してきた。

 だが、他のメンバーと比較すれば人間の域を超えない彼の肉体は、魔獣の脅威からの耐性に乏しかった。



 魔王ですらその再現は難しいとされる強力な毒を体内に持つ壊毒蛇・ヨルムガルドは、複数の毒袋を持ち、敵や状況に応じた毒を使い分ける魔獣である。

 そのような危険な魔獣に勇者一行が挑んだのは、必要以上に巣穴から出たり外敵に近付かないとされていたヨルムガルドの痕跡が、町の近くの森で発見されたからである。

 恐怖に駆られた人々が、偶然にも町を訪れた勇者一行に討伐を請うたというのが今回の顛末だ。

 アーシュはその戦いにおいて、瀕死のヨルムガルドが吐き出した猛毒を左腕に受けてしまった。

 ヨルムガルドの悪足掻きはそれだけに止まらず、その巨体に宿る怪力によって戦場となっていた巨大洞窟をも崩落させた。

 これにより一行は避難を優先せざるを得ず、回復魔道師による解毒は大きく遅れた。

 薬草の知識による適切な応急措置と最高位の解毒魔法を以てしても、彼の腕に後遺症が残ることは避けられなかった。

 辛うじて原型を保っている左腕が、彼らの旅路において致命的な弱点となることは確実と言って良い。

 パーティの代表としてクロマがアーシュに下した決断は、パーティからの追放であった。


 ◆


 『得意の小細工も使えない役立たず』


 再起し始めた左腕の激痛に縛られ、ベッドの上から動くことすらままならない己を、それ以外に表現しようがなかった。

 ベッドに敷かれた真っ白なシーツの上だけが、今の彼に与えられた世界である。

 この無様な姿をそう言わずして何と言う、と擦れた意識の中で嗤う。

 今の己が裏道にいた小汚い孤児の成れの果てでしかないということは、アーシュ本人が誰よりも深く痛感していた。

 過酷な戦いを強いられる勇者達に、弱者を伴って進む余裕などない。

 例え苦楽を共にしてきた親友であっても、邪魔になるならば切り捨てる。

 それが、世界を救うべき勇者の責任だ。

 それを理解してなお胸中にしがみつく最後の希望を、彼は己の言葉で以て断ち切った。


 ─────あいつらの傍に、俺の居場所なんて無い


Q.何でアーシュをパーティに入れたままにしないの?

A.(元々身体能力の面でもやや劣り気味だった所に、片腕使えず技術面でもガタ落ちした奴をパーティに入れている余裕なんか)ないです。


なにぶん浅学の身ですので、この流れ〇〇のパクリじゃねーかゴラァ!ということがありましたら、なるべくオブラートに包んでご指摘して頂けると幸いです。

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