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第八件 おかしな時間

午後二時半、事件現場近くのアパート付近にて……


「あ〜気持ち悪い」


そう言って専用車から降りたのは小向だった。するとそんな小向に右内は「だから車の中ではやめた方がいいって言ったのよ……」と言った


「仕方ないでしょ。今読まなくていつ読むのよ」


小向はそう言うと右内に紙束を見せた。それは出発前に右内が渡した本事件に関する資料だった。それを小向は車での移動中、読んでいたため車酔いを起こしていた


「別に今読めなんて言ってなかったろ」


須川も車から降りるとそう言った。すると小向は「元はと言えば私に隠してたのが悪いんでしょ」と言った。なので須川は「それは仕方ないだろ。資料を見せて色々なっても困るんだから」と言った


「須川君、その発言はアウトよ」


「え? はい?」


突然右内にそう言われると須川はそう言った


「もっと配慮しろって。これでも私は色々と深い闇を抱えて……」


小向はそこまで言うと突然後ろを向いた。そして「唐突に吐き気が……」と言い、口を押さえた


「まったく、何やってるんやら……」


そんな小向を見た須川は専用車のドアを開け、何か袋が無いか探した。するとそんな須川に右内が「須川君、これを」と言いながらビニール袋を渡してきた。なので須川はそれを受け取り、小向に渡した


「あ〜気持ち悪い……」


小向はビニール袋を受け取るとそう言い、しゃがみ込んだ


「これはダメそうね……。私達だけで行きましょう」


右内はそう言うと車から降りた。なので須川は「そうですね。この状態で来られても困りますしね」と言うと、右内と共にアパートへと向かって歩き始めた


「そういえば坂下の部屋は何処にあるんですか?」


須川は歩きながらそう聞いた。すると右内は「一階のどこかよ」と答えた


「どこかって分からないんですか……」


右内の返答を聞いた須川はそう言った。すると右内は「小野塚さんに連絡取ってるから大丈夫。既にいるはずよ」と言い、角を曲がった……

角を曲がった先にはパトカーが二台停まっていた。そしてそのうちの一台に小野塚が寄りかかっていた


「お待たせしてすみません」


右内は小野塚にそう言った。すると小野塚は「大丈夫です。それで何を調べに来たんですか?」と聞いてきた。なので右内は「部屋に坂下のスマートフォンがあるかどうかをです」と答えた


「やはり右内捜査官も気付きましたか」


「勿論です。私達も捜査を専門にしているので」


右内は小野塚にそう言った。すると小野塚は「我々もそれに気付いて探したのですが、何処にもありませんでした……。なのでこれから部屋の隅から隅まで調べ直すつもりです」と言った


「そうですか……。ですが、念の為に部屋の中に入っても大丈夫ですか?」


右内がそう聞くと小野塚は「勿論大丈夫です。案内します」と言い、坂下の部屋がある場所へと向かって歩き始めた。といっても坂下の部屋はすぐ近くにあった。そのうえ、入口付近には警察関係者がいたため二人にもすぐに坂下の部屋の場所が分かった


「ちょっと失礼。道を開けてくれ」


小野塚は玄関付近で作業している鑑識官にそう言った。すると鑑識官はすぐに作業を中断し、立ち上がった。なので二人はその鑑識官に「すみません」と言って部屋の中に入った


「部屋の中は至って普通……ですね」


須川は部屋の中を見回すとそう言った


「何か怪しい点はありましたか?」


右内は部屋の中を軽く見ると小野塚にそう聞いた。しかし小野塚は右内の求めている回答ではなく「スマホの件以外はこれといって……」と答えた。なので右内は「そうですか……。では何か見つかりましたらご連絡をお願いします」と言った


「ええ勿論です。ところで、そちらは新しく何か分かったことあります?」


小野塚にそう言われると右内は「事件当日の午前七時頃、坂下が仕事に関するメールを送信していました。その証拠は本部に戻り次第送ります」と言った。するとそれを聞いた小野塚は「午前七時?」と聞き返してきた。なので右内は須川に「事件当日の午前七時頃よね?」と確認してきた


「そうです。この通り」


須川はそう言うと、その証拠となるスクリーンショットを小野塚に見せた。すると小野塚は「確かに事件当時の七時ちょっと過ぎですね……」と言った


「何か引っかかることでもあるんですか?」


右内はそう聞いた。すると小野塚は「それが隣人の話で坂下さんが七時頃に家を出ていることが分かりまして……」と言った


「となると、坂下は家から出てちょっと歩いた所で亡くなった……というわけですね」


小野塚の話を聞き、須川はそう言った。すると小野塚は「私も一瞬そう考えましたが、そうなるとおかしいんですよ」と須川の推理を否定した。なので須川は「おかしい? 何がですか?」と聞いた


「おそらくこのメールは駅に向かう途中で送ったと予想できます。ただそうなるとおかしな時間ができるんですよ」


「おかしな時間?」


須川がそう聞くと小野塚は「被害者とゾンビは近隣住民によって発見されました。その通報は記録によると七時半です。そうなると家を出てから通報されるまでの三十分が少し気になりましてね」と説明した


「確かにそうですね。ここと現場は近く、歩いて一分くらいの距離です。そうなると何故被害者は七時に家を出たにも関わらず、こんな近くで見つかったんでしょうか……」


右内も小野塚の意見に便乗してそう言った。するとそんな右内に小向が「普通に七時ちょっとの頃に事件が起きて、発見が遅れたとかじゃないの?」と言った


「小向、大丈夫なのか?」


須川は小向を見るとそう聞いた。しかし小向はそんな須川には構わず、右内に「どうなの?」と問い詰めた


「確かにあり得なくはないけど……」


右内はそう言うと小野塚を見た。すると小野塚が代わりに「それはほぼないです。この周辺は見ての通り住宅街です。なので午前七時ともなれば通勤通学でそこそこの人が通ります。なので発見が三十分近くも遅れるのは考えづらい話です」と説明した


「でもそれは推測よね?」


「ええ確かに現段階ではただの推測です。なので少し前から調べさせてます」


小野塚がそう言ったときだった。突然男性刑事が「小野塚さん! 報告です!」と言いながらこちらにやって来た


「何か分かったか?」


「はい。事件現場近くに住む住人が午前七時二十分にゴミ出しをするため、家から出ていました。その人の話によると、道路はいつも通りだったそうです」


男性刑事は小野塚にそう報告した。すると小野塚はその刑事に「分かった。引き続き聞き込みを頼む」と指示を出した


「分かりました」


男性刑事はそう言うとこの場を駆け足で離れて行った


「つまり小向の言う説は無くなった訳か……」


男性刑事が居なくなると須川はボソッとそう言った。すると小向は須川に「死ね!」と小声で言った。なので須川は小声で「悪い悪い」と謝った



「そうなると誘拐か呼び出しですね」


二人がそんなやり取りをしている中、右内は小野塚にそう言った


「そうですね。ただ誘拐の方は薄いかと。不審者や怪しい車の目撃はされていませんので」


「そうなると呼び出しですね」


右内はそう言った。しかし誰がどのような手段を用いて坂下を呼び出したのかは分かっていなかった。そのうえ、坂下のスマートフォンが見つかっていないため、インターネットが絡んでいるものは調べようにも調べられなかった


「そうなると被害者のメールを確認したいところですが、無いなら仕方ありません」


小野塚はそう言うと少し間を開けた。そして「とりあえず我々はこの後もここの捜査、及び聞き込みを行います。何か分かり次第、メールで伝えます」と右内に言った


「分かりました。こちらも何か分かり次第、送ります。それでは失礼します」


右内はそう言うとここから立ち去ろうとした。するとそんな右内に小野塚が「右内捜査官は何を調べに?」と聞いてきた。なので右内は振り返ってこう言った


「私達は被害者のメールが見れないか確認してきます」


「分かりました。それではまた」


小野塚にそう言われると右内は専用車が止めてある場所へと向かって歩き始めた


「右内さん。スマホ無いからメールって見れないんじゃないの?」


その道中、小向がそう言った。するとそれに対して右内は「確かにスマホからは無理ね」と答えた


「なるほど、そういう事ですか」


右内の発言を聞いた須川はある事に気付きそう言った


「え? どゆことよ」


二人の言っている事が理解できない小向はそう言った。すると須川は「ヒントはメールを開く方法だよ」と言った


「開く方法? なにそれ」


小向がそう言うと、右内は「それじゃあこれから答え合わせに行こうか」と言い、専門車に乗り込んだ。するとそんな右内に小向は「どういうことよ。それで何処に行くの!」と言った


「行けば分かるよ」


須川がそう言うと右内はエンジンをかけた。そしてある場所へと向かって車を走らせた……


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