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第二件 三年前の事件

「右内さん、話というのは?」


須川は右内のいる所へ行くとそう聞いた。すると右内は来栖に「貴女は分かるよね? 言いたい事……」と言った


「勿論です。小向さんには言ったんですか?」


「言ってないよ。知られると厄介な事になりそうだったからね」


右内と来栖はそんな会話をしていた。けれど須川には何の事か全く分からず、会話についていけなかった。なので須川は「あの、何かあったんですか?」と聞いた


「小向さんの事についてもう聞いた?」


右内が突然そう聞いてきた。なので須川は「立てこもりについての事なら来栖さんから聞きました」と答えた


「なら大丈夫だね。私達が話しているのはあの死体についてよ」


右内はそう言うと死体がある場所を見た


「死体?被害者に何か問題でもあったんですか?」


須川がそう言うと、来栖が「確かにそれもだけど、ここではそっちじゃないよ」と否定した


「そっちじゃない……ということは、ゾンビに問題があるということですか?」


須川がそう聞くと右内は「正解。まだしっかりと調べてないから確実ではないけど、おそらく三年前の立てこもり事件の犯人よ」と答えた


「立て籠り事件の犯人? それって小向さんの?」


「そう。その犯人よ」


「でも何で分かったんですか? 確かに犯人は行方不明と聞きましたが、顔まで割れてたんですか?」


須川は自分の持つ疑問を全て吐き出した。すると右内が来栖に「貴女、全て話したんじゃないの?」と聞いた


「時間が無かったので簡単にしか……」


来栖からそう聞くと右内は「ならいま事情を話すから、来栖さんは小向さんが此方に来ないようにしてて」と指示を出した。すると来栖は「分かりました」と言い、小向のいる所へと言ってしまった


「あの、もしかして自分が言ったこと間違ってました?」


須川がそう聞くと、右内は「いや、最後以外はあってるよ」と答えた。なので須川は「最後以外ということは……犯人が誰か分かっていたんですか?」と聞いた。すると右内はこう言った


「えぇ、何しろその犯人は監視部の監視対象に入ってた人物だからね」


須川はそれを聞くとすぐに「監視対象? つまり事件を起こす前から危険人物だったんですか?」と聞いた


「そう。だって犯人はゾンビ愛護団体の幹部だからね」


世の中にはゾンビを保護しようとする人達がいる。その集団の一つがゾンビ愛護団体である。この集団は去年、ゾンビ殲滅局に潰されるまで活動していた組織で、ゾンビの保護を目的とする集団の中では一番過激だった。そのためゾンビ殲滅局と度々衝突していた


「だとすると何故、その犯人がゾンビになってここに……」


「それは分からない。偶然かも知れないし、もしくは……」


右内はそう言うと黙った。そして死体のある場所を見た。そこでは警察官達が死体を詳しく調べるため、移動させようとしていた


「これ以上は警察から情報が来ないと分からないわ。とりあえずゾンビが何処から来たのか調べたら本部に戻りましょう」


右内はそう言うと、離れたところにいる来栖と小向に「ちょっと来てくれる!」と呼んだ。すると二人はすぐにこの場所に来た


「ゾンビが誰か特定できたの?」


小向は右内にそう聞いた。すると右内は「おそらくね。だから小野塚さんにその資料を送るために私と小向さんは本部に、来栖さんと須川君はゾンビがどこから来たかの捜査をお願い」と指示を出した


「おけ、それじゃあ二人は頑張ってね」


小向は来栖と須川にそう言うと車へと行ってしまった。すると右内は二人に「小向さんは何とかするから捜査はお願いね」と言い、小向の乗る車へと移動していった



「思ったより大変な捜査になりそうですね」


二人の乗った車がこの場を離れると須川はそう言った。けれど来栖から何の反応もなかったので、須川は来栖を見てこう言った


「来栖さん。どうかしましたか?」


けれど来栖は須川に背を向けたまま、何も答えなかった。なので須川がもう一度「あの……」と言うと来栖が何かを言った。けれど声が小さかったため、須川には何を言っているのか聞き取れなかった


「すみません。いま何と……」


須川がそう聞くと、来栖は先程よりも大きな声で「なんかごめん」と言った


「えっと……」


突然謝られると須川はそう言った。すると来栖は続けて「捜査は一人でお願い。今は一人になりたいの」と言い、この場を離れていった


『今のは一体……』


来栖の行動を見ると須川はそう思った。けれど何かしらの事情があるのだと思い、一人で捜査をすることにした。なので須川は死体のある場所へと移動した


ゾンビと被害者は既に警察により運ばれており、現場には被害者の持ち物と血液が広がっていた


『遺体があったときは気づかなかったけど、思ったより血が多いな』


須川はそう思うとしゃがみこんでゾンビが歩いてきた痕跡がないか探した


「見た感じだと無いな……使うしかないか」


須川はボソッと言うと、スプレー缶を荷物の中から取り出した。そしてスプレー缶を振ると、死体があった周辺に吹き掛けた


『さて、反応は……』


須川は検査液を吹き掛けた場所が薄紫色になっていないか確かめた。けれど一ヶ所も薄紫色に変わっておらず、検査液の透明色のままだった


『変わってないとなると厄介だな。この付近に監視カメラが付いている家があると良いけど……』


そう思うと須川は付近の家を見た。けれど現場付近にある家には監視カメラがあるようには見えなかった


『あ~、完全にゾンビが何処から来たか分からんわコレ』


須川がそう思ったときだった。突然来栖が「ごめん。捜査はどう?」と聞いてきた。なので須川は「周囲に検査液を掛けましたが反応はありませんでした」と報告した。すると来栖は「分かった。じゃあもう少し範囲を広げたようか」と指示を出した


「了解です」


須川はそう言うと、もう一度スプレー缶を振った。するとそんな二人に小野塚が「すみません。少々宜しいですか?」と話しかけてきた


なので須川は「構いませんよ。何かありましたか?」と聞いた。すると小野塚はこう言った


「死体を調べて分かったのですが、今回の事件、殺人の可能性が出てきました」


須川はその報告を聞くと「殺人事件? けれどゾンビの死体がありましたよね?」と聞いた。すると小野塚は頷き「確かにありました。けれど亡くなっている男性の死因はゾンビによるものではありませんでした」と言った


「つまり誰かに殺害されたあと、殺されたゾンビを乗っけたということですか?」


「おそらく……死因については詳しく調べないと分かりませんが、おそらく切り傷からの出血でしょう」


「切り傷? どこにあったんですか?」

須川が右内と死体を見たときには刺傷らしきものを見つけられなかった。なので須川がそう聞くと小野塚は「背中です。鑑識さんが見つけました」と言った

死体は仰向けになっていた。なので死体を動かしていない二人には刺傷を見つけられなくて当然だった


「それに加えて第一発見者、そして近隣住民にほとけが誰かを聞いて回ったところ、ゾンビ対策関係の仕事をしている人でだと分かりましてね」と小野塚は言った


「それは殲滅局の関係者ですか?」


須川がそう聞くと、小野塚は須川に「この人、見覚えありませんか?」と言いながら写真を渡した。なので須川はそれを受け取ると写真を見た


『やっぱり生前の写真じゃないよな』


その写真は警察が捜査用に撮ったもので、当然のことながら生前の写真ではなかった。するとその写真を横から覗き込んでいた来栖が「どこかで見た記憶が……けれどどこで……」と言った


「仏は坂下恵斗さかしたけいと、つい二日前だかの新聞に載ったゾンビハンターです」


世の中にはゾンビ殲滅局以外にもゾンビを殺す人達がいた。そんな人達はゾンビハンターと呼ばれていた。関係としては警察と探偵に近く、ゾンビ殲滅局がやってくれない事をゾンビハンターがしていた


「とりあえず我々は仏の捜査を続けます。そちらは本件より手を引いても構いませんが、どうしますか?」


小野塚がそう聞いてきた


「その件ですが、もう少し後ででもいいですか?」


来栖がそう言った。すると小野塚は「構いませんが理由を教えて頂けますか?別に無くても問題ありませんが」と言った


「右内がゾンビを特定したため、本部に戻り資料を探しに行っています。なのでその資料を元に、そちらで同一人物かの検証を行ってもらえないかと……」


来栖がそう言うと、小野塚は「大体は読めました。つまりゾンビになってしまった人が、そちらに取って重大な人物かも知れないということですね?」と聞いてきた。なので来栖は「そうです」と言い、頷いた


「そうなると本件から手を引くのは我々警察かも知れませんね……何がともあれ私は一度戻ります。資料は私の部下に渡しておいてください」


「分かりました。お願いします」


来栖がそう言うと小野塚は「それでは失礼します」と言い、この場を離れていった


「来栖さん。この後どうしますか?」


須川は来栖にそう聞いた。すると来栖は「とりあえず右内さんが来るまで待機……じゃなくて、分かれて痕跡が無いか調べましょ」と指示を出した、なので須川は「分かりました。では自分は死体より奥を調べてきます」と言い、この場を離れた


『この辺でいいかな』


須川はそう思うとスプレー缶を振った。そしてゾンビが歩いてきた痕跡が無いか調べるため、足下と横にあるブロック塀に検査液を吹き掛けた


『何か影を作れるものは……これでいいや』


須川はそう言うと要らない紙を取り出し、それを使って色が変わっていないか確認した。けれど二ヶ所とも色に変化はなかった


『案の定変化なしか。これは骨が折れそうだな……』


須川はそう思うといま検査した場所から離れ、違う場所に検査液を吹き掛けた……



午後一時、東京本部捜査一専用室……


「戻りました」


須川はそう言い三班専用スペースに入った。そこでは右内が棚を漁っており、机の上には大量の資料が置かれていた


「何を探してるんか?」


須川がそう聞くと、右内は手を動かしたまま「俗に言うブラックリストよ。それに載ってたはずなんだけど、それが無いのよ」と言った


「やっほー、戻ったよ……ってまだ探してたん?」


小向が来ると右内にそう言った。すると右内は「ずっと探してたよ。けど、もう探すところもないわ」と言うと、棚から資料を出し、それを机に置いた


「その資料ってデジタル化してないんですか?」


「他の資料同様、紙でしか保管してないわ」


右内はそう言った

ゾンビ殲滅局は東京本部に限らず、どこもデジタル化が進んでいなかった。もちろんこれには理由があり、大規模なアウトブレイクが発生し、電子機器が使えなくなっても紙ならいつでも使うことができるからだ。それだけの為にゾンビ殲滅局では未だに紙をメインで使っていた


「他の人が取っていったとかは無いの?」


小向は自分の席に座り、頬杖を付きながらそう聞いた


「資料を借りるみたいなのは聞いてないから、それは無いと思う。多分……」


右内がそう言ったときだった。突然誰かが須川の肩を叩いてきた。なので須川が後ろを向くと、そこには須川の知らない女性捜査官がいた


「悪いんだけど、こっそり渡しておいてもらえない?」


女性捜査官は須川だけに聞こえるよう小声で言い、緑色のファイルを渡してきた


「何ですかこれ?」


須川はそう言うと、そのファイルをパラパラとめくった。中には色々な人に関する情報が書かれており、須川はそれを見た瞬間これが右内の探しているものだと思った


「右内さん。探している資料ってどんなやつですか?」


須川はそう聞いた。すると右内は手を止めて「緑色のファイルよ。中にはぎっしりと顔写真や捜査報告書が入ってるわ」と言った。なので須川は「これだったりします?」と聞いた


須川がそう言うと小向が「あ、これはやっちゃったねぇ」とニヤニヤしながら言った。なので須川は「別に俺が持ってたわけじゃないよ」と否定した


「じゃあ何でそのファイル持ってるの?」


「いま渡されたんだよ。この人……あれ?」


須川はそう言うと女性捜査官がいた所を見た。けれどそこには誰もいなかった


「誰も居ないじゃない。幻覚でも見えてるの?」


「幻覚ってそんな事あるわけないでしょ。ちゃんといたんだけど……」


小向に突っ込まれると須川はそう言った。すると右内が「とりあえずそれ見せてくれる?」と言い、手を伸ばしてきた。なので須川は「どうぞ」と言い、緑色のファイルを渡した


「見つけた! これよ」


右内はファイルの中身を見るとそう言った。すると小向が「やっぱりあんたが犯人か!」と言ってきた。なので須川は「だから今渡されたって……」と言った


「まぁ何でもいいわ。とりあえず私は警察に渡してくるから後はよろしく」


右内はそう言うと走って捜査一専用室から出ていった。すると右内と入れ替わりで来栖が部屋に入ってきた


「右内三佐何かあったの? 急いでるようだったけど……」


来栖は三班専用スペースに入ると二人にそう聞いた。すると小向が「今から警察に資料を渡しに行くんだって」と言った


「今から?そんなに資料探し大変だったの?」


来栖がそう聞くと小向が「そうそう。須川が隠し持っててさ」と言った。なので須川は「違います。他の班の人が勝手に使ってて、返されたのがさっきだったんです」と訂正した


「うん。何がともあれ色々あったのは分かったわ。それで右内さんはこの後どうしろって言ってた?」


来栖は二人にそう聞いた。けれど二人とも右内から指示を受けていないため、須川は「自分は何も指示されていないので……」と言い、小向を見た


「え?私?私も何も指示されてないよ。あとは宜しくとは言われたけど」


小向がそう言うと来栖は「なら右内さんが戻ってくるまで待機ね」と言い、壁に掛けてある時計を見た。そして「二人ともこれからご飯食べに行かない?」と昼食の誘いをした


「是非とも」


須川はそう答えた。けれど小向は「私はパス。もう食べたから」と断った。なので来栖は「なら私達より右内三佐が戻るのが早かったら伝えておいて」と伝言を頼んだ


「分かったよ。いってら」


小向にそう言われると来栖と須川は捜査1専用室から出ていった



「昼食何処で取ります?」


須川はエレベーターホールへ向かいながらそう聞いた


「私は何処でもいいよ。本部内でも外でも」


来栖がそう言ったときだった。突然女性捜査官が来栖の肩を叩き「これから昼食?」と聞いてきた。なので来栖は「そうよ。一緒に食べる?」と言った


「乗るわ。一緒に昼食なんて久し振りだし。因みに隣の人は今日来た人だよね?」


女性捜査官はそう聞いてきた。なので来栖は「そう。須川君だよ」と言った


「初めまして、四鷹から来ました須川です」


須川がそう自己紹介をすると女性捜査官も「佐古班所属の四条しじょうよ。宜しく」と自己紹介をした


「四条、貴女どこで食べたいとかある?」


来栖がそう聞くと、四条は「え? 私が決めていいの?」と言ってきた。なので来栖は須川に「行きたいところないよね?」と確認してきた


「はい。自分はまだこの辺りがよく分からないので、何処でも構いませんよ」


須川がそう言うと、来栖は「だから決めていいよ」と四条に言った。すると四条は「なら食堂。外行くの面倒なんだよね〜」と言った


「須川君もそれでいい?」


「大丈夫です」


来栖の確認に須川はそう答えた。すると来栖はいま来たエレベーターに乗ると二階を押した


「須川君は四鷹基地から来たんだよね?」


エレベーターに乗ると四条がそう聞いてきた。なので須川は「はい。四鷹の捜査一にいました」と答えた。すると四条は「四鷹基地ってどんな所か教えてくれない?私と来栖って始めから本部だから他の所がどんな感じなのか分からないからさ」と言った


「そうですね。基本的な部分は本部と変わりません。ただ本部の方が人が多くて部署も多いですね」


須川がそう言うと四条は「人が多いのは分かるけど、部署が多いってどういう事?本部にはあって四鷹基地にはない部署があるの?」と聞いてきた。なので須川は「テロ対策部や監視部、調査部なんかは四鷹にありせん」と答えた


「ふ~ん。その三つって四鷹には無いんだ。初めて知ったわ」


四条がそう言うとエレベーターは二階に止まった。なので三人はエレベーターから下り、食堂へと向かって歩いた


「そういえば須川君って階級は何なの?因みに私は准官」


四条はそう言ってきた。なので須川は「ゾンビ対策士長です」と答えた。すると四条は「あ~、その階級一番大変だから気を付けた方がいいよ。私は対士長たいしちょうまではトントンと上がったんだけどそこで詰まったのよ」と言った


「そんなに大変だったんですか?」


須川がそう聞くと四条は「大変もなにも、私の方が来栖より早く対士長になったのに、気付いたら来栖は准官になってたんだよ」と興奮気味に言った。するとそれに対して来栖は「たまたまよ。色々な面で見たら四条の方が優れてるもの」と言った


「それは何回も聞いた。私のプランではさっさと准官になって班長になる予定だったのに……」


四条はそう言うと肩を落とした

ゾンビ殲滅局では若手の育成のために、優秀な若手でなおかつ准ゾンビ対策官以上の階級の人を班長にしていた。四条はその枠を狙っていた


「まぁ良いじゃない。東京本部は六年前からどこの部署も若手ばかりになってるんだし」


来栖がそう言うと四条は「良くない。私は班長になってドヤりたかったの」と言った


『自慢したかっただけか』


四条の話を聞くと須川はそう思った。するとそんな須川に四条は「何か問題でもある?」と聞いてきた。なので須川は「いえ、何でもありません」と答えた


「ならヨシ。それじゃあささっと食券買っちゃいましょ」


四条はそう言うと財布を取り出し、食券販売機の列に並んだ


「使い方は分かる?」


来栖がそう聞いてきた。なので須川は「四鷹と同じシステムなので分かります」と答えた


「じゃあ席は取っておくから先に買ってて」


来栖はそう言うと食堂の中に入っていった

食堂は一時ちょっと過ぎということもあり、かなり込んでいた。しかしピークを過ぎているということもあり、食券販売機にはあまり人がいなかった。なので須川はすぐに食券を買い、食堂内で昼食を受け取ることが出来た



「ここだよ!」


須川が昼食を持ち、場所取りをしている来栖を探していると、突然四条の声が聞こえた。なのでその声がした方向を見るとそこでは四条が手を振って「ここだよ」と言っていた


「来栖さんはどちらへ?」


「来栖なら食券を買いに行ったよ。私がもういるからね」


四条にそう言われると須川は空いている席に座った。すると四条が「来栖はどう?」と聞いてきた


「どうというのは……」


「そのままよ。須川君から見た来栖の評価が聞きたいだけ」


四条はそう言うとご飯を食べた。するとそんな四条に須川は「四条さんは来栖さんと長くいるんですか?」と聞いた


「まぁ普通に長いよ。中高大と同じだからね。だから来栖の事で知りたいことがあったら私に聞きな。私以上に詳しい人なんていないから」


四条はそう言った。なので須川は恐る恐る「四条さん。来栖さんの事でお聞きしたいことがありまして……構いませんか?」と聞いた。すると四条は「いいよ。何でも聞きな」と言ってきた


「来栖さんが優しい人だというのは午前中のやり取りで分かりました。ですが今日の朝、突然人が変わったような態度になりまして……」


須川は捜査前に起きた来栖の気になることを話した。すると四条は口に入れているものを飲み込み、こう言ってきた


「それって貴方と同じ班の小向が関わってたりする?」


須川はそれを聞くと『何故分かった』と思い、驚きから黙ってしまった。すると四条は「やっぱりそれか……」と言うと水を飲んだ。そしてこう聞いてきた


「来栖から小向が色々あったのは聞いた?」


「ざっとですが聞きました」


「なら事件を知っている前提で話すけど、その事件で失敗をしたのよ」


四条がそう言うと須川はすぐに「失敗というのは?」と聞いた。すると四条は少し間を開け、こう言った


「簡単に言うと、保護された小向さんに報告を聞かれたのよ。しかもその報告がちょっとあれなやつでね」


「それで報告というのは……」


須川がそう聞こうとしたときだった。突然四条がそれに被せるように「それなら映画館の方がいいわ」と言ってきた


『え?』


突然話の内容が変わり、須川は戸惑った。けれどすぐに何故四条が話を変えたのか分かった


「二人とも何の話をしてるの?」


そう聞いてきたのは来栖だった。すると四条は「デートの話よ。今週の日曜日どこか行こうっていう」と言った


「何か割って入っちゃってごめんね。二人ともそんな関係だったの?」


来栖はそう言うと須川の隣に座った。すると四条は「だって須川は私が小学生の頃からの知り合いだからね。だよね?」と言い、同意を求めてきた。しかし須川は『さすがにここまでの嘘は信じないだろ』と思い、苦笑いした


「小学生って私より長いのね。そんな話、今まで聞いたことなかったから驚きだわ」


来栖がそう言うと須川は『信じるんかい』と心の中で突っ込んだ。すると四条が「とりあえず続きは帰るときね。私が迎えにいくから」と言ってきた。なので須川は「分かりました」と答えた



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