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悪役令嬢に転生したので職務を全うすることにしました  作者: 白咲実空
第三章 勇敢な君を
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3

「勝負……ですか? 」

「うむ」

サリファナ王国の国王であるマルクス・コレクトに言われた言葉を反芻しながら、ブレイブは少し驚いた。

「隣国のシャトリック王国騎士団がな、是非ともサリファナ王国騎士団と力比べをしたい……と」

「はぁ……」

ブレイブは今いちピンとこない様子で返事をすると、マルクス国王も同じような反応をしていた。

「何故、勝負を……? 」

「うーん……。力比べをしたい、としか言わんしなぁ……。しかも勝負内容はグリュース、とかなんとか……」

「グリュース!? 」

その単語に更に驚くブレイブの反応は至極正しい。

グリュースとは集団で行う剣の勝負のことだ。

デュエルが一対一の一騎打ちならば、グリュースはその逆、それぞれの国の騎士団全員が繰り出して戦う戦法だ。

「ですが、グリュースなんて今どき滅多にやりませんよ? 」

「うん。その通りなんじゃがなぁ……。グリュースが良いと言って聞かんし」

勝負なのでお互い殺さないとはいえ、もちろん負傷者は出る。

ブレイブとしてはむやみに勝負をして無駄な怪我を負わせたくはない。

「あの、シャトリック王国、というのは? 」

「ん? 隣国のまぁ大きい国じゃな。あそこの国王とは話が合わんでのう。ワシは少し苦手なんじゃが……。ま、断るかどうかはブレイブ君に任せようと思う。戦うのは君たちじゃし、勝負だからな」

そう、勝負だから何かを賭けたり奪われたりするわけではない。

だが、相手は力比べをしたいと言ってきた。

サリファナ王国は平和な国なので、戦争なんて滅多に起こらない。

まだ人と戦ったことのない団員は少数派だがいるにはいる。

ならば彼らにとっては良い練習にはなるだろう。

ブレイブも授業くらいでしか勝負なんてしないので得られるものは大きいはずだ。

せっかく貰った機会だ。ここは前向きに検討したい。

「マルクス国王。団員達と話し合って決めたいと思うのですが、宜しいでしょうか? 」

すると、マルクス国王の顔が少しばかり陰る。

「まさか、受けるのか? 」

「まぁ、前向きに検討しようとは、思っています」

「……そうか。ワシとしてはあんまりオススメせんが、そう言うのなら良いだろう。また後日、改めて返事を聞かせてくれ」

「はい」


コレクト家から出ると、門の前で待っていた副団長、ペトスと合流する。

そしてそのまま団員達の元へ向かって事の詳細を説明すると団員達も皆、訝しげな顔をした。

「グリュース? 何を言ってるんだシャトリック王国の連中は」

「全くだな。グリュースなんて危険な勝負、今どきどこの騎士団でもやらないぞ」

「あれって木刀でやるのか? 」

「バッカ、普通の剣だよ。殺さないとはいえ怖すぎる。集団だぞ? あっちこっちから剣がとんでくるんだぞ? 」

「最後にやったのって、確か50年くらい前じゃなかったか? 」

「まだ戦争とかいう頭おかしいもんがあった頃の話だろ? ほんと、何考えてるのかねぇ……」

思った通り、皆マイナスなイメージを持っているようだ。

「すまんな。良い経験になるかと思って、俺は賛成の意を唱えていたんだが……。やっぱり、嫌か? 」

「え、ブレイブ様、賛成だったんですか? 」

「ああ。だが、決めるのは俺だけではない。お前たちが嫌なら断ろうと考え……」

「じゃあ、やるか」

「え? 」

案外あっさりと承諾した団員にブレイブが動揺していると、他の団員達も「しゃーねぇーなー」「やるかー」と次々に賛同する。

「……やるのか? 」

「やりますよ。団長が言うんなら」

「いや、俺はお前たちの意見を尊重したいと思っている。無理に受ける必要は……」

「ですが、ブレイブ様はやろうと思ったんですよね? 」

「それはそうだが……」

「じゃ、やりますよ」

「なんで……」

下手したら大怪我を負うかもしれない。

相手はどんな人達かも分からないのに。

怪訝な瞳をブレイブが向けていると、団員の一人が普段と変わらない穏やかな顔つきで言った。

「俺達、ブレイブ様について行くって決めたんで。な、皆? 」

「おう! 」

団員全員が声を大にして返事する。

その光景を、ブレイブは目を丸くして見つめた。

「俺達、ブレイブ様のこと信じてますんで」

「これまでのご指導の成果、見せてきますよ! 」

「お前たち……」

投げかけられる前向きな言葉達に、ブレイブは感動していた。

この間までは、練習がキツいと嘆いていたくせに、成長というものは早い。

これは、ブレイブが今まで積み重ねてきた努力の証だ。

笑顔でやる気を見せる団員達を前に、ブレイブも強く声を上げる。

「よし、このブレイブ様についてこい! 」

「イエッサー! 」

団員達の声が、天高く響いて消えていった。

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