表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/45

【1】突然編 第2話 おやじは刈り奪られる。

 


 

 現実味を感じさせない。

 そんな効果がある薄暗い景色。


 その中から、近付いてくる。


 さっきまで元気に俺を狩ろうとしていたおっさんの命を、ついさっき刈り獲ったのであろう、三つの人影が。



「いやいや〜危ないところだったわね♪おじ様♡」



 馴れ馴れしく話かけて来たのは、その内の一つ。


 フード付きのローブを着てネジ曲がった杖を持った人影だ。歳で言うと20かそこらか…女性だ。どちらかと言えば整った顔。杖を胸元に抱え持つ感じが愛らしさを狙っているように見える…が、ちっとも可愛くなんて見えなかった。


(いや俺よ。失礼かっ)


 おそらく今、俺はこの三人様御一行に助けられた。そう、だからここは、、感謝すべき場面。


(それになんと言っても、人の頭にナイフを刺して平然としてる連中でもある…)


 …ここは、取り乱さず、冷静に、下手(したて)に出て、やり過す…そういう場面。


(それにあの仮装…ラノベから飛び出して来たような、揃いも揃って冒険者ルック…)


 今の季節的にきっと、ハローウィンのバカ騒ぎで酔っぱらった連中…て感じか。きっと元々危ない連中なのだろうが、それがさらにタガが外れている状態


(…なのかもしれない。)


 そう推測しながら、


(ナイフを投げてきたのは…)


 …きっと、あの男だろう…と改めて観察した。使い古された風に加工された革鎧を着込んで、長剣まで帯びたその男は白人男性で、これまた整った顔立ちだった。なのに、ちっともハンサムだとは思えない。その瞳には温度を感じられなかった。


 もう一人の男も見る。漫画やアニメでしか見ないような大袈裟な盾とウォーハンマーを軽々と持つ男。…日本…いや、東洋人、だな。国籍が不明な感じの。筋骨隆々って感じの。凄く首が太い系の。


(頭と同等以上の太さってどんなだよ…。)


 首の延長線上にある側頭部は両サイド共に剃り上げられている。剃る際に釣られたかのようなその細目は、俺を虫けらぐらいにしか思っていないようだった。

 

(なんなんだこの連中…)


 言っておくが。俺は人種に関して偏見などはない…はずだ。


 …だがコイツら。


 見るからにヤバい。


 …見た目、というより、目つき。


 何処までも怪しい。


 絶対カタギではない。


 そう思わせる三人組。


 この期に及んでの対応には、細心の注意を払って然るべきだろう。一人一人がそう思わせる相手。


(おっさんに殺されそうになった後におやじ狩りとか…マジ勘弁してくれ…)


 だから


「あ、あの…有り難うございま…「バインド♡」…あ、が…か…っ」


 俺はお礼を言おうとしたのだ。

 …したのだが。

 それは一つの言葉で封じられた。

 それに、封じられたのは声だけではなかった。


(な…身体の自由が…奪われた?こんな…どうやって…っ?)


 なんなんだこの急な金縛りっ。

 あの女がやったのか?

 

(あ…ぐ、これ、催眠術か何かか?)


「見た感じ『ウラシマ』さんみたいだから、きっと訳も分からず…って感じなんだろうけどさ…タっハー〜♪ごめんねー。『ウラシマ見たらまずは略奪。』って常識が今の世界にはあって〜♪」


(はあ?タッハー!じゃねえだろっ。つか、『ウラシマ』?…ってなんだよ?つか略奪…されるのか俺?何言ってんだ。つかなんだってんだ。こんな仕打ち…なんで俺が…つかこの、動けないのも…この女がやったのか?……つかさ…… 頼むよ… 一つでもいい。 誰か、 俺でも分かる何かを言ってくれ…)


 …なんていう俺の脳内抗議は当然、誰に届くというわけもなく。そしてそのままなすすべもなく。


 着ていた服は白人男に脱がされた。

 やけに丁寧な感じで脱がされた。

 それでいてあっという間だった。

 俺にはみすぼらしくも下着とソックスだけ残された。さすがに俺みたいなおっさん手前の下着にまでは用がなかったらしい。


 その間、東洋人の男はというと小さなおっさんの頭部から角のようなコブと、両耳を削ぎ取っていて…


(な…死体に何てことしやがる…。地獄か。ここは。どいつもこいつも…狂ってやがる…)


 服を剥かれたおっさん。

 耳を削がれたおっさん。

 二人並んでなんつー無惨。


(…って、何がそんなに楽しいんだ。ニヤニヤと…)


 イヤらしい笑みを顔面に張り付かせ女が見ている。 


(…怖い笑みを浮かべやがって…)


 それらの作業が終わるまでは極短時間だった。終わってしまえば何事もなかったかのように俺の背後へ向け去っていく三人組…実に馴れた手際だった。やっぱりヤバい連中だったんだな。俺の観察眼も馬鹿にならない。


(なんなんだこれ…。でもまあ、命は取られなかった…それだけは幸いだった…そう思うしか…)


 なんて考えはきっと甘かったのだろう。


 …この、世界では。


 





 ゾぶ


「、あ、…、?、え…」


 ぞぶふっ


「……?……あ…ああっ!か?…っガっ!」


 ぞぶぶブブぷ…ゴリ…っ


「ゴこ…っ!ボほっ!!?」


 ゾぶプ!ゴリュ、ぶふ…っ


「ギゃ…っおあ!…やっやめ…」


 ぶジゅゥぅ…っ!


「ぎいぃ…っっっ!」

 

 背中に熱。

 胸から痛み。

 生えてきたのは血濡れた(はがね)


(これ…剣…か?あの剣…フェイクじゃなくて実剣…つか、俺…貫かれてる…のか?胸を…背中から……?は…なんだそれ、なんだこれ、どんなストレス由来でこんな夢を見てんだ…俺…)


「はは…ごぷ…ボ…ゴボ…ゴほ…おぁ?…お、お、お?」


 いや…アホか俺。


 コレが。

 こんなのが夢な訳、あるか。

 こんな、熱さが。

 こんな、痛みが。


「 あ、あ、あ、 」


 ああ、今度は…引き、抜かれていく。

 冷たい鋼が。

 血濡れた切っ先が。

 

(引き、抜か…れてくのも…、、、痛え…ぇ、ぇ)


 痛い…熱い…痛い…寒い…痛い…


 …そして哀しい。


 何故だ。


 何故、こんなにも粗末に扱われる?


 これは…俺の命…


 …なのに…


(ああ…これ…ホン、とうに…地獄だ…)


「あらら、やっぱ殺しちゃうんだデーブったら」


「…駄目だったか?」


「バインド食らわせてこんな場所に裸放置だよ?こんなの殺さなくても速攻で死ぬってぇ♪万が一でもない限り…」


 口では咎めつつも、俺の死なんて何でもない事だと思っている。そんな様子を隠そうともしない女の声が聞こえる…。


「そう、それだ踏恵(ふみえ)。万が一というのがある。誰かに報告されても面倒だし、こんな上等な背広はこの『死宮エリア』で手に入るなんて事、今後あるとは思えない。そして俺は一度奪ったものを返す殊勝さなんて持ち合わせちゃいない。」


 …次に聞こえたこれは…あの、白人野郎か?…多分そうだ……脱がされた背広に袖を通すなら…アイツの体型が俺に一番近い…にしても……随分と流暢に日本語話すよな…この白人……じゃなくって…おいおいおい……待て待て待てよ…?…まさ…か、俺が着てたスーツが欲しくて、俺を殺すことにしたのか?


(…そういう…事か?そんなくだらない理由で…)


「は、嘘ついてんじゃねぇよ。人間を殺したかった。ただそれだけなんだろうがよ。お前は」


 この声は…残るはあいつ…ゴリマッチョな東洋人か…?


「ん。悪いか?」


 指摘されても悪びれる風もない白人男…てめぇ…

 

「いんや、お前がしないなら俺が殺ってた。」


 それに答える東洋人…お前も…


「とか言いながら、何気にハンマーを振り上げちゃうのねハン君は?」


 …ホントムカつくな…この女の…喋り方も…


(じゃなく…おい……今…今…何て言った?刺されてんだぞ?俺は…胸に、大穴 開けられたんだ…)


 こんなの……俺にだって、分かる。

 このままもう…

 そうだ俺にはもう、死ぬ以外の未来は、ない。


(なのに……なのに…)

 

「フン…別に構わんだろ。ウラシマなら例に漏れずレベル1だったんだろうが……雑魚筆頭のゴブリンにすら手こずるような虫けらだ。……それにストレスってのはな。発散出来る時を逃しちゃならねぇ…」


 な…俺、死にかけてるのに…

 まだ…、何かを、される?


(この上……何を…っ?)


 こんな死に方……っ


「それに、どんなにとっ散らかった死体でも綺麗サッパリ吸収してくれるのが…」



 やめ…


 やめろ…


 …やめてくださ…っ



「……ダンジョンの良いところだ。」






 ゴグシゃ──と、自分の頭部が潰されるくぐもった音…それを聞いたのを最後、俺は死んだ。


 殺されたのだ。


 虫けらのように殺された。


 無軌道な若者達の手によって。




 


 















 


  ───そのはずだった。




《──生命活動が停止しました。『迷宮本能』の一つ、〈成長する本能〉が強制的に覚醒します──》



《──迷宮スキル【状態修復Lv1】が開放されます──》



《──蘇生、試行します──》




 ──まただ。

 臨終間際の幻聴?ってやつだろうか…。

 また、何かが何かを言っている。



《──エラー。蘇生に失敗しました。再試行します──》



 …いや成功するかよ。

 胸とか…貫かれて、その上、頭まで…潰されてんだぞ…。

 


《──エラー。蘇生に失敗しました。再試行します…エラー…エラー…エラー…──》



《──迷宮スキル【状態修復】のスキルレベルが2に上がりました──》



《──…が、エラー。…蘇生に失敗しました。再試行します──》


 

 ………随分と頑張ってくれるんだな。



《──…エラーエラー…エラー…エラー…エラー…エラー…──》



 …大変なんだな…医療の現場って…



《──迷宮スキル【状態修復】のスキルレベルが5に上がりました。迷宮スキル【状態修復】に新たな能力が実装されます──》



《──その影響を受け、〈成長する本能〉の覚醒が進行します。迷宮スキル【異常克服Lv1】が開放されました──》



《──……が、蘇生は失敗。イレギュラー的措置として、『迷宮本能』の一つ、〈吸収する本能〉を強制的に覚醒させます──》



《──スキル【素材吸収Lv1】が開放されます。──蘇生、再試行──》



 何がなんだか…だな…よくわからないけど… 



《──迷宮スキル【素材吸収】のスキルレベルが2に上がりました──》



《──…が、蘇生は失敗…。素材としてゴブリン1体では不足。

 さらなる緊急措置として眷属候補の魂を10体残し、あとの90体を吸収します──》



 なん…え?…魂…って…



《──迷宮スキル【素材吸収】のスキルレベルが5に上がりました。迷宮スキル【素材吸収】に新たな能力が実装されます──》



《──その影響を受け、〈吸収する本能〉の覚醒が進行。迷宮スキル【補完倉庫Lv1】が開放されました。……………が、蘇生は失敗。》


 

 えー…。失敗したのかよ…どうすんだ…魂?とか… 



《──最終手段に着手します。──コアの吸収を試みます。これにより、生命体として根幹から再構成されます。どのような結果がもたらされるかは不明。ただし、これが失敗すれば活動停止は永遠のものとなります。……………………試行、しますか?──》



 はあ…?それ、俺に聞くのか?


 ああもう、さっきから…よくわからないけど…それ、俺が決めるのか……じゃぁ……いいよ、もう……なんでもいいから…やっ てくれ…も、う…どうでも…いい…


 

《──コアを吸収します──》



 ビキ…


 え…? 

  

 ビキッ「…っあ?」


 ビキビキ「ぐあ…ぅっ」


 ビキビ「あ!」キビキビ「あ!」キ…


 ビキビキビ「ああ!ぐ!ああああああう!」キビキビキ!



【あ…呼…亞……阿……こ、ぁ、コア。の吸収……に、背、セ、せ、成功しました。迷宮スキル【素材吸収】のスキルれベるが12、に、阿賀り摩、した。迷──宮スキル【素材吸収】ぎ、新たな能力が実、、ガ、、ガ、ジッ装されます。……そし…素子…粗…そし、て、亜、ア、あ、あなたは、初ノ、の、生命体、ダンジョン人間えと、へと、進化、いたシマした。】



 ぐ…何……だったんだ今…の…。

 胸貫かれたアレより痛かったぞ。

 頭潰されるより痛いってなんだよ…

 

 ……つか、、声。


 感じが…急に変わったな…。


 

【歯、ハ、は、初めマして…。マイ、マスター。】



 あん…?

 おお…はじめまして。

 つか…もう眠くってさ…しょうがないんだが…



【はい…ゆっくりとはいかないでしょうが…今は休んで下さい。】


 

 そうか……

 

 じゃぁ俺…


 もう、寝るから…



【 はい…マスター…おやすみなさい… 】


 

 こうして俺は











  『俺達』になった。







       突然編──了。




 次投稿は18時予定。


《ブクマ経由でカムバックした読者方々、もしくはこれからブクマしようとしているあなたに親切設計!これは『突然編』の概要だよ♪》


・主人公が目を覚ますと、いきなりゴブリンに襲われた。

・あわやの所で謎の三人組に助けられた。

・だがその三人組はどうも怪しい。

・案の定、三人組はワルだった。下着と靴下を残し全てを奪われる事に。そう、全て。命までも。

・その三人組はそれぞれ、魔法使い風の女は『踏恵』、剣士風の白人の男は『デーブ』、タンク風の東洋人の男は『ハン』という名前であるらしい。

・そして、死んだはずの主人公は謎の声とその力によって蘇生を果たすのであった。 


 NEXT!↓

 いきなり訳が分からない。

 そればかりがてんこ盛り。

 さらに名前すら与えられてない主人公。 

 連呼される「なんだコレ!」

 でも物語は続くのであったっ!

 

 嗚呼、聞こえる…。

「気になる事しかないじゃないか!」

「ちくしょー!次も絶対読んでやる!」

 そんな幻聴は作者の心を少しだけ熱くしたあと慰める!


 次編、『ない編』乞うご期待♪





 ※私などはお気に入り小説の連載を待つ途中でそれまでの話をど忘れする事がよくあります。

 なのでそんな方の為にと、このように各編最終部には概要を掲載する事にしました。でも、「雰囲気が削がれる」などの声もあるかと思います。なので 


 『○○編──了』 


 …という風にその編はこれで終わりですよ的な区切りが、一目で分かるようにしておきます。

 なので概要を不要と思う方は読み飛ばしちゃって下さい。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ