古今和歌集 電気自動車之到来巻
これは太平の世のお話
睦月の中頃、山里にて類い稀なき狐、前世にあやかりて、思いなきまま、太平洋の小僧と名乗ることありけり。
人に化けて、悪事を繰り返すことあしきことなり。
時に近江の千秋楽の芝をいたずらに刈りて、かつは讃岐の銀次郎のお櫃を盗みださんこと限りなし。
類なき積み重ねども、勇ましき気色ことにめづらし。
帝 いとおもしろきことかなと思し召して、宮中に招き給ふ。
小僧、嬉しく参りぬ。✴︎発泡酒かずくりて、酔どれになりぬ。✴︎第三のビール
そこへ三位の中将、あと厳かにおほきなる車奉り給ふ。
帝、こはいかに。
三位の中将、こは電気自動車にて侍る。いとめづらしきものなり。いざ、乗り給へ。 と答へ申す。
帝、あやつる技なくして、おどろおどろしく思し召す。
小僧いきりたちて言ふ。 我、黄金免許なり。いかにして誤ることあるらむ。
席に座し、京都の街へいかむとするに、楽しく、言の葉でいひあらはすこと限りなし。
あと楽しき時過ごふれども、小僧、飲酒にて、前方の民家にぶつかりけり。
いかにあらむ。 小僧、免許不保持なり。
小僧、罪に問はるること恐れて、逢坂の関へ逃れむと、車いとはやく走らせ、周りにいる人弾き飛ばしけり。
その場の者たちさへも恐ろしく思へる。
逃走路、山道より、街へ抜けりをりふし、101匹の犬どもを見つくりて、皆、さめざめと涙を流し、身を案ずること限りなし。
いかに悲しきことかな。 三位の中将、いたずらになりけり。
帝、悲しみて袖を濡らし、世の憂を嘆き給ふ。
小僧推し量りて、皆心憂きこと同じなり。などなき給ふ。現世堪難きこと多かれど、真の道は心安きと思ひ侍る。
帝、うなづきて世を捨て三井寺へと参り給ふ。
小僧、新幹線に乗りて、世知辛き世を、車窓の三景に問ふ。
彼の行く末は誰もが知ってるのか?