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にくきゅう薬局  作者: 渋谷 春
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第6話 初めての調剤

「にゃにょにゃにゃる~にゃにゃに~の、ににぇにゅにゃに~にゃ~ににょにょる」

お互い下の名前で呼び合うことが決まったそのとき、なんとも力の抜けるメロディが聞こえてきた。

「…今のは? なんかジブリで聞いたことがあるメロディでしたが…」

「よく分かったわね。今の曲は、ジブリの名曲『かぜになる』のにゃるみーキャットバージョンよ。FAXが来た時流れるようにしてたのよ。処方箋が送られてきたのね。」

ちなみににゃるみーキャットとは大阪湾の人工島の巨大テーマパーク「ユニバーサル・ニャン・オオサカ(UNO)のマスコットキャラである。見た目はかわいらしい表情の茶トラの猫が黒いシルクハット、黒い蝶ネクタイそして黒いマントを身に着けている。ちなみに言葉は全て「にゃん!」であるが、テレビ出演はおろか、有名な曲のカバーソングを作ったりなど活動の幅は広い。葵もテレビで見たことがあるが、ファンクラブもできるほどの人気らしい。

「とりあえず、この処方箋の薬を集めてみようか。」

先ほどからいろいろ突っ込みたいことがあったが、とりあえず今は調剤に集中することにした。調剤とは簡単に言うと処方箋の薬を準備して患者に渡すことだ。しかし、薬剤師の仕事はこれだけではない。なぜなら処方箋の内容が正しいかどうかをチェックする作業もあるからだ。薬の名前、量や服用タイミングは当然であるが、さらに飲み合わせやアレルギーなどチェックする項目は多岐にわたる。時間が限られている中で多くの点をチェックする必要があるので、まずはすばやく薬を集める必要がある。ちなみにこの薬局の棚はアイウエオ順に薬が並んでいるので比較的わかりやすい。まあほとんどの薬局が同じような並びを行っているのだが。


集め始めてから数分後に葵は全てを集めることができた。本来なら1分以内で集められる量だが、初めてだから仕方のないことだろう。

「先生、集めました。確認をお願いします。」

集めたものを見せると、美夜は薬シート裏にあるバーコードをバーコードリーダーで読み取りはじめた。

「我…美夜先生、何してるんですか? 薬を確認するものかと思ってましたけど」

薬を集める作業は急がなくてはいけないといったが、当然人間なのでミスもある。だから薬剤師は一人が取りそろえを行った後、さらにもう一人が正しいかどうかのチェックを行う2重チェックが基本である。

「ああ、基本的に薬剤師は2人で調剤、監査をするって知ってるよね。私は一人だから、機械に頼ってるの。薬のシートにはバーコードがあるからこれを読み取って薬が処方箋と一致してるかどうかを確認できるのよ。これだと後は数の確認ですむからね」

「そんなものあるんですね。 初めて見ました。」

葵は今までこのように機械に頼った調剤を見たことがなかったため、少し驚いていた。

“美夜先生… 八雲先生が勧めるだけあってやっぱりすごい人なのかも”

と同時に少し見直していた。

「だから一人でやれてるんですね。きつそうだと思ってましたけど…」

「まあ、私は機械に頼ってるから楽な方よ。その代わり2年ごとの薬価改定時にメンテナンス量取られるけどね… ああもうちょっとしたら1年ごとになるんだったかしら?」

美夜は少しためいきをつきながら言った。


「薬も数も処方内容その他もろもろ特に問題ないわね。 そうだ、葵ちゃんちょっと服薬指導やってみる?」

「え、いいんですか?うまくできないかもしれませんけど…」

葵は少しうつむき気味に答えた。

「別に失敗してもいいのよ。それに今から来る患者さんは常連さんでいい人だから大丈夫。それに何かあったらフォローしてあげるから。」

美夜はさっきまでの悪ふざけの笑みではなく優しい表情で話しながら葵を見た。

その顔はなぜか葵を安心させた。

“そうよね。 どんどん練習しなきゃ立派な薬剤師になれないよね…”

「分かりました… がんばります!」

葵は少し声に力をこめた。

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