ぷろろーぐ(1)
≪ぷろろーぐ≫
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――時間を自由に止めらるならば――
俺がそんな事を思ったある日ことだった。
偶然にも願いが叶ってしまったかのように、それを見つけてしまった――否、見つけたのではなく、自分に宿るあるモノと交換してもらってから手に入れることができたのである。
その名も『時止め機』――通称、タイムストッパーである。
まあ文字通り、『時間』という不可逆変化物質を一時的に、自由気ままに、手動で止めることができる、この世界において最も万能なマシーンだ。
例えば、親から「ゲーム止めろ!」だの言われた時に、【時止め機】を使って時間空間を停止させ、それでもってゲームの続きをプレイすることができる。
え? 時が止まってしまえば、当然ながらゲーム機の動作も止まるでしょって?
いやいや大丈夫、その心配は全くない! だって【時止め機】をONにさせた際に、勿論のこと自分は動けるけれど、それと同時に【コマンド:一部再生】という特殊な機能を使えば、自分の動かしたい物質だけが動けるようになる。それはゲーム機とかの機械に限ったことではなく、この世に存在するありとあらゆる物質――人間だって、動物だって、生き物だって――稼動することができる。
だから俺はこの機械を『万能』などと表現しているのだ。
この世で最も万能にして優秀な、人の望みを全て叶えてくれる、それが【時止め機】である。
時を止めれば何でもできる――人を窮地から救うことも、ゲームを散々やることも、眠くなったら寝ることも、宿題を終わらすのも、テスト中に誰かの解答用紙を見るのも、人を殺すことも――実はできてしまう。
でも俺は一つだけ、大事なことを完全に忘れていた……。
それは、時間を止めるだけでは解決しない、そんな物もこの世にはあるということ――
それを知ることになるのは、今から数日前に遡る。
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