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【実習】看護学生の奮闘記

Promise by linking little fingers ~指切り~

作者: 菜須よつ葉

「よつ葉ちゃん、いつお家に帰れるの?」


担当患者の女の子が、私の姿を見るたびに問いかけてくる。


「結城先生に聞いてみようね」


笑顔で応える看護実習生よつ葉


「えぇー、結城先生いつもダメって言うもん」


ほっぺを膨らませて抗議してくる女の子。


「そっかぁ。でも結城先生が"良いよ"って言ってくれないとお家に帰れないんだよ」


幼い子に正論を語っても理解してもらえない。長期入院している担当患者の女の子。


「よつ葉ちゃんはお家に帰るもん!」


実習時間が終わったら確かにお家に帰る。看護実習生に夜勤はない。でもこの子が言っているのはそういうことじゃない。


「お家に帰れるように、よつ葉ちゃんと頑張ろうね」


「頑張ったら帰れる?」


「一緒に結城先生にお願いしてみようね」


「うん! よつ葉ちゃん、指切りげんまんしよ」


「良いよぉ」


ふたりで小指を絡ませて指切りを交わす。


しばらくして主治医の回診の時間。


「午後から採血して結果次第でお家に帰れるよ」


結城先生が女の子に声をかけた。


「検査頑張って受けようね」


近くにいたよつ葉も女の子に声をかけた。


「どんな検査?」


女の子はよつ葉に検査内容を確認をする。


「ここから血をとって検査するんだよ」


「えぇーー、痛いの嫌だあ!!」


採血というとこうなるのは当然の事。


「採血するの上手な看護師さんにお願いしようね」


女の子に声をかける。


「よつ葉ちゃんは?」


女の子に懇願されるが学生なので針処置はできない。


「ごめんね。よつ葉ちゃんは、看護師さんになるお勉強中だからまだお注射はできないんだよ」


「看護師さんになったらできるの?」


「そうだよ」


「じゃあ、明日看護師さんになって!」


この会話を後ろで、結城医師と指導看護師そして女の子のお母様が、クスクス笑いながらこの結末を見守っている。


「ごめんね。明日は無理かなぁ」


「じゃあ、その次でも良いよ」


明後日も無理だよぉ……。


「よつ葉ちゃん、指切りげんまんしよ」


えっ? 無理、無理、無理、無理!!

明後日に看護師になれないもん!!

指切りしたら速攻で約束違反!!

後ろで笑っている大人な方たち!笑ってないで助けてください!!


ここは何とかするしかない!

よつ葉がんばれ!!


「直ぐには看護師さんになれないけど、○○ちゃんがランドセル背負って小学校いく頃によつ葉ちゃんも看護師さんになれるように頑張るね」


これなら嘘つきにはならない。どうかなぁ?


「えーーーー、まだまだだね」


そうなのまだまだ単位のかかった実習残ってるもん。しかも看護師国家試験という最難関が待ってるもん。でもね、ここまで頑張ってきたんだよ。


後ろで大笑いしている皆様、特に指導看護師さん、助けてくださいよ!!


「よつ葉ちゃん、指切りげんまんね」


小さな小指を絡ませて指切りをする。


「菜須さん、お約束を守って看護師になって帰っていらっしゃいね」


指導看護師さんに声をかけられる。


「えっ?」


「よつ葉ちゃん、お返事は"はい"だよ。◎◎先生(幼稚園の先生)言ってたもん」


またまた後ろで大爆笑。あのぉ、ここって病院でしたよね?


「そうだね」


結城医師が一言


「来年度の小児科病棟ナース確保しましたね。指切りでもしておいたらどうですか?」


そう言って大笑いする結城医師。


「あらっ、そうする? 菜須さん」


指導看護師さん、悪ふざけし過ぎでは無いですか?


「いえ、大丈夫です」




◇◆◇◆◇◆



午後からの採血を無事に済ませ後は検査の結果を待つばかり。結果が良ければ退院が決まります。



入院しているみんなが早く元気になりますように



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― 新着の感想 ―
[一言] 泣かせる味じゃん…。 早く看護婦さんになって、みんなの思いを叶えてあげれるといいですね!
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