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『図書館ではお静かに』

「尾崎君、何読んでるの?」

「難しい本だよ、とてもね」


俺は『女の子と話すために必要な7つのこと』という本を背中に隠しつつ答える。

嘘は言っていない。


「へーすごいね、私本読んでると眠くなっちゃうからなー」

「最近の児童小説って学生が読んでも面白いものが多いから読んでみたら?」

「そうなの?じゃあ見てみようかな」


佳那は児童小説コーナーと逆方面に去っていった。

場所わからないんなら教えてあげたんだけど。

いやそれはいいか、好感度上がりそうだし。


俺は再び『女の子と話すために必要な7つのこと』のページをめくる。

ここまででわかってもらえると思うが、なぜかデートでは記憶カットスキップは発動しなかった。


裏切ったな朱い春。


「尾崎くーん」

「どうしたの合想さん」

「児童小説が全然見つからないんだけどどうしよう?」


真逆の場所探してるからなんだよなあ。


「司書さんに聞いてみれば?」

「その手があったね。ありがとう尾崎君!」

「図書館では静かにな」

「あ、ごめんそうだったね。じゃあ聞いてくる!」


再び去っていく佳那。

言わないけど司書さんとかがいるサービスステーションは逆方向だ。


あんなに運の悪い子だったっけなあ?


スキップされないものは仕方がないので適当に本を読んで過ごしているが、今後のデートでもしっかりとデートしなければいけないとなると結構憂鬱である。

俺は『必読!女の子をがっかりさせないためのデート計画!』という何とも言えないタイトルをした本を棚から取り出す。

まあ俺的にはがっかりさせたほうがエンドの役に立ちそうだが、あまりにもひどいデートをしたら不審に思われてしまう可能性もある。

正直佳那は大丈夫なような気もするが、他のヒロイン二人はそのあたりが障害になってもおかしくない。


特にゆめのほうはその辺に敏感だからな……


「尾崎くーん!」

「だから大きな声を、ってどうした?なんで泣いてるんだ?」

「司書さんに会えないんだけど!」

「ややややめてくれ、頭がゆゆ揺れる」


肩をつかまれがくがくと揺さぶられる俺。

吐いちゃうから!

何も食べてないけど多分胃液とか吐いちゃうから!


「あの、図書館ではお静かに願えますか?」

「あ!ごめんなさい!」


アウトになる一歩手前で佳那による揺さぶりは終了した。


というか良かったな、佳那。

司書さんが向こうから来てくれたぞ。


「すいません、彼女を児童小説のコーナーまで案内してもらってもよろしいですか?」

「児童小説ですか?大丈夫ですよ」

「ありがとうございます!」

「「静かに(してください)」」

「ごめんなさい……」


ちょっとしゅんとしながらも司書さんについていく佳那。

こんなこと言うのもなんだけどさ、子守してる気分だぞ?


しかしゲーム版よりも気持ち精神年齢が幼くなっているように見えるのはなぜなんだろうか。

もしかすると公式設定資料集に乗っていた『実は甘えたがり』という、ゲームではほとんど発揮されなかった設定が今更ながらに生きてきているといったところかもしれない。


余談だが、朱い春開発者の一人であろうとされている『名無しの開発者A』さんが

『設定資料集の内容が薄いって上司に怒られた。仕方ないから適当に設定何個かでっち上げたら普通にOK通った。ゲームで確認できない設定は大体俺がでっち上げたと言っても過言ではない。そもそもこういうのは俺の仕事じゃない。まあいいや今日は久しぶりに家に帰れそうだ。この資料を渡して俺は帰る。誰にも邪魔させない。』

という記事をブログで上げていたりする。


余計なことしてくれたな開発者A。


さらに余談を広げると実はこのヒロインたちのイラストを描いたのも開発者Aらしい。


何者なんだろうな開発者A。


かなり今更な話だがこの世界はイラストの再現性が非常に高いのでヒロインのかわいさはゲーム通りだ。

現実になるにつれてちゃんとリアルの人間らしい顔つきになっているのだが、一目見ればキャラがわかるような容姿になっている。


これで性格が良ければなあ……


「尾崎君」

「お、児童小説は……なんでまた泣いてるの?」

「これで感動しちゃって」

「ええ?」


ぼろぼろと涙を流し号泣する佳那。

うーん、感受性高すぎやしないか。


ちなみに手に持った本の題名は『笑う殺戮兵器』だ。

感動するシーンの有無よりも前に、それが本当に児童小説なのか確認したい。


「どういうストーリーなのそれ?」

「親を殺されて狂っちゃった女の子が段々と人の心を取り戻していく物語だよ」


想像以上にハードだな。

児童が読んでいいものじゃないだろそれ。


というか個人的な意見を言わせてもらうとその設定とタイトルは絃を思い出すのでやめてほしい。

ちょっと違うがかなり近いものがある。


「尾崎君はまた別の本を読んでるの?」

「今後のための勉強をしようと思ってね」


嘘は言っていない。


「ほへー。偉いね、尾崎君は」

「未来にかかわってくるからね」


下手なことをすれば俺に明るい未来はない。


「なんか先を見通してるってかっこいいね!」

「後々苦労しないためには重要なことだと思うよ」


今現在結構かつかつで話している。

今までの人生で女の子にかかわってこなかった結果がこれだ。


まあこの未来はさすがに見通せないものだったが。


ある日気が付けばゲームの世界の中にいたなんて誰が想像できるだろうか。

少なくとも俺の想像力では無理だった。


「ねえ、尾崎君」

「なにかな?佳那さん」

「尾崎君って何が楽しくて生きてるの?」


ほう、早いな。

このセリフがこのタイミングで来るのか。

このセリフはゲーム内でもデート中に不意に問われることがある。

完全ランダムなので最後のデート中に言いだすこともあれば、最後まで問われないこともあるといったものなので攻略チャートには入れられていないことが多いイベントだ。


煽りや攻めているようにも聞こえるが佳那にそんな気は全くない。

単純に興味があって聞いているんだそうだ。


ちなみにこの問いに対し

『佳那と一緒にいることかな』

的な寒いセリフを吐くと当然のごとく佳那の好感度が馬鹿上がりする。


今更考えたら佳那超チョロインだね。

でも個別エンド難易度は絃とほとんど変わらないんだよね。

絃全然デレないのにね。

おかしいね。


なお一番好感度が下がるセリフは


「特にそういうのはないかな」


である。


「えっ、そ、そうなんだ」

「そりゃあ生きてるんだから楽しいことはあるけど、何かが楽しくて生きてるってわけじゃないよ」

「そっか……」

「あ、別に生きてるのが苦痛ってわけじゃないからね?」

「うん、それならよかったよ」


ここまで原文通りである。

アドリブを何回もやってると元からあるセリフの楽さが非常に笑える。

緊張することもなくさらさらとセリフ出てきた自分が恐ろしい。


なお先ほどのセリフについてだが、前提としてヒロインの期待に応えられなければ当然のごとく好感度は下がるというものがある。

まあ現実でもそういうものだろう。

ならばヒロインの期待とは何なのかという点だが、実は朱い春のヒロインたちには主人公に求めているものが存在する。


この際他二人のヒロインも一緒に説明してしまうが、

佳那は愛と楽しさ

絃はユーモアと特別視

ゆめは強さと優しさ

をそれぞれ主人公に対して求めている。


これに近しい選択をすれば好感度が上がるし、逆に遠い選択をすれば好感度が下がる。


選択肢で迷ったときはこの法則を思い返してみよう。

面倒な人は攻略Wikiでも見たらいいんじゃないですかね。


「あれ?この曲って」

「ああ、もうそんな時間だったのか」


図書館の終わりを告げる曲が流れ始め今回のデートの終わりを告げる。

こういう間延びしない点もあり、図書館はデートスポットとしてかなりいい場所なのだ。


俺と佳那は一緒に図書館を出た。


「尾崎君ありがとう!今日はとっても楽しかったよ!」

「俺も合想さんが楽しめたのならよかったよ」

「たまに本を読んでみるのもいいかもしれないね!」


あらー、定型文からずれちゃった。

やっぱりデート中ノーカットはイレギュラーすぎませんかね。


「そう思ってくれたのなら、俺も図書館に誘った甲斐があったよ」


まさか好感度下げたいから来ましたとは言えない。


「また、デートしてくれるかな!?」


某お昼番組みたいなテンションできかないでくれ。


「もちろんだよ、また誘ってほしいな」


ゲーム通りなら次に誘われるのは4日後の7月2日なのだが……

頼むからそこは変わらないでくれよ?

スケジュール組み直しとかマジでごめんだぞ?


「それじゃあまたね!」

「うん、またね」


もちろん現地解散です。

送迎とかいうどうあがいても好感度上がる行為はNG。


帰っていく佳那の背中を目で追いつつ俺は次の行動に出る。

現在時刻は18時。

朱い春の一日はまだ終わらない。

おまけの一口メモ

合想佳那

作中でも何度か言われているが一番融通の利くヒロイン。

他二人のヒロインが悪い意味で印象に残りやすいためか

朱い春ファンの中では影の薄い子とされ

結構公式からも不憫な扱いをされているかわいそうな子。

そのあたりも相まってか人気投票では

ヒロイン三人の中で最下位だった。

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