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『ゲームとリアルとイレギュラー』

これはいったいどういうことだ。

こんなイベントが存在したか?いや、なかったはずだ。


「尾崎君、何かあったの?」

「な、なんでもないさ」


なんでもなくない。

大問題だ。

おかしいおかしいおかしい、おかしくて笑えない。


そもそも会話とは何か、人と話すことである。

違う、そうじゃない。


デートイベントではデートする場所までの移動、場所についてからの会話やCG収集、いやこれはゲームの話だが。

そして解散、家まで送ることも可能という流れだったはずだ。


移動中に発生するイベントは確かに一つ存在するが、それは会話イベントなどではないもっと別のものだ。

ならなぜ俺は佳那に話しかけられている?


これもゲームの世界がリアルになった弊害か?

だがそうなるとかなりまずい。


俺はヒロインたちの趣味、思考、過去、その他もろもろを把握しているはずだ。

ヒロインに対してどの系統の話題を出せば好感度に変化が起きるのかも理解している。

しかし悲しきことかな俺は彼女いない歴イコール年齢の男、趣味は詰将棋とパルクール。


駄目だ、あまりに突発的で衝撃的な出来事に思考が混乱の渦に叩き込まれている。


「もしかして、私と一緒にいるの楽しくない?」

「い、いや!そんなことないよ!?楽しいに決まってるじゃないか!」

「私も楽しいよ!尾崎君!」


わーいたのしー。

やばいやばいやばいやばい、女の子と話すことに全く慣れていないことが全力で俺を殺しに来ている。

ただでさえ決められたセリフを話すことですら緊張してた俺だぞ!?

台本なしのアドリブだけで女の子の好感度上下できるんなら彼女の一人や二人いるに決まってんだろ!?


さらにまずいのはさっきとっさに発言してしまったが、佳那に明確に好意を告げる発言は本来NG中のNGだ!

掲示板でも佳那の好感度の上がり方はバグってるんじゃないかと評判なんだよ!

そんなことしたらどうなるかなんて火を見るよりも明らかだろうが!?


話し方が、身のふるまい方が、何もかもが全くわからない。

選択肢くれよ選択肢!!

開けメッセージウィンドォウ!!


「私の腰になにかついてる?」

「大丈夫、なにもついてないよ」


キョトンとした顔で首をかしげる佳那。

とりあえず俺は考えることをやめた。


「じゃあ改めて図書館に向かおうか」

「うん!あ、あの!尾崎君!」

「なにかな?」

「手を……繋がない?」


思考スイッチオン。

エマージェンシー、緊急事態発生だ。


手を繋ぐだと?

このイベントは好感度が一定以上で起こるイベントだ。

本来一度目のデートで起こるようなイベントではない。


これさっきの失言だけで本当に馬鹿みたいに好感度上がったな?

あとはあれか、移動に時間かけ過ぎたか。

長い間一緒にいるだけで好感度が上がり続けるって君は爆弾か何かなのか?


初手から完全につまずいて半ば絶望的な雰囲気が漂っている。

やりたくなかったが最悪『全滅エンド』を目指すことも視野に入れ始める。


後味が引くほど悪いからできれば遠慮したいところなのだが。


「駄目、かな……?」


エンドの選択はおいおい考えていくとして、今はこのイベントに集中することにする。


好感度の急上昇にビビり冷静さを欠いていたが、実はこのイベント朱い春らしからぬお得イベントである。

本来こういうイベントって強制的に手を繋がされてなんか初々しいカップルの絵面を見せつけられるものだが、朱い春ではこのお願いを拒否することができる。


拒否するというとなんとなく難しいイメージを持つかもしれないが、わかりやすく

『手を繋ぎますか』

はい/いいえ

という選択肢が出てくるので繋ぐも繋がないもプレイヤーの選択次第だ。


手を繋いだ場合はそれ以降移動中はずっと手を繋いでいる設定らしく、移動中の佳那の好感度上昇が二倍になる。

あとはCGが回収できるといったところだろうか。


逆に手を繋がなかった場合好感度が減少し、以降移動中の佳那の好感度上昇が二分の一になる。


といったところであり、どのエンドを目指すにしても追い風や救済処置になるおいしいイベントなのである。

なので今回は当然のごとく断るわけだ、さあ来い選択……肢……


あれ?

選択肢とか出るわけないよな。

なに?俺は佳那に手を繋がない理由を説明しつつ断らなきゃいけないの?


なんなのそのハードミッション。

ゲーム時代はいいえって選択しただけで断れたからそれでいけない?

無理じゃねえかな……


「佳、じゃない合想さん」

「なあに?あ!手を繋いでくれるの!?」

「悪いけどそれはできないよ」

「どうして!?」


あなたの好感度が上がるごとに死が近づくからですよって言えたらどれほど楽か!


「……俺の手すっごいべたべたしてるんだ」

「えっ?」


俺は何を言っているんだ。


「緊張で汗をかいてるってこと?大丈夫だよ!私もそうだし!」

「確かに汗もかいてるけどそれとは違うんだ」


ついでに俺のかいている汗は冷や汗である。


「じゃあどうして?」

「実は俺……」


考えろ、回れ俺の灰色の脳細胞!


「女の子に触れると吐血する体質なんだ!」


俺は何を言っているんだ!


「そ、そうなの!?」

「これを言ったら引かれると思って今までは黙ってたんだけど、実はそうなんだよ」

「ええ!?」

「だから、残念だけど合想さんと手を繋ぐことはできないんだ」


ははははは、もうどうにでもなれ。


「わかったよ!それなら仕方ないね!」


佳那、好きな人相手でもちゃんと疑いの心を持とうぜ……

むしろなんでデート三回断ると速攻で証拠もってくるんだよ……

心境の変化が急転直下過ぎませんか佳那さん……


まあいろいろなものを失った気がするがとりあえずは窮地を脱したらしい。

今後狙ったタイミングで吐血ができるように訓練しなければならないかもしれないが。


というかこれ好感度ちゃんと下がったんだろうか……

これだから現実はクソゲーだと


「図書館着いたね」

「あ、うん。そうだね」


考え事をしていたらいつの間にかに図書館に到着していたらしい。


場所についたわけなのでこれからデートが始まるわけなのだが、場所は佳那があまり好きではない図書館。

当然ゲームではイベントなどあるわけもなく『俺は図書館で佳那とデートをした』で終わるのだが……


なんか嫌な予感がするんだよな……


「それじゃあ行こうか」

「うん!」


反面佳那は超絶笑顔である。

本当に図書館嫌いなんだよね?ゲームと設定変わってないよね?


図書館に入る一歩手前、俺は神に祈りをささげることにした。


さあ来い記憶カット!

お前は俺の希望だ!!

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